第4話 暗黒の欠片
アルフレッド・ザン・社─小さな辺境の村ツワーノ出身の若者でありながら、その実は聖竜族の血を引く勇者。という雑な設定を盛られた“この物語の主人公”。
「ジーク!その人を守りながら安全な所へ!」
「うむ!」
勇者に指示され、俺の体をひょいと担いだ大男の名は戦士ジークハルト。勇者の親友かつ相棒で、めちゃくちゃ強くて寡黙なタフガイ。それ以外の設定は特にない。姓すらも付けられてない。
「大丈夫?怪我は無い?」
ジークハルトにより岩陰に運ばれた俺に声を掛けた女は魔道士マナフレア。アルフレッ ドと恋仲になる美少女。巨乳。名前は俺が中1の時に片思いしてたクラスメイトの
俺が頷くと、ジークハルトとマナフレアの二人は俺の無事を確認し、
「オレ達はアルフの加勢に行く」
「あなたはここを動かないで」
と言い残し、ドラゴンと戦う勇者の元へ。俺は岩陰から彼らの戦闘を見守ることに した。
勇者がドラゴンと一進一退の攻防を繰り広げている、その時だった。
『メカーーっ!!』
という、伊澤詩織か新井里美みたいな特徴的な声で叫びながら飛び上がる、小柄な少女の姿が見え た。その肩にはロケットランチャーみたいなものが担がれており、銃口から発射されたロケット弾が轟音と爆風を伴いドラゴンに命中した。
「うああああああ!!」
思わず叫んでしまった俺の予想が正しければ……
「食らうメカ!フォースセイバー!!」
少女は金属の腕に握るレーザー剣でドラゴンを一閃した。彼女の名はペトルーシュカ。美少女の姿をしたヒューマノイド……ロボットだ。
剣と魔法のファンタジー世界に、機械の体を持つメカ娘がいて銃器やビーム兵器を使うなんて、滅茶苦茶でイカレてる!そう思うのが普通だが、これには理由がある。“この世界”を考えた奴は、物語の設定を考えている途中で「サガフロンティア」というゲームにハマ ってしまい、その影響でこの物語”は中世風ファンタジーでありながら近代兵器やロボットも出てくるグダグダな世界観になってしまったのだ!
「よくやったぞルーシュ!トドメは僕が!!」
勇者アルフレッドが剣を上段に構えると、刀身が光り輝き出す。
「必殺!アルティメット・ギガンテック・スラーーーーッシュ!!」
オーラだか闘気だかで出来た巨大な刃がドラゴンを一刀両断。ポーズを決める勇者を見て、俺は思わず叫ぶ……
「だっせえええええええええ!!!!!!」
そして、落ち込む。何故ならば、そのダサいネーミングとポーズ、そしてグダグダな世界を作ったのが“俺”なのだから。
そう、ここはかつての俺が“漆黒の聖典”に書き記した物語“
“である!”じゃねえよ。恥ずかしすぎる。誰か俺を殺してくれ……
『異世界転生先は、かつて俺が書いた“黒歴史ノート”の中!?あまりにも恥ずかしすぎるので、魔王としてこの世界を滅ぼしてやる!』 (仮) たかはた睦 @takahata62
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