第7片
面接が終わり、休憩に入った。外に出ると、レオが待ってくれていた。しかし、僕が来ても、スマホから目を離さない。
「おーい」
僕が、レオの顔の前で手を振りながら呼びかけた。それから、レオはスマホから顔を上げて、「よっ!」と言った。「よっ、じゃねぇだろ」と思った。
僕は、レオが話し始める前に話を切り出した。
「話があるんだけど良い?」
すると、レオは「なんだよ、急にかしこまって……」 と呟いた。
「なんで試験中あんなに視線感じるんだろう、と思ってさ」
僕はレオの言葉に対して食い気味に言った。
「それは、お前が有名だからだよ」
レオにそう言われた瞬間、今までの全てが結びついた。
あの警備員2人が僕の名前や能力まで知っていたこと。
待合室で僕を見てコソコソと話していたこと。
会議室に入った時、会場内がざわついたこと。
僕は(いや、待てよ)と思う。
「なんで、僕は有名なの?」
なんだか奇妙な言い方になった。
「まず、お前の親父もクリアーもヒーローだろ?そんで、その家族に、すげえ能力の持ち主がいたら、そりゃ気になるだろうな」
とレオが返すと、僕は、確かにそうだと思った。「クリアーは剣士でブラウンは射撃手。そんなスターの家族はどんな人なんだろう?」と気になるものだ。
だが大勢は、僕が想像を出来ず、能力を使えない状況を知らないのだろう。僕は、自分への期待の思いもあるかもしれないと思った。まあ期待に応えられるわけはないのだが……
全ては、田舎暮らしだった僕が気付けなかった事実だった。大勢に囲まれて、レオからのヒントでようやく分かった事実だった。
「囲まれて、大勢が自分のことを見ている」と意識すると、急に緊張して汗をかいてきた。
レオにそれを悟られないよう、走ってトイレに駆け込んだ。
そして、トイレの中でカバンからタオルを取り出し、汗を拭いた。
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