第6片
最初の面接が近づき、受験者の間に緊張が走る。そこで、リアムは口を開いた。
「では、一人目を呼ぼうか」
会議室の中がざわめく。
僕は「この広い会議室で面接はしないだろう」と思っていた。別の部屋で面接をすると思い込んでいた。
おそらく、今のざわめきは、その思い込みを華麗にひっくり返されたからだろう。そんなことを考えていると、リアム司令は前に呼ぶ人の受験番号を言いはじめた。自分の番号と一致している。
僕の心がざわめく中、会場内が静かになった。リアムの声だけが響く。
「デイドリーム・ココ、前へ」
最初に呼ばれないと思っていた。これも単なる思い込みだが……
そして、僕が立ち上がると同時に会場が、また、ざわめいた。これに関しては、なぜざわめくのかはさっぱりわからない。
会議室に入ってきた時と同じような、少し小馬鹿にしたようなざわめきだった。そういう気がするだけかもしれないが。
僕は、そんなことを考えながら歩き出した。動きがカクカクしてしまう。
僕は前に近づくとともに、リアムの気迫を強く感じてきた。僕自身、こんなに強い気迫は今まで感じたことがなかった。
そもそも、気迫やオーラのような精神的な圧を、信じてはいなかった。なので余計に、これが真のカリスマかと驚いた。
僕が前に立つと、心臓が押し潰されそうになった。リアム司令から、すごくオーラを感じる。漫画なら、
「ゴゴゴゴゴ……」と描くだろうと思った。
「では、最初に名前を」とリアムが言うと、僕は、震えた声で「デ、デイドリーム・ココです」と答えた。周りは小馬鹿にしたように笑う。
周りから見ると、滑稽こっけいかもしれないが、リアム司令のオーラに負けているのだ。ここに立たないと分からないと思う。
前方にいる、審査員の方やリアムは、何やら紙に書いている。採点しているのだろうか。もしそうなら、今の名前だけで何がわかるんだと思った。
「志望動機を聞かせてくれるか?」とリアムが言うと
「お父さんが僕の友達をかばって落雷で亡くなりました。それから、ダークウェザーズを恨み、ウェザーヒーローを目指すようになりました」
と、僕はオーラを跳ね返すように、懸命に答えた。
僕にオーラを跳ね返すなど不可能だが……気持ちの問題だ。
するとまた、紙に書いている。
「そのお友達は、恨んでないのかな?」
と、追撃するようにリアムは聞いた。
僕は(やってしまった……)と思った。そこをあえて隠しているつもりだったが、あっけなくそこを突かれた。
僕は、答えにすごく悩んだ末にこう答えた。
「恨んでません。父さんも、ヒーローとして人を助けられたことが嬉しいと天国で言っていると思います」
僕は嘘をついてしまった。「恨んでいます」と答えたら、夢香の名前を聞かれて夢香が色んな人に責められてしまう。僕はそう思って、嘘をついてしまった。
「戻ってくれ」
リアムに、そう言われ、後ろを向いた。
僕は夢香が責められないように、かばってしまった。嘘をついたことに罪悪感を感じながら、とても複雑な気持ちになった。
僕は、席に戻っている間に、またモヤモヤとした不思議な気持ちになった。
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