行きはよいよい帰りは怖い怖い怖い怖い怖い

「ピ逃げ」

それは現代の大学における代返の簡易版のようなもので、学生証をタッチするだけで出席ができるようになった現代における大学生の底辺行為である。


そして彼も紛うことなきピ逃げの常習犯であった。

今日の講義は2限のみ。その講義さえ逃げおおせれば1日休みになるという彼にとって重要な逃げ日であった。その上教授は早くに来て準備していることが多く、講堂外にカードリーダのある大学のため、最適なピ逃げ環境が整っている現場であった。


そして決行時間。いつも通り登校しカードリーダーとすれ違いざまにタッチ。無駄の無い動作。今回も彼は業務を遂行した。


かのように思われたが顔を上げたその瞬間、目の前に立っていたのは教授であった。


「おはようございます。」


絶望。

欠席がちな彼は名前と顔を覚えられているのでもちろん即バレ。そして教授はにこやかな顔で


「まさか逃げるわけじゃありませんよね?」


絶絶望。

もう逃げれるわけもない。そんな訳ありませんよとお茶を濁しながら正気を探す。

だがそんな彼の傷をえぐるように


「あと先週の課題出てませんよね?」


絶絶絶望。

完全にノックアウト。

彼は講堂という監獄に囚われた。

(課題は授業中にやった)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る