第2話
翌日、紬央は葉綾の家を訪れた。玄関先でベルを押すと、ほどなくしてドアが開いた。葉綾は部屋着のままで、髪をひとつにまとめていた。いつものおしゃれな彼女からは想像できないラフな姿に、紬央は少し驚いた。
「紬央?こんにちは?」
葉綾の声は少しだけ沈んでいた。
「こんにちは、葉綾。クリスマスだし、ちょっと渡したいものがあって。いいかな?」
紬央はバッグからラッピングされたCDを取り出し、葉綾に手渡した。
「?」
葉綾は首をかしげながら包みを開けた。中から現れたのは、紬央が昨日買った「クリスマスの恋」をテーマにした明るい音楽のCDだった。
「これ、私に?」
葉綾は少し驚いたように紬央を見つめた。
「そう。最近ちょっと元気なさそうだったから、これ聴いて元気出してほしいなって思ってさ。曲がね、なんか葉綾に合いそうだなって。」
葉綾はCDジャケットを眺めながら、口元に少し笑みを浮かべた。「クリスマスの恋」なんて自分の状況をまるで見透かされたようで、少し苦笑したが、それと同時に紬央の気遣いが嬉しくもあった。
「ありがとう。紬央らしいね、こういうの。」
葉綾はそっとCDを眺めた。その横に紬央も腰を下ろす。
「最近、ちょっと落ち込んでたでしょ。私なんかにできることってこれくらいかなって思って。」
紬央は照れくさそうに笑った。
葉綾は少し考え込むような顔をした後、ポツリと呟いた。「そうだね、確かにお見合いがうまくいかなかったのは、ちょっと厳しいかな。自分の価値とか、これでいいのかなって考えちゃったりして。」
紬央は真剣な目で葉綾を見た。「葉綾が悪いとかじゃないでしょ。相手と合わなかっただけだよ。」
「…そうだね、紬央の言う通りかも。ありがとう。」
葉綾は笑顔を浮かべながら、紬央の肩にそっと寄りかかった。
その日の夜。葉綾はさっそくCDをかけてみた。軽快なリズムと明るい歌声が部屋に響く。失恋の悲しみを吹き飛ばすようなメロディーに、葉綾は自然と笑みを浮かべた。
紬央の顔を思い出しながら、葉綾は「こんな友達がいるってだけで、今年のクリスマスは十分特別だな」と心の中で呟いた。
外ではクリスマスのイルミネーションが輝いている。その光が、葉綾の部屋にも柔らかく差し込んでいた。
(つづく)
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