第5話

 また、切ってしまった。創也くんと話すようになってから、今まで切って無かったのに。もう切らなくて済むと思ってたのに。


「翠さん。」


「何?」


「新しい傷ちゃう?それ。」


「そうだね。」


「我には話してくれんの?」


「何を?」


「何をって…………。理由とか、悩んでる事とか。」


「そんなのないもん。無いものなんだから話しようがないでしょう。」


「無いんか。」


「無いよ。強いて言うなら生きるのがかな。息をして、取り繕って。なんか辛いなぁってなって。生きる事が私には難しい。」


「そうやな。生きるのは大変やよ。一難去ってまた一難。大変な事ばっかや。」


「創也くんもそう思う?」


「うん。我も難しい。でもそれを傷つけて良い理由にしたらあかん。」


「…………。」


 創也くんの言う事は正しい。きっと世界のどこを探しても傷つけて良い理由なんてどこにも無いんだと思う。理由なんて必要なんだろうか?やりたいからやった。やらざるおえなかった。そうしないと心が壊れてしまうから。心の痛みを身体の痛みに置き換えることで生きていたから。

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