第3話


「店長ごちそうさまでした~!青島も今日はホントありがとね!」



店長のスペシャルコースを堪能した伊能は男と仲良く夜の街へと消えていった。



彼女がいないというだけで伊能にバイトを交代させられ彼氏まで見せつけられたかわいそうな俺は、ラストまで必死に働いて約束通り店長に肉をたらふく食わしてもらった。

ありがとうございます店長。店長は命の恩人です。店長に一生ついていきます、俺。



「最高にうまかった…やっぱ肉最高…」



腹だけは最高に満たされた俺。

狭くて暗くて寒いアパートに帰ろうとした時スマホが鳴った。



『外で待ってる』



男と消えた伊能からメッセージ。


送信先間違ってんじゃねーよ、とぶつくさ文句を言いながら店を出たところに伊能がいた。



「間違ってません」


「うわ!なにしてんの!?」


「おつかれ青島」


「おつかれした」


「今日はありがと。代わってくれて」


「あーいえ、とんでもございません。俺は彼女とかいないんでね、どーせ毎日ヒマこいてますんでね、あの彼氏とデートの時はまたいつでも代わりますんでね、どうぞ遠慮なく言ってください」


「彼氏なんていないけど私」


「はあ?じゃあさっきの誰よ?メンノンモデルみたいなあのイケメンは」


「弟」


「またまたご冗談を」


「ねえ、ケーキ食べたい私」


「はあー?つーか代わってやったのにお礼のひとつもないんですかねえ?伊能さん」


「どこにも行ってほしくなかったの今日」


「…なんだそれ」


「どうしても今日青島に会いたかったから」


「な、なに言ってんだよ…」


「…明日、一緒にバイト行こ?」


「…伊能、それってさぁ…」


「…うち、来ない?」


「……俺の答えわかってて言ってるよな?」


「…あたりまえじゃん」



肉食な俺が好きになった女もとんでもない肉食だった事がわかったクリスマスイブ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

クリスマスなんてクソくらえ まりも @maho-marimo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ