第5話 校外学習と少女

今俺は、岐阜県の高山市に校外学習をすることになっている。


うちの学校は、5月に研修と言うちょっと早い気がするが勉強するよりはマシだ。

それはいいのだが…


(いや、なんでしゅんひとみと、伊藤いとうさんが一緒にいるんだ?)


数時間前…


(先生)「よーし、みんなで班決めろよ」


(まぁ…俊と2人で中学校も行ったし、それでいいかな)


思った通りに俊が、「お前は誰と行く?」と犬のように近ずいて来たので、安全策ならこいつと行くしかないと思ったが、こいつの彼女もついてくると考えると、少し嫌に感じる。


「まぁいいよ」


俊は、少し横を見ながら何かを企むように微笑みながら、伊藤さんの所に話しかけに行っている。


(あいつのことだ、また余計なことを言ってるに違いない)


変なこと言ってないか気になるが、まぁここから見る限り伊藤さんは、嫌そうな顔をしていないので、それはいいのだが

2人で喋ってるのは少し気がかりだ。


話終わったのかこっちにニヤニヤしながら近ずいて来るで、伊藤さんが何か俺の変なことを言ってなければいいが……


「お前なんか変なことでも言ったのか?」


「まぁそれは校外学習を楽しみにしておけって」


(校外学習ぐらい楽にしてくれよ…)


で今に至る、俊がニヤニヤしてたのは伊藤さんを一緒のグループに誘うために俺に黙ってたのかこの日まで


まぁそれはいいんだが問題は伊藤さんが俺の横にいることだ、何故かと言うと周りからの視線が、なんであんなモブと居るのだ見たいな顔で見てくるので普通に傷つくからだ。


「大丈夫なのか俺と一緒に行って」


「大丈夫です…別に他に行く人もいないですし、それに…」


「それになんだ?」


伊藤さんが俊と瞳を見ていて、目が少し穏やかになっているような、大切なものを見るように見ていたので思わず心が暖かくなった。


「いいですね…なんか暖かいです」


「そうだな」


(なんか、居心地がいいな)


久しぶりにこんな気持ちになった、俺も親がいた時には、色々と楽しい過去があったが中学2年生から5ヶ月に1回会えれば良くなってしまったからだ。


その間に俺は、そこまで人と喋ること、遊ぶことがなかったからだ。


「俺達も行こうぜ」


「…そうですね」


伊藤さんは、おれの後ろに着くようにして着いてくるので、少しだけ彼氏になった気分になったが恥じらいを感じ顔を叩く。


「どうしました?」


「いや、自分が気持ち悪くて」


言った途端、横から肩を叩かれたので振り向くと、俊が「ちょっとこっちに来い」と言われたので、やむを得ないので伊藤さんに「ごめん少し待ってて」と言って、俊について行った。


「お前なんで伊藤さんをグループに入れたの分かるか?」


「なんで入れたんだ?」


「この鈍感男が」


と言いながら頭を弱めにぺしんと叩かれたが何でか分からなかった。


「伊藤さんとお前の関係を遠くから見ていたけど、伊藤さんお前のこと好きそうだぞ?」


「お前は何を言ってるんだ?あの完璧少女だぞ?」


急に意味がわからないことを言い出したので、またこいつ誤解していると思ったのでため息をつく。


「どんな誤解をしてるのか分からんがそんな関係じゃないぞ?」


「どう見てもあれは、お前のこと好きだぞ?」


コソコソ話をしていると後ろから瞳が俺と俊の頭を強く叩いてくる。


「何の話してるの!」


頭を叩かれて頭をおさえながら、「力加減考えろ」と、咄嗟に口から出てしまった。


「伊藤さんが、涼太くんのこと好きなんじゃないんかなと聞いてただけだよ」


「うーん、でも確かにそうだね。私も見る限り心許してそうだよ?」


「ないない、お前ら2人みたいな考えじゃないからあいつは。」


少し頭をかきながら、「そろそろ戻るぞ」と言いながら伊藤さんのとこに戻ると伊藤さんは、何か興味津々に見ていた。


「伊藤さん何見てるの?」


瞳が伊藤さんに質問している。


「これは…どうゆう名前のものでしょうか?」


「なにこれぇ?」


伊藤さんが、指を差しているところを見てみると、それはネットに書いてあったさるぼぼと言う高山市と飛騨市の有名な人形らしい。成長や健康を願うと言う意味があるらしい。


「これは、さるぼぼと言う飛騨市の有名な人形らしい」


「そうなんですね」


俊と、瞳が「へぇー」と言う反応をして

やっぱり涼太は、詳しいみたいな感じに見てきたので少し恥ずかしくなった。


「涼太詳しいだな、幼なじみとして誇りだよ」


「それは、良かったな」


自分としてはネットで調べたら出てくるので、ただ単に俊があえて言わないようにしてる可能性が高い。

それにさっきの話が終わったあとだから尚更そう思った。


「涼太さん詳しいですね。」


「そうだねぇ!涼太くん私の彼氏の友達だけの事はあるね。」


瞳、こいつもあいつと一緒に協力しているのかとため息をつく。


「涼太、俺ちょっと瞳とあそこに映そうな食べ物あるから食べてくるね」


「おい、ちょっと待てよ」


逃げるように、俺と伊藤さんを2人きりにさせられる。


「可愛いですね、さるぼぼ」


「……そうだな」


(破壊力がやばい)


少し顔が緩くなっている。その表情は、なんていえばいいか小さな動物のような可愛さがある。


「欲しいのか?」


「…荷物になりますし、大丈夫です。」


(伊藤さん、嘘が苦手だれこれ。)


「ちょってて」


伊藤さんが見ていた3cmくらいの赤色のさるぼぼを持って自分のお土産と、会計を済ませると伊藤さんの所に戻る。


「はい、あげる」


「え…私にくれるのですか?」


「俺が買ったんだから要らないなら俺がもらおうか?」


頭を左右にふって、さるぼぼを手に取る。


「…優しいのですね。」


「それぐらい安いから大丈夫」


さるぼぼを優しく両手で握りしめて、目を閉じて嬉しそうにしている。買ってよかったなと思いつつ、俊と瞳が見ていないか少し不安になる。


「それじゃ、少し観光するか」


「…そうですね。」


タイミングがいいのか、狙ってるのかわからないが、俊が会話を終えた後にちょうど戻ってくる。


「涼太〜買い物はおわったかぁ?」


「家のお土産は、買えたぞ」


そう言いながら俊が、俺の袋の中を見ると笑いながら「お前、食べる物しか買ってないじゃん」と言ってくる。


それと同時に瞳も、「ほんとだー!」と言ってくる。


「家の妹のために買ってかなきゃ行けないからな」


妹は、食べることが好きなうえに沢山食べるから、毎日毎日食費がかかり過ぎる。そんなことを考えていたら瞳が伊藤さんに何か持っていることを見つけ、少しニヤニヤしている。


「伊藤さん、何買ってるの?」


「…秘密です。」


伊藤さんは、そう言いながらカバンの中に静かに入れた。

まあ、バレると瞳のことだから質問をすごいしてくる事を知っているので、バレたくないのも納得だ。


「え〜教えてくれてもいいのに!」


「…そんなに、大したものではないですよ。」


「じゃーいいじゃん!」


少し困っている様子だったので、流石に助けてやった方が良さそうだなと二人の間に入る。


「伊藤さんをそこまで困らせるなよ、瞳」


「そうだね、そこまで会ったことないしね」


(これでちょっとは大丈夫だろ)


瞳は、悔しそうにしている。色々な人と仲良くしたいと入学当初話していたけど、それが今現在できていないのだから悔しそうにしてるのも納得出来る。


「まあまあ、観光楽しもうぜ3人とも」


俊が、笑顔で言った瞬間に瞳も機嫌が治った。

(瞳は、俊を好きすぎだろ)


「それもそうだな」


「伊藤さんは、どこか行きたいところとかあるの?」


瞳がそう質問するので、それに伊藤さんがモジモジしながら。


「朝市に行きたいです。」


その一言に俺と俊、瞳がすごくイメージと違う返答が帰ってきて、衝撃が3人ともにくる。


「朝市…もしかして伊藤さんってそうゆう所が好きなの?」


何か俊が誤解してそうなので、休日に会ったことがバレないように伊藤さんのことを話す。


「伊藤さんは、日常的に料理とか作るからそう言うのを買いたいじゃないか?」


「あ、そう言うことか」


俊が、理解したようで少しホッとした。

それはいいのだが朝市とは、誰も想像できないだろっと心の中で突っ込んだ。


「じゃ…早く行かないと!」


「…早く行きましょう」


俺の後ろに伊藤さんが隠れながら、走って朝市まで向かう。


朝市に着くと、まだそこには屋台が沢山あった。


「……間に合いましたね。」


「そうだな」


俊と瞳は、学年でも上位の体力を持っているので運動していない俺からすると2人に着いてくだけで息がすぐにあがる。


「お前ら持久力すごいな」


「そりゃまぁサッカー部やし、走るからな」


俊が、早く見たいと言う顔で見てくるので伊藤さんに、「どうする」と質問をする。


「私は、涼太さんについて行きます。」


「いいのか?」


意外な言葉が返ってきたので、少し戸惑いつつ話を聞く。


「それが私にとって…なんでもないです。」


何か言いかけてたので非常に気になるがそこまで追求すると気持ち悪いので聞かないようにした。


「伊藤さんは、何買うんだ?」


「桃を買っていこうと思ってます。」


(俺も同じ考えか)


俊と瞳は、屋台のおばあちゃんと楽しそうに話していたので、邪魔しないように伊藤さんと柿を買うことにする。


「…桃の美味しい見分け方分かりますか?」


「そんなの気にしていないからな」


屋台の柿を見ながら、こっちを振り返り話しかけてくる。


「桃はですね…丸くて平べったい形が美味しい桃です。」


「へぇそうなんだな」


「例えばこれとかいいと思います」


そう言いながら、屋台に並べてある桃をひとつ取る。


「この箱の桃全て貰えますか?」


(即決で買うんだ。)


おばちゃんが、桃を袋につめながら「沢山買ってくれてありがとう」言って、伊藤さんに渡している。その袋からひとつ桃を取って、俺に渡そうとする。


「これあげます。」


「え、いいのか?」


「……これでさるぼぼのお礼です。」


手に桃を渡してきたので、流石にここで返すと失礼になる。さるぼぼのお礼としてここは素直に受け取ろうと思う。


「多分甘いと思います。食べてみてください」


「あ、うん」


桃をかじった俺は驚いた。口の中でジュワっとみずみずしい桃の甘さと、桃独特の香りがベッドマッチで口の中でハーモニーを奏でている。


「めっちゃ上手いなこれ」


「それは良かったです。」


少し安心したような顔をしているので、ちょっとだけ心を許してくれたのかなと、素直に嬉しかった。


(それはさておきそろそろ俺も買わなきゃな)


「私、桃もう買ったので涼太さんの分も私が選びましょうか?」


「それは助かる」


ここは、自分で選ぶより伊藤さんに選んでもらった方が美味しい桃が買えると思ったので任せることにした。


伊藤さんが、桃を選んだらしくお金を屋台の人に渡した。


「ありがとうな」


「…どういたしまして。」


伊藤さんから、桃を受け取ると同時に俊と瞳が返ってきた。


「涼太〜、そっちはおわったか?俺は、見ろよ味噌売ってたから買ってみたぜw」


「それどうやって食べるんだ?」


「さてどうしよう」


こいつは、いつもどうりだなと思いつつ瞳も何買ってたので聞こうと思ったが、同じ回答が返ってきそうなので聞かないことにした。


「あと、2時間あるなどうする?」


「俺行きたい場所あるんだけどいいかな」


俊が携帯を取り出し、行きたいところに指を差してみんなに見せる。


「ここの団子屋さんなんか普通のと違うらしいぞ?みんなで行かないか?」


瞳は、「俊が行くなら私も行く!」と言っているが俺と伊藤さんが居ることを忘れて欲しくは無い。


「俺もいいけど、伊藤さんはどうする?」


「私もついて行きます。」


(嫌がってないから大丈夫か)


急に俊が、目をキラキラさせながら携帯を見つめている。


「ここの団子……100円で買えるじゃん!普通120円ぐらいするよね?」


「ワンコインだ!」


俺と伊藤さんは、2人のテンションについていけないのでふたりが落ち着くまで黙り込む。


「お前ら盛り上がるのはいいけど、早く行かないと無くなるぞ、ここに、無くなり次第終わりって書いてあるけど?」


「それはやばいな」


「え…また走るのですか?」


自分が余計なことを言ったような気がするが、まぁ団子は食べたいしここは、伊藤さんに我慢してもらおう。


とりあえず伊藤さんの横に行き、「ちょっと我慢して走ってくれ」と謝っていた。


「団子がなくなってしまうのでしたらしょうがないですね。」


少しため息をつきながら、僕と一緒に走って団子屋さんに移動する。

数分後走っていると、2人が先に着いていた。


「涼太と、伊藤さんおそーい!」


「体力化け物かお前ら」


俺と伊藤さんは、息切れをしておりちょと待ってと言うジェスチャーをして、息切れが治り、何を買うか決める。


「ここの団子は少し普通の団子と違うらしいぞ?」


「そのようですね。」


何が違うのかと言うと、普通の団子であるならば甘い物をイメージするのだがここの団子は、醤油で作られており甘くないのだ。


「とりあえず!おばちゃん4個団子ください!」


俊が元気に、4個団子を買って俺たちに渡してくる。これは奢りなのか後で払えなのか分からないが、自分の食べたいものを食べたかったと少し残念な気持ちになる。


「これは俺の奢りだから、美味しく食べろよ?」


「有難く貰うよ」


「俊ありがとぉ!」


「…俊さんありがとうございます。」


(これ見た目から美味しいやつだよな)


俊に、団子を貰った時に風に乗って、香ばしい醤油の匂いがして、我慢できなくなり食べてみると、いつものみたらし団子と違って焼きたてで暖かく、もちもちしていてすごく感動した。


「うまいな」


「…そうですね、醤油がいい味を出しています。」


(伊藤さん今顔緩めたような、これ美味しいもんな)


横を見ると、俊と瞳が目をキラキラさせながら団子を食べているところを見ていると、子供といるような気持ちになった。


「俺もっと買ってくる!涼太もいるか?」


「俺はいいから、瞳と食べな」


俊は、瞳と共にルンルンしながら団子屋さんのところに買いに行っているところ見たら少し、笑ってしまった。


「どうしたのですか…急に笑い出して」


「いや、あの2人見てると面白くて笑」


近くのベンチに腰をかけ、伊藤さんがまた話し始める。


「…そうですね」


そう言いながら、伊藤さんは俺の手を触ろうとしたが、手を引っ込めた。


「どうかしたか?」


少し下を向きながら。


「…なんでもないです。」


(昔にもなんか、こんな出来事があったような記憶がある…)

そういえば俺には、昔よく話していた女の子がいた、その子はショートヘアの黒髪、学校では人気者で学年を超えて人気があった。


その子の事が好きで、自分なりにその子にどうしたら振り向いてくれるのかを考えて学校生活をしていた。だがある時その子は虐められるようになった。


原因は、クラスの女子同士の嫉妬だ。その影響で明るいその子は、少しずつクラスに馴染めなくなって静かに本を読む女の子になっていた。

だがある日、クラスでいじめの瞬間を見しまった。


「キモイんだよ!お前の存在が邪魔」


「髪の毛引っ張らないで……痛い!」


(嫌な時に来たな)


静かな教室に怒鳴り声だけが響いていた。


「こいつの顔おもろくねw」


「それなぁ」


その時おれは、サッカー部に所属していたがサッカーをやってたとはいえ、陰キャの立場だったので、そこまで人と話すことが苦手だった。


「やめてください!」


「口答えするなよ、ちょっと押さえてて」


(何しようとしてるんだ……て、え?)


その時、手を2人に押さえられてて、いじめの主犯が椅子を持って、振り下ろそうとしている。


(流石にやりすぎだろ!)


「これで…!」


ギリギリ椅子を止めることが出来たが、周りのいじめっ子たちは、びっくりしていた。


「何してるんだ涼太、お前もやられたいのか?」


「流石にこれはやりすぎだ」


いじめっ主犯が、「もう行こうぜ」と言って、教室から出ていく。


「大丈夫か?」


「なんで助けるんですか?」


その時の女の子の顔は、すごく悲しそうな泣きそうな顔をしていたので俺は、一言いった。


「女の子がいじめられてたら助けるだろそりゃ」


「でも…次君が虐められるんじゃないの…?」


(その時はしょうがないな)


その時は、キツい顔を見せると彼女が不安になると思い。


微笑んで「大丈夫だよ」と言った。


少女はその瞬間に少し泣きながら微笑んだ。


「ありがとう」


少し考え込んでしまっていた、すっかり俊と瞳は、団子を何個食べたのか知らないが20個以上と言うのは見たらわかった。


「…なんか考え込んでいたみたいですが大丈夫ですか?」


「気にしないでくれ。」


伊藤さんが、気を使ってくれてるのが感じ取れる。


「それならいいのですが…」


「少しだけ昔の記憶を思い出してただけだ。」


自分の顔を叩き赤くなる、少し頭が冷えたので観光を楽しむことに集中しよう。


「次どこ行くんだ?」


「それなんですけど…」


(俊と瞳がお腹いっぱいで立てないだろうし、どうしようかな)


もしここで、俺がコミ力があればこの子を楽しませることが出来るが、生憎そのようなスペックは持ち合わしていない。


(困ったな…どうしようか)


俺の中で考えた結果、スマホに頼ることにした。


高山観光と調べてみると色々と出てきたが、どこも遠いので古い町並みをブラブラしようと思う。


「伊藤さん、俊と瞳が休憩している間に古い町並みでも歩くか?」


「……せっかくですし、そうします。」


「じゃ少し歩いてくるから2人は休んどけよ?」


そう言うと、俊と瞳が2人とも頷く。


(どのように会話しようか…)


俺が今喋れることは、学校のことしかないのでとりあえず話をはなしてみる。


「伊藤さんは、学校生活どんな感じ?」


「…入学当初よりは楽しいですよ?」


最近になって、伊藤さんが無表情から少しずつ変化しているのだが、それでもまだ無表情の時が多い。


でも、伊藤さんは人との関わりは嫌いではないことが、今回の校外学習を通して知ることが出来た。


「それは良かったな。」


「…」


「どうした?」


俺が歩きながら喋っていたら、急に伊藤さんが歩きを止めて、こっちを見つめてくる。


「今日は色々とありがとうございます。」


深くお辞儀をしてくるので少し戸惑いながら


「私、接しにくいですよね…。」


「そうなことないぞ?」


「……え?」


伊藤さんがこっちを見てきたので、自分の本心を彼女に伝える。


そうしないと彼女は、信用してくれないと思ったからだ。


「楽しいよ、伊藤さんと喋るの」


「…」


俺は、伊藤さんが下を向いているので肩を優しく手を置き、思ったことを話す。


「だから安心しろ、俺らはお前のこと迷惑と思っていない。」


「…!」


「だから心配するな」


自分で言ってて恥ずかしいが、本当のことだからしょうがない、ここで嘘をついても自分が自分を許してくれないと思った。


伊藤さんが、頭を上げてこちらを見てくるので微笑む。


「…君は優しいね。」


「そうでも無いぞ?」


(ほんの少しだけ微笑んだような気がした。)


俺が見る限り、何か過去に何かあると思う。


前の数学の授業の時に「家庭が許してくれない」と、言ってたが考えてみればそんな家庭があるのか疑問でならない。


まぁ、他人の家庭事情に踏み込むのも図々しいと言うか迷惑なだけだからだ。


「そろそろバスに乗る時間だな。」


「それもそうですね、戻りますか。」


さっきのベンチの所に戻ると復活していた2人がイチャイチャしていた。


少し話しずらいが集合時間に間に合わなければ後で先生に説教されるので仕方がない。


「お前らそろそろバスに戻るぞ」


「もう3時か、涼太ありがと瞳と話してたら時間を忘れていたわw」


俊と瞳はベンチから腰を上げ待て、荷物を持ち上げる。


時間とともに学校のバスがくる。


俺らの番号はC組なのでCと書かれているバスに乗る。


「こっから高校まで2時間か」


「…少しキツイですね」


俺たちは、バスの1番後ろに座り俺は疲れてたのか乗って5分後に眠りについた。





バスに揺られ、その振動で目が覚める。

目を擦りながら横を見たら、さすがに疲れたのか俊が眠りについている。


(さすがにこいつも疲れたんだな)


伊藤さんは、起きているらしいが小説を読んでいるらしい。


「伊藤さん起きてるんだな」


「あ…起きたんですか」


俺は、水を飲んで乾燥していた口を潤した。


俺も小説を読もうと思ったので、バスから小説を出した。


(俺も小説読むか)


バスに揺られながら、小説を読んでいたらいつの間にか時間を忘れていた。


少し外を見たら学校の近くまで着いていた。


「そろそろ着くぞ、起きろ2人とも」


「ん…?」


目を擦りながら俊と瞳が、目を覚ます。

俊は少しヨダレを垂らしていたので自分のティッシュでバレないように拭き取っている。


「伊藤さん、今日はどうだった?」


「…楽しかったです。」


その言葉を聞き、俺は少し安心した。

学校にバスが停車し、俺たちはバスから外に出る。


久しぶりの外の空気はとても美味しかった。


俊が近ずいて来て、俺に話しかける。


「伊藤さんとはどうだったんだよ」


「お前が求めていた話なんてないぞ?」


「またまたぁ」


久しぶりの校外学習は、俺の中で結構楽しかった。


伊藤さんと少し近くなれたのも良かったが、中学生では苦痛な校外学習が楽しく感じれたことも大きい。


少し考えていると、伊藤さんが近ずいて話しかけてくる。


「…一緒に帰りますか?」


「そうだな」


俊と瞳は、周りを見る限りもう帰ったらしい。


それに今は7時なので女の子を1人にする訳にも行かないので一緒に帰ることにした。


「…私、今後色々な人と喋ってみたいと思います。」


「少しずつ頑張りな」


この校外学習で成長したのは、俺だけではなく、伊藤さんも人と喋ろうとする勇気がついたらしい。


俊と瞳にすごく話しかけられてたから人と喋ることも少しは慣れたのだろう。


「…今日はありがとうございます。また明日も学校で」


「またな」


日に日に伊藤さんと話しているが、どこかで聞いたことあるような声なのがどうしても思い出せない。


伊藤さんを家に送ったあと、俺は歩きながら美咲がしっかりとご飯を食べているかが心配で、早歩きで家に帰る。


家に着いたので、ドアを開ける。


「ただいまお土産買ってきたぞ」


美咲からの返答がない、俺は心配し居間に行くとソファに寝てる美咲がいた。


丸まって寝ていたので、上からバスタオルを置いてあげる。


(俺がいなかったもんな、疲れるのもわかる。)


美咲が寝ているので、静かにその場を去っていく。


今日の夜ご飯は昨日のあまりを温めたものにしようと冷蔵庫からスパゲッティの余りを出し、レンジで温める。


温めていると美咲があくびしながら、台所にくる。


「お兄ちゃん帰ってきたんだね。おかえりなさい」


「おはよう、ゴメンな今日は」


少し眠そうに席に座る、起きたばっかりなのにご飯食べれることに驚いた。


「え、お腹すいてるのか?」


「うん」


(スパゲッティ食べようと思ったけど、妹にあげるか)


美咲が食べたそうだったので、俺はしょうがないなと思いつつスパゲッティをいもうとにあげる。


「熱いから気をつけろよ」


「はーい!」


そう言いながら笑顔で食べているので、少しホッとした。


「今日校外学習どうだった?」


「まぁ、楽しかったよ」


美咲は、俺の言葉を聞くと興奮したように質問をしてくる。


「もしかして、伊藤さんと何かあったの!?」


「何期待してるんだよ」


少し残念そうな顔をしているので、はぁとため息をして桃を見せる。


「その代わりもも買ってきたから食べるか?」


「やったぁーー!!」


少し待ってろといい、皮をむいて、食べやすいサイズに切り分ける。

お皿に盛り付けて美咲に渡す。


「どうだ美味しいだろ?」


美咲が口に入れた瞬間に、ほっぺたを触って美味しそうにしている。


「なにこれ、美味しい!」


「高山でフルーツ売ってたから買ってきたんだよ。」


喜んでもらえたので、素直に嬉しい。



ベットの上に倒れる


「はぁー今日も疲れた」


今日も色々あったが、伊藤さんと色々と話してみたけど日に日に、表情が優しくなっているような気がする。


(伊藤さんも、学校に慣れてきたのかな?)


まぁとりあえず、明日も学校があるから今日は少し早めに寝ようと思う。

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