【11月25日 晩秋の復縁に慄える】
第21話
2年B組の紗柄京と七星飾利。
私たちは同じクラスでもちょっと区分が違う。
あまりわちゃわちゃするタイプじゃない私は比較的大人しい子たちと一緒にいるし、京ちゃんはどっちかっていうとやかましい(少し言い過ぎかも)雰囲気な子たちと一緒にいる。
もちろんグループの中での話題もそれぞれ違う。
「七星さんと佳奈ちゃん見た? 昨日のバラエティ」
「見た見たぁ! 昨日の番組でもバレーやってたよねぇ」
「私も見たよ。面白かったよね」
「あのアイドルってバラエティでも面白いよね!」
「うん、共演してたお笑い芸人よりも面白かったかもぉ」
「アイドルも多様性だね」
体育の着替え中、そんなことをのんびりと話しながら時間と一緒に行動する。
この別に話す必要のないことで時間を使ってる穏やかな平和な時間も私は好き。
逆に京ちゃんのグループは
「古典の西川の視線がキモくてしんどーい」
「別に普通じゃん? 彼氏ができたからよりキモく感じるんだよ。羨ましいやつめ」
「
「いっつも放課後2人でなんかしてる京がそれ言う?」
大きめな声で談笑しているからかよく聞こえる。
内容が少し下品な時もあるけど、クラスの雰囲気は明るいグループを中心に回ってるから別に違和感というほど変な空気にはならない。
ただ明るいグループの方が私たちのしているテレビの話と違ってリアル寄りの話をしてる。
彼氏とか日常とか、目の前の話をいろいろと。
「そういえば莉亜、彼氏とはどうなの?」
「えぇ? ……いいかんじよ! ついにこの間さぁ……っ!」
「えっ、嘘……マジ!? したの?」
うん、これはリアルな話。
更衣室の女子だけの空間になるとかなりあけすけというか、気にしない人たちなんだなって思う。
「だーから今日の莉亜は発育がいいんだねこれ、凄いよマジで」
「ちょっと
「でも本当に胸大きいよね。莉亜」
「えぇ? あーそれ京に言われるとなんかなぁ……てか大きいと太って見えん? 京は細くて羨ましい」
「それ、嫌味に聞こえるんだけど」
「そーだそーだ! 貧乳同盟だぞアタシたちぃ」
そんな話題に一瞬沈黙が広がった。
その沈黙は多分みんな着替えながら自分の体を見たからだ。
うん、京ちゃんと比べると胸は勝ってるけど身長は負けてる。
トータルバランスだと……多分京ちゃんが勝ってる。
私の身長は低くもないし高くもないけど、スラっとした京ちゃんと比べてしまうとチンチクリンに感じちゃう。
何事も比較だと思う。
160センチの私でも168センチの京ちゃんといるとチビっこく見えてしまう。
それに京ちゃんみたいな身長の高い人だと服を選んだり、鏡を見るのも楽しそうだなって思う。
女子にしては高いけれど男子の平均と比べると少し低い。
京ちゃんはそんな絶妙なバランスで完成されている。
これに運動も勉強も器量も全て備わっている。
そこから少しズレたような私は……うーん考えたくないかも。
お母さん似のいい顔をもらったとは思うけど、お母さんよりも身長が低いし……
体型というのはセンシティブで、隣の芝が青く見えすぎるから求めたら終わりがない。
私だって羨ましがられたこともあるし、羨ましがることもある。
「てかさ、ぶっちゃけ……どんな感じなの?」
「えー? てか佐久って経験ないん? てか彼氏は? いたことあったっけ?」
「バカにしないでよ! いたことはあるよ! あるんだけどさ……そういう雰囲気にならないというかさ、難しいでしょ」
「そーかな? 流れっていうか割と勢いだったわ。京はその辺どう?」
「私?」
「あー確かに気になる! てか京って彼氏の方はさ、いたことあるの? 告白はめっちゃされてるよね」
この話題が耳に入ってから半分の意識で会話をしていた私だけど、矛先が京ちゃんへ向いた瞬間に完全にそっちに意識が向いた。
彼氏、いたのかな。
「あるよ」
その言葉が聞こえた瞬間、ジャージを持ったまま意識だけがそっちへ向いてぼーっと立ち尽くしてる。
彼氏いたんだ……そうだよね。
納得なはずだけど、どこか落ち着かない。
「マジ!? 何人?」
「彼氏は3人かな」
「へー3人なんだ!」
「さっすが紗柄京!」
「なにその言い方、別に大したことじゃないでしょ」
私は3人という言葉になんとなく不安も募るし、大したことないという方も引っかかる。
気の迷いで付き合う人数ではない。つまり性的趣向としては男子も守備範囲ってことだ。
理想的な男の人が出たらとか考えてしまう。
京ちゃんも普通の女の子なんだ。それを考えたら不安になる。
だって女の子より男の子と付き合いたいと思ってるかもしれない。
「というか普通に彼氏いたことあんだね。男子より女子が好きってわけじゃないんだ」
「そうだね、今も飾利が好きだから付き合ってるんだよ」
……すると不安が暴風で消し飛ぶように心が躍る。
徐々に更衣室の人数も減って私たちのグループの上滑りした会話と、もう1つまた別のグループの体育の話。
多分私のグループの友達は野次馬半分と、私への気遣い半分でなんとなく中身のない会話を続けてくれている。
その中でもまだ京ちゃんのグループの話は続いている。
「そうなんだ……ほぉほぉ」
「えっ、んで前の彼は? 告白はされた方? した方?」
「全員告白されて付き合ったよ」
「「ひゃ〜っ!」」
2人の歓声が響く。
そうなんだ。告白するタイプじゃないんだ。
告白された側の私としては少し意外に感じる。
「すごいね、普段から告白とかめっちゃされてるんじゃない?」
「去年は10人くらい……かな? 数えてないから分からないけど」
「すっご! えっ、でっ、それで? 付き合った3人とはヤッたん?」
「……なんかおじさんのセクハラみたいなんだけど」
どんどん話が生々しい雰囲気になってる気がして不安だけれど、なぜか更衣室からは人が減る気配がなくなった。
みんな気になるんだろうなとは思う。
紗柄京だけならいざ知らず、公然と付き合っている私も気になってその場にいてしまっている。
私たちのグループに至っては本当にぼーっと口を動かして会話をしてるけど中身はなにも話してない気がする。
それだけ意識がそっちに向いてる。
京ちゃんを背中越しに視界の端で捉えると
「いいからいいから、教えてよ」
「えぇ……? あー、でもこれは数に入るのかな?」
「入る! 入るで良い! 全員じゃないん? 何人?」
グイグイ来る質問に京ちゃんが苦笑いしているのを視界の端でとらえるけど、私はその答えが気になりすぎて気が気じゃない。
「……じゃあ1人になるのかな」
「「うわぁ~」」
2人声を合わせるとあらかた聞きたいことを聞き終わったのか私たちのグループともう1つのグループがゾロゾロと出る準備を始めた。
うちのグループも3人の目が合って、それをきっかけに更衣室を出る。
「もう行こぉ、なーちゃん」
「うん、そうだね」
「バレー楽しみ~」
そうやって更衣室から出ようとした時、質問攻めでまだ着替えが終わってなくて上半身が下着のままだった京ちゃんと目が合った。
ただ私はどういう感情でいればいいか分からなくて目を逸らす。
無理無理、分からない分からない。
あっちも聞いてたのわかってるはずだもん。
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