第8話 家の両親は仲良くなれば俺の事で感無量? (1)

「俺の息子が高校生になったら学年上位の好成績か。それは凄いな」

「うん、本当に凄いよね。家の新作がさ……」

「うん、そうだな……」


 う~ん、もう仲良くなり終えたのかな? 家の両親はさ……? と、少しばかり気だるげに思う俺なのだが。実は先程家の両親……。俺の久美ちゃん先生の容姿の素晴らしさを親父さまが何度もお袋さまに尋ねたがために。お袋さまは嫉妬心をあらわにして拗ね、夫婦喧嘩になったのかな? 


 まあ、その辺りは、俺自身も下の部屋にいた訳ではないからよくわからないけれど。

 家の親父さまはお袋さまの御機嫌取りをするために。


『あれ~』、『いやぁ~』、『駄目よ~』、『お父さんなんか大嫌い!』、『私から離れてよ~』と不満を漏らす、自分よりも一回り以上も年齢が違う、若いお袋さまを強引に押し倒してさ、男らしく頑張って、満足させ。


『お父さん、大好き~。愛している~』と多分言わせたのだろう?


 俺が久美ちゃん先生から借りた英会話のテープを何度も聞くのが飽きて、もう二人の夫婦仲良くは終わったかな? と恐る恐るヘッドホンを外せば。下の部屋からいつもと違うような親父さまの凛々しい声音で俺のことを褒め称える台詞が聞こえると。

 家のお袋さまもいつもとは違う甘え声音で親父さまへとやはり俺のことを褒め称える言葉が聞こえてくるから。

 俺が高校へと入学して成績が上がったことがそんなにも嬉しいのかな? と思えば。


「私ね、お父さん?」


 お袋さまが親父さまを呼ぶ声が聞こえてきた。


「……ん? 何だ、お前?」


 親父さまはお袋さまの呼びかけに反応し、言葉を返した。


「私ね、新作の中学校三年生の最後の進路指導の時の三者懇談会でね。担任の先生から山本さん、御宅の息子さんは、公立高校の入学は何処も厳しいと思うので。私学の滑り止めを本命にして受けましょうと言われた時にね。自身の頭をハンマーで殴られたぐらいショックだったのよね」


 お袋さまは俺が中学三年生の時の担任の先生に、成績が悪いから公立高校の入試は無理だと告げられ、落胆したと嘆く。


「そうなんだ?」

「うん」


 お袋さまは親父さまに頷くと。


「あのね、お父さん? 新作が私学だけれど何とか高校へと入学もできて、いざ授業が始まり月日が経てば。私また担任の先生に御宅の息子さんはどうしようもないくらい頭が悪いですねと嘆かれると思っていたら。担任の先生から新作は大変に頑張り屋さんで、学年上位の成績の上に。我が校へと通う生徒なのに。山本君は大変に素直で、身なりも乱れていない。我が校が他校へと自慢が出来るほどの真面目な容姿をした生徒さんだから。私も担任として鼻も高く。山本君には大変に期待をしています。特に彼は進学希望みたいなので、山本君と御両親……。そして担任の私とで頑張りましょう。ふつつかな者ですが、私も山本君を出来る限りサポートしますから。お母さん頑張りましょうねと、褒め称えてくれたの。だから私涙が出るほどうれしかったの……」


 お袋さまはつい最近おこなわれた学園での三者懇談の内容を感動……。感無量になりつつ、親父さまへと簡易的に説明をした。


「そうか……。それは嬉しいな……」


 親父さまはお袋さまの学園での三者懇談会の内容を聞いて、自分の心の中が、じんわりと温かくなり、感動したみたいでね。


 その様子をみたお袋さまは更にじんわりと、ポッキリと感動したみたいでね。


「うん、嬉しかった」と素直な気持ちを告げる。


 でもさ、ここは大変に感動的な場面……。物語の前半のベストシーンと言ってよい、テンプレ場面だから。


「うぅ、ううう」


 お袋さまのお涙頂戴シーンが訪れれ、二階にいる俺の耳へも涙! 嗚咽! と言う奴が聞こえてきた。


 だから俺は、苦労かけたな、お袋さま~~~! 今後は俺の通う学園の学年トップになるように頑張るから。母ちゃん! 父ちゃん! 俺、明日はホームランだ! と、マジで真剣に思えば。


「最初はね、私、新作が通う学園は私学だし、授業料高いし。その上、ヤンキーの巣窟……。何処も行く高校が無い子達が集まる。偏差値も二十あるの? と呼ばれるような……。私も友人達に家の子【えのかわ高校】なのと。口が裂けても言えられないようなワーストナンバーワン高校だけれど。担任の先生が新作を褒めてくれて、目にかけてくれているみたいだから。私本当に今の学園に行かせて良かったと思っているの」


 今の今まで泣いた烏がもう笑ったではないけれど。家のお袋さまは嗚咽……。すすり泣くのを辞めて、笑顔で親父さまへと、俺を県下ワーストナンバーワン! 悪の巣窟高校へと進学させてよかったと告げる。


「そうだな、母さん……。母さんの言う通りだ……」


 親父さまはお袋さまのことを温かく見詰め、微笑みながら、幼子の頭でも撫でるように、ヨシヨシしながら告げる。


「でしょう、お父さん」


 親父さまの愛情を頭から一杯もらいながらお袋さまは嬉しそうに言葉を返した。


 だからその後はまた仲の良い二人は、二階の部屋に俺がいるのにブチュ~~~! だよ。


 だから親父さまとお袋さまの身体は火照り、お互いを求めあうから。二人の第二ラウンドのゴングがカン! となるから。


「あなた~」

「お前~」


 その後はまた懲りもしないでお袋さまの嬌声と親父さまの男らしく、荒らしい台詞が二階の俺の部屋へと聞こえ始めるから。


「二人共~、頼むから~、勘弁してくれよ~!」


 今度こそ、俺の口から嘆きと嘆願が漏れ、二階の自分の部屋でドンドンと暴れ狂う。


 でも俺の両親はそんなことお構いなしに愛を育むから困って仕方がない。



 ◇◇◇


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