第4話 追放
「今まで王家直轄地をしっかりと運営するだけでなく、特産品まで生み出してくれたティリアを、魔の森へ追放、だなんてそんな……」
王妃、王子妃教育には王子妃となり、公爵として領地を授かった後の領地運営が含まれおり、実際に王家直轄地の運営までが課題として出された。
この課題も押し付けられてほぼ一人でやっていたのよね。第一王子は病弱を理由に、そして第二王子は俺はこの国の王となるのだから領地運営などする必要がない、との理由で。本当にこの国、大丈夫なのかしら。
記憶が戻る前の私が生み出した名産品、それは干しキノコだ。
干しキノコを竹に似た木の水筒に入れて持ち歩き、そこに干し肉を少し削って入れ、小麦粉を固めただけのまずい保存食を入れて煮込めばそれなりに食べられて栄養満点スープとなる。
これは爆発的に探究者、いわゆる冒険者に広がり、一気に国全体で取引されることになった。
恐らくうっすらと前世の記憶があったと思うのよね。森の資源として並べられた物の中に、移動でしなびたシイタケに似たキノコを見た瞬間、これだ!って閃いたもの。
そしてつい好奇心のままそのキノコを窓辺で干し、水に入れて戻してを実験していたら成功したのだ。
お陰で干す、という調味方法が広まり、今では様々な野菜を干して保管出来ないか検討されるまでになった。
干しキノコが成功してしまったことで、王子二人には更に煙たがられてお茶会でのイジメの陰湿さが上がってうんざりもしたのだが。
恐らくこの功績があったからこそ、悪名高い侯爵家にかかわらず私が最終候補者にまで残ったのだろう。
今こそその功績を盾にでも、魔の森への追放を勝ち取らなければ。断頭台まであと一歩、から何としてでお逃げてみせる!その為には……。
「……今残っている候補は二人ですが、王妃を担う方がいらっしゃれば、近々まで候補に残っておられた方がおられます。それに、シャリリール様は、殿下からも求められていらっしゃられますので」
半年前まで候補に侯爵令嬢がもう一人残っていたので王子妃の教育は間に合うし、辞めて行く時にも、私に盛大にそう嫌味を言って去って行ったのだから本人もそのつもりなのだ。
「確かにシャリリールは、王家の秘事を修めれば王妃に足るでしょう。ですが、彼女は……」
そう、彼女は第二王子が王になると信じ切っており、第二王子にべったりなのだが、能力的には問題はない。
「ええ、彼女は王妃たる能力はあります。そして私には全くない、貴族からの人望もあります。私がこのまま妃に決定したら、貴族の方々の叛意を煽ることになりかねません」
「いえ。今日の意志の確認が終わり次第、貴方をプルースト家から籍を抜くことは決定しておりす」
恐らくそれを盾に、私に矢面に立たせて第一王子の回復、または子が出来るまでの期限の延長を狙うのだろう、と私が最終審査まで残った時点で推測はしていた。
けど、第二王子とシャリリールの婚約が決まれば、プルースト家を除く貴族家の大半はそちらにつく。それは王家にとっても都合が悪い筈だというのに。王家の本意はどこにあるのかしらね?
ーーー何故ならば。第二王子には、王家が持つスキルを所有していない。だから第二王子は王太子にはなり得ないのだ。
このことを私が知っていると知られたら、今すぐ断頭台へ送られるか一生飼い殺しになるわよね。
「それでも私の中に流れる血は変えられません。……だからどうぞ、私のことは魔の森へとお捨て置き下さい」
決して知られてはならない。そう何度目かの決意の元、もうほぼ変わることのなくなった表情に、ほんのわずかな憂いを浮かべてみせたのだった。
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