第4話 きづいてしまった
家へと逃げ帰ってきた俺は自室に入るとようやく息を落ち着けた。水間だと家まで追いかけてきそうだからな。ここまで無事に戻ってこれたことに乾杯したいくらいだ。
「さてと、何しようかな」
とりあえず帰り道の途中の自販機で買ったカロリーマイトと家に常備してあるカップ麺を昼に食べる。料理もできないわけではないけれど自分だけのためには作る気にならない。部屋を見渡してこの後の計画を立てることにした。
とりあえず昼食を摂り終わったので俺は本棚に手を伸ばした。今月はなんやらかんやらで金欠なので新刊は買えなかったラノベを読むことにした。それでも好きなヒロインの神回と呼ばれる回は何回読んでも飽きない。
しばしの間、ラノベを読みふけって一息つくことにした。少し目が疲れたから飲み物飲みながらアニメ見よ。(目の休憩にはなっていないが媒体が変わればOKだと思っているオタクの図)
砂糖控えめのカフェオレを入れてルンルン気分で今期注目の異世界転生アニメを見る。有料サービスに入っているから一気見である。あぁ、至高の時間……。
と、ここでゲームの周回をしなければいけないことに気づいた。やば、推しキャラのガチャ引けるの今日までじゃん!ダイヤ貯めて何としても出さなくては……!
なんてやっているうちに気づけば夕方になっていた。午後6時になると公式Limeがハチャメチャに溜まる。数少ない友人からのLimeが埋もれてしまうので一日1回削除するようにしていた。
Limeを開くといつもは一切変動のない通知欄に通知が来ていた。俺は急いでベルマークをタップした。何事だろうか、また迷惑垢からの無断追加とかかな。
なんて思いながら開くとそこには友達かも?という文字と共に1人のプロフィールが表示されていた。迷惑垢とかなら即ブロックなのだがその名前が俺の削除操作の手を止めさせる。そこにはこう書かれていた。
”水間 恵”
今どきの女子高生がフルネームでLime登録するか?とか、そもそもなぜ水間が俺のLimeを追加したのか?とか疑問は絶えなかったけれど追加と同時にメッセージが来ていたのでとりあえず開いて見ることにした。
『こんにちは』
『いきなりごめんなさい。水間 恵です』
『同じクラスになったし交換してなかったなと思ったのでクラスLimeから追加してしまいました』
表示された文字に困惑する。何故に水間が俺のLimeを気付かうんだ……!?と思ったけれどよく呼んだらその謎もすぐに解決された。
『だから、良かったら桜宮くんも追加してください』
まさかのこのLimeは桜宮宛てだったのである。最後のスクロールを終えて、俺は安堵するやらずっこけるやら。どうしてこういう気まずいドジを踏むかなぁ。
どうしてこんなドジを水間がかましたかと言えば俺と桜宮の名前が同じだからだろう。俺の名前が康太で桜宮の名前が航太。どちらもLimeの名前はローマ字で登録してあったから紛らわしかったのかもしれない。
にしてもどうしたものか……。明日水間に直接聞いてもいいけどなんか殺されてもおかしくないような気がする……。ていうか、今日の放課後のあれってもしかしてこれのこと!?
普通に送信取り消ししてくれれば見なかったことにするんだけどな……。桜宮のことを他の奴とは違う感じで見てたのは何となく気づいてたし。俺がなんか返せばそれでいいのか!?
俺は中村の方で……と打ちかけて消す。送る先間違ってるかも……と打って消す。お手数ですが本人に直接……と頭の中で組み立てて却下した。
俺は深くため息をついてスマホ画面を切り替えた。話しにくい人に堅苦しい文章を送り付けるより話しやすい人にそれとなく匂わせよう。俺が開いたのは桜宮とのトーク画面だった。
『桜宮、お前水間と仲良いのか?』
俺が送ると数分後に既読が着く。モテる男はレスポンスが早くて助かる。彼氏にしたいくらいだ。
『去年、委員会が被ったからな。なんだ?お前、気になるのか?』
ニヤニヤとしている桜宮の顔が想像出来る。色んな意味で気にはなるけれどこの場合桜宮が聞きたいのはそういうことでは無いだろう。そういう意味で言えば俺は水間に、というより楓原以外に興味がない。
『いや、そういうわけじゃないけど。もし水間が好きになるとしたらどんな相手だと思う?』
好かれている実感はあるのか探りを入れてみる。文面だけ見たら俺が水間を気になっているようにしか見えなくて自分でも首を傾げてしまったけれど上手い聞き出し方が思いつかなかった。陰キャの精一杯である。
『誰だろうな?まあ、俺じゃないのは確かだとは思うけど?』
という、絶望的な返事が返ってくる。これは桜宮鈍感説に1票……?それとも脈ナシすぎて眼中に入ってないに1票……?
ひとりで悶々としている間に返事を返すタイミングを逃して会話は終わってしまった。水間さんや、これは望み薄な恋かもしれませんよ……?と考えてからなんで俺がアレの恋愛を考え込んでるんだと馬鹿らしくなって寝ることにした。
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