第2話 新しい仲間~生徒会へようこそ~

そして翌朝。

シャーーーー

カーテンが勢いよく開けられて眩しさに隆司は目を覚ました。


「おにいちゃん、もう朝だよ。それに、今日はゴミの日なんだからゴミも纏めちゃうから学校に行く準備をしてね!」


「んーーー、おはよ、愛しの妹よ!」


「まーた、ふざけて・・・って、いつも思うんだけど・・・」


美咲がしゃがみ込んでゴミ箱を見ながら言った。


「おぉ・・・今日は純白のパンツ様・・・」


「ねぇってば!いつも思うんだけどさ、お兄ちゃんのごみ箱って、なんでいつも、こんなにティッシュがいっぱいあるの?」


「ぶーーーーー!そ、それは・・・アレだ、花粉症だ!」


本棚には妹もののエロゲー、そしてベッドの下には妹ものの同人誌。

そんなことは当然言えず、隆司は制服に着替え始めた。

美咲はゴミをまとめると部屋を出て食卓に着いていた。


「おふくろ、親父、おはよう~。そして、頂きます」


家族で食事をとるのは我が家のしきたりだ。

食事を終えるとゴミ袋を持って美咲と一緒に学校へ向かった。

いつもの通学コースに、いつもの時間。


「よぉ!おはよー。蓮司」


「おぅ、隆司か。おはよー。美咲ちゃんも、おはよー。学校めんどいな~」


ここからしばらく進むと、途中から合流するやつがいる。

それから、この先に行くと、いつものメンバーがもう一人加わる。


「おはよう、隆司、美咲ちゃんに蓮司君」


「よぉ!杏子、おはよー。おまえ、膝に土がついてるじゃんか。また花の手入れか?」


杏子は両膝についた土を手で払うと。


「あ、うん。毎朝の好例だからね~。春といえばチューリップ!花言葉は照れ屋さん。オレンジだから。色によって花言葉が変わるのよ」


「杏子先輩は、お花に詳しいですもんね。私は、またオーディションに落ちちゃいました~」


「私の夢はお花屋さんになる事だからね。美咲ちゃんは読モだっけ?」


美咲は照れながら返事をすると、隆司は美咲の頭をなでて、微笑んでいた。

しばらく無言で歩いていると、杏子が腕時計を見た。


「いっけない!遅刻しそうよ!急がないと~」


「ぎりぎり間に合うだろ。いつもの時間だし。生徒会長の俺が遅刻したら、先生からなんか言われそうだな」


隆司が苦笑しながら杏子に言うと、杏子の背中をポンと押すと、杏子も苦笑いしていた。

いつも、こんな調子で通学をしている。

春の、このいつもの通学路は好きだ。

心地の良い風と風景に、同じメンバー。


「さてと、杏子」


バっ!


「おっ?なんだ?オレンジのチューリップ育ててるから今日はオレンジじゃないのか?」


「ちょっ!やだ、いきなりスカートめくらないでよ!この~」


バン!

カバンで勢いよく殴られた。

こうやって毎朝ふざけながら楽しく登校をしている。

そして、学校につくと美咲は1年生の教室へ。

隆司たちは2年生の教室へと向かった。

予鈴が鳴るとみんなが席に着くと担任の先生がドアを開けて教室に入ってきた。


「えー、今学期からA組の担任を務めさせていただきます。鈴原 玲子と言います。皆さんと共に色んなことを学んでいきましょう。では、早速ですが、学級委員長を決めたいと思います。投票方式で行いたいと思います。先頭の席の皆さん、用紙を後ろの生徒へ配ってくださいね」


皆が書き終わると、今度は後ろの席から前へと投票用紙が集められた。

先頭の席の生徒がすべて用紙を集めると担任の先生が持つ箱の中へと入れていかれた。


「それでは読み上げて「正」の字で黒板に書いていきますね。鈴原浩平君・一条杏子さん・一ノ瀬三紀子さん・89.59.88って誰ですか!これはーーー!」


「ふふふ、受けた受けた。ドンピシャかな~?」


教室内が爆笑の渦になっていた。

まぎれもない、隆司のいたずらである。

隆司は学校では優等生。

いたずらをしても疑われたりはしない。

毎日、エロゲー三昧の龍児にはスリーサイズを当てるのは得意であった。


「せんせー、浩平君の仕業じゃないんですか~?」


と、名指しで言ってみた。

全員の視線が浩平へと向けられていた。

鈴原 浩平。

唯一、隆司の裏の顔を知っているヲタク仲間である。


「まあ、いいわ。では、投票の結果を黒板に書きますね。ダントツで一ノ瀬さんですね。よろしくお願いしますね」


一ノ瀬三紀子、数学が得意で休み時間なんかには、いつも本を読んでいる。

中学時代からの付き合いの一人である。

表紙をすり替えてあるが、中身はBL本だ。


「え?私ですか?えっと・・・よろしくお願いします。精一杯頑張ります」


三紀子は一度立ち上がり頭をぺこりと下げて挨拶をして恥ずかし気に席についた。

少しモジモジしているのが先生には気になっていたらしい。


「大丈夫ですか?一ノ瀬さん」


「あ、はい。頑張ります!」


と、こっそりと読んでいた本を隠すように机の下にいれた。

すると、そこへ三紀子の頭に紙くずが飛んできて辺りを見回すと隆司が指をさして合図をしていた。

三紀子が紙を広げると頭の中で読んだ。


「おまえ、BL本読んでただろ?」


隆司の落描き付きの紙だった。

もちろん落描きはBL風だった。

常日頃から同人誌を書いている隆司はイラストも得意だった。


「では、学級委員長は一ノ瀬さんということで。分からないことがありましたら、生徒会長の秋月君に聞くといいですね。秋月君も一ノ瀬さんの力になってあげてくださいね。それから・・・鈴原君は、この後に職員室に来るように!」


チャイムが鳴ると先生は教室を後にして休み時間となった。

すかさず浩平が隆司のところにやってきた。


「おまえ、よくもやってくれたな!みんなに真の姿をばらすぞ!」


「成績トップの生徒会長だぞ?言ったところで誰も信じはせんて。まあ、頑張って怒られて来いよ~。それと、これ、貸してやるよ。やっと手に入れたよ。「おにいちゃんと秘密の関係はここから」と書かれたパッケージを浩平に渡した」


「おぉ!これは・・・・あの爆売れのやつか!よく手に入ったな。これで勘弁してやる。借りていくぜ~」


エロゲーを受け取ると、浩平は足早に職員室へと向かった。

そして、クラスのみんなが隆司の元へと集まってくる。

大半は勉強を教えてもらうためのクラスメイト。

中間テスト前なんかは他のクラスの人まで押しかけてくるのは毎回のこと。

女子は基本的には杏子のことろへと集まる。

杏子は学内で2位の成績なのだ。

そして、授業は進み、昼休憩の時間になった。

昼休憩はいつも生徒会室でみんなと昼食をとっている。


「みんな、おつかれ~。午前中も疲れたね~。お?杏子はいつもの手料理の弁当か~。蓮司と俺は学食のパンだ。一番人気のハムカツサンドの奪い合いには苦労するわ。あれ?美咲は?」


「ああ、美咲ちゃんね。先生に呼ばれて職員室にいるみたい。隆司が来る少し前までいたんだけどね。すぐに行っちゃったわ」


「わが愛しの妹様がいないとは・・・って、その卵焼きうまそうだな~・・・いただき!パクッ」


「あっ!ちょ・・・もう、いつもおかず取っていくんだから~」


杏子の趣味は料理とお菓子作りにピアノ。

生徒会で唯一まともな一人だ。

杏子に妹の美咲と蓮司はいたって普通の趣味の持ち主。

食事が終わるとドアが開いて美咲が入ってきた。


「すみません。先生の話が長くて・・・お昼ご飯も職員室で先生と食べてきました。なんか頼まれごとされてしまいまして~。生徒会で書記をやってるから先生のお手伝いをお願いされちゃいました」


食事が終わると毎回恒例の杏子がコーヒーを淹れ、お菓子を出してきた。

杏子が作るお菓子はプロ顔負けの腕前だ。


「コーヒー入ったわよ。それと、今日はマドレーヌ作ってきたから、みんなで食べて」


「杏子の作るお菓子は絶品だからな。たくさん作って売りさばいてみたらどうだ?」


「そんなことするわけないでしょ~。単なる趣味なんだから」


コーヒーカップも杏子は自分の家から持ってきている。

コーヒーも毎回ハンドミルで豆を挽いて、しっかり蒸してから入れている本格的だ。

料理も美味い、成績優秀に美形。言うことなしで告白が絶えないのも納得できる。

なのに、毎回ふってばかりだ。

みんなは無言でコーヒーを飲みながらマドレーヌを食べている。

隆司は毎回の事、同人誌を書いている。


「ねぇ、隆司。今度はどんな漫画書いてるの?」


「知りたいか?・・・ならば教えてやろう!おまえがヒロインだぞ?」


「え?そうなの?内容はどんなの?」


「それはだな・・・じゃじゃーん!凌辱ものだ!」


隆司は描いているものを杏子に見せた。

それを見た杏子は。


「ぶーーーーー!なによそれ!」


「ぶはっ!きったねーな・・・毎回、顔面に吹きかけるな・・・って原稿に着いただろうが」


「あんたが変なこと言うからでしょうが!あんたの中で私はどんな扱いになってるのよ・・・」


杏子は呆れ顔で座ると、マドレーヌを食べながらコーヒーお飲んでいる。

蓮司はいつものごとく窓際に座りながら、外を眺めてコーヒーを飲んで、マドレーヌを食べている。

一方で美咲は勉強をしながらコーヒーを飲んでいる。

1年生は午後の授業は数学と科学らしい。

2年生は体育と英語だ。

隆司は英語が得意分野で体育はそこそこで、蓮司は何でもできるが真面目にやらないがために成績は真ん中くらいをキープしている。

杏子は英語は得意だが体育は苦手なタイプ。


「そろそろお開きにするか。午後の授業が始まってしまうしな。くだらん授業だよな~。社会に出てためになるのは算数と国語くらいだろ。足し算、引き算、割り算、かけ算くらいなもんだろうにな。どこの企業で方程式とか使うんだって。英語なんてホテルマンくらいなもんだろうにな。体育でためになるのは野球くらいだろうな~。うちの学校は毎年、甲子園に出てるからな」


「ぐちぐち言わないの。しょうがないでしょ~。学生なんだから、勉強するのは当り前よ」


「杏子は真面目だな~。将来の夢は花屋さんだろ?どこの世界に花屋さんで数学使うんだよって思うけどな」


杏子はクスっと笑いながらコーヒーカップなどの片づけを始めた。

隆司も原稿をしまって、戻る準備をしている。

蓮司は知らぬ間にいなくなっている。

蓮司は基本無口だが体育だけは真面目に受けている。


「さて、みんな。教室に戻るぞ~。また夕方な」


それぞれが午後の授業のために教室へと向かった。

隆司は生徒会室の鍵を閉めてから遅れて小走りに教室へ戻っていった。


「キャッ!・・・」


ドン


「おっと・・・ごめーん。って三紀子じゃんか。そろそろ授業だぞ?」


「あ、隆司君か~。内緒だけど、本を落としちゃって探してたのよ~。中身がアレでしょ、だから見られるとまずいのよ」


「おーおー。BL本な。真面目なお前が読んでるなんて誰も思わないだろ。ま、見つけたら拾ってやるよ。じゃあ、遅れそうだから行くわ」


隆司は倒れこんで体育すわり気味になってる三紀子を見ながら、手を貸して起こしてからそう言って走り去って行った。

後に続いて三紀子も後ろから着いてきている。

三紀子は運動音痴でカナヅチだ。

プールの時はいつも仮病を使ってみんなが泳いでいるのを眺めている。

理数系というやつだ。

そして午後の授業が終わり、ホームルームの時間が訪れた。

先生が勢いよくドアを開けると、バタンと勢いよくドアを閉めて不機嫌そうに教団に立って、一冊の本をみんなに見せた。


「これは、一体なんですか?こういう如何わしい本を学校に持ってくるなどもってのほかです!他の教室では誰もいませんでした。さぁ、持ってきたものは立ち上がりなさい」


すると、隆司が席を立って先制の元へと歩いて行った。

隆司の席は一番後ろだから、みんなからの視線がすごかった。


「あー、先生、その本なんですけど、この教室の生徒のものか確認はしたんですか?この本は生徒会が預かってもいいですか?風紀を乱すものをほおってはいけないと思います。わが生徒会にはそこにいる森崎が常に目を光らせて取り締まっています。どうか、生徒会にゆだねてください」


「んー、そうですね。生徒を疑うのは教育にもよくはありませんね。では、この件は生徒会にゆだねたいと思いますので、しっかりと取り締まりをお願いしますね」


隆司は本を受け取ると振り返り生徒の前でこう言った。


「風紀を乱すことはルールを乱すことになります。それは社会に出てからも同じことです。会社にはルールがあり、それはその会社の風紀となります。みなさんも気を付けてください」


そう言うと、悠然と自分の席へと向かって椅子に腰かけた。

先制もその言葉を聞いて納得していた。

その後、ホームルームの続きが行われ、チャイムが鳴ると先生は、寄り道をせずに帰るようにと告げて教室を後にした。

いつものごとく生徒会メンバーは生徒会室へと自然と集まった。


「あれ?隆司は?いつも一番乗りの隆司がいないなんて珍しいわね。折角のコーヒーが覚めちゃうわ」


杏子は隆司がいないのを不思議がっていた。

隆司は、ホームルームが終わると真っ先に生徒会室へ行って会長の席に座って同人誌を書いているのだ。

それが、今日に限って姿がないことに杏子は驚いていた。

美咲に聞いても分からないと返事をされた。

ガチャっとドアが開けられる音がすると隆司が入ってきた。


「遅くなっちまったな・・・どうした?遠慮しないで入れよ」


隆司がそう言うとちょこんと生徒会室に一人の女の子が入ってきた。


「隆司、遅かったわね・・・って一ノ瀬さん?どうしたの?こんなところに」


「えっと・・・」


「ほーら、入れって」


隆司が手を引いて生徒会室に入れるとドアを閉めた。


「ほら、今日のホームルームな。あれに関係するんだよ。あれな」


三紀子はモジモジして恥ずかしそうにしていた。

隆司は三紀子を席に座らせて、杏子に言ってコーヒーを出すように言った。


「持ち主はな、こいつなんだよ。な一ノ瀬」


隆司は笑いながら皆に告げた。

杏子はびっくりした顔で一ノ瀬を眺めていた。


「え?え?一ノ瀬さん、ほんとーに、これ一ノ瀬さんのなの?」


「あ、はい・・・実はそうなんです。私の趣味を知っているのは秋月君だけなんです」


「ふふふ。こいつ俺と同類なんだよ。ジャンルは違うがな。ほら、一ノ瀬、もう落とすなよ~。こいつはな~、男同士がいちゃつくのが大好きなんだよ。それから書記に任命した」


隆司は笑いながら三紀子に本を返した。

杏子は、ポカーンとした表情で三紀子を見ていた。


「それから、俺のことは隆司でいい。俺もお前のことは下の名前で呼ぶことにする。皆も仲良くしてやれよ~。三紀子、ここなら思う存分読めるぞー。嬉しかろう」


杏子は本の中身は詳しくは知らない。

何となくは分かっているが中身はみていない。


「じゃあ、私も杏子でいいわ。私も三紀子って呼ばせてもらうわ・・・でその本って」


隆司が三紀子から本を奪い取るとコーヒーを飲んでいる杏子にバッと中身を見せた。


「ぶーーーーー!なにこれー!」


「ぶはっ!きったねーな・・・毎回顔に吹きかけるな!」


杏子は初めて見るBL本に驚いた。

しかも隆司は一番激しいシーンをめくって見せた。


「書記になるのは先生にも言ってあるし、了承も受けているから何の問題もない」


隆司は三紀子のことを美咲に紹介した。

所見なのでそれぞれが自己紹介をして、すぐに打ち解けた。

隆司は美咲に書記の仕事を教えるように告げると、美咲は丁寧に教えていた。


「今日は色々あって遅くなったし、コーヒーを飲んだら解散するか」


杏子は飲み終わったカップと食べ終わったお菓子の包み紙を集めると帰り支度を始めた。

隆司も美咲も帰り支度を終えた。

蓮司は部活でここにはいない。


「三紀子は、私と帰り道が一緒の方向ね。途中まで一緒に帰りましょうか。帰りながら生徒会の事を教えるわ」


「あ、はい。よろしくお願いします。杏子ちゃん」


「うっし、引き上げだ。愛しの妹よ、一緒に帰ろうぜ~」


「もう、おにいちゃんってば。ちょっと待ってね・・・・・お待たせ、帰ろ、おにいちゃん」


校門で分かれると「また明日な~」と隆司から声をかけられると、杏子と三紀子は手を振っていた。

隆司と美咲が家に着くと、部屋に入り着替えを済ませると、夕食の時間となり、家族が食卓に着いて夕食を食べた。

その後は隆司はいつものごとく、エロゲーをしながら同人誌を書いて、そのまま寝入ってしまった。

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