乳なし芳子

芳賀村こうじ

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 あるところに琵琶で歌う美女がおったそうじゃ。

 彼女の名前は芳子。老人のような白髪に赤い目で妖怪のようだと恐れられ旅に出たそうじゃ。

 しかりある時、その琵琶の音色に聞き惚れた亡霊が一言。


「芳子、満月の夜、おまえを嫁に貰いに行くぞ。ふふ、ふふふふ……」


 キショかった。

 怯えた芳子はすぐに寺へと駆け込んだんじゃ。

 そこで僧侶が一言。


「全身に念仏を描けば助かるかもしれん」

「それなんてプレイですか!?」


 しかし背に腹は代えられん。

 渋々芳子は僧侶に念仏を描いてもらうことになった。


「あ、あの、僧侶さま……。そこにもですか?」

「決まっている!!」


 僧侶はイケメンだった。

 芳子も美女だった。

 そんな二人が全身に念仏を書くというプレイをしたらどうなるか。


 まぁヤルことヤッたんじゃ。

 そんなことをしている間にすっかり夜になってしもうた。


「芳子ぉ……嫁に貰いに来たぞぉ~~~」

「ひぃ!! まだ全然描けてませんよ、僧侶さま!!」

「くっ!! ここはわたしに任せろ!! ハァ!!」


 僧侶と亡霊は霊力で戦った。

 それはもうめちゃくちゃ戦ったんじゃ。


 しかし……僧侶が負けた。

 しかも僧侶の体に亡霊が憑依したんじゃ。


「くくく……芳子……おまえを美味しくいただいてやるからな」

「ひぃ……」


「うん? おまえ……なんだこりゃ」

「え!?」


「貧乳じゃねぇか!!!!」


 僧侶は芳子の爆乳に丹念に念仏を描いておったんじゃ。

 それを見た亡霊は芳子を貧乳と勘違いしたのじゃった。


 亡霊は爆乳派だった。


「チッ、はじめから言っておけよ!!」


 そう言って亡霊は消え去っていき、芳子は無事じゃった。

 朝が来て僧侶を起こすと、芳子と僧侶は抱き合ったそうじゃ。


 その翌日、芳子は僧侶に礼を言って旅立つことにした。


「あ、あの……僧侶様も私が爆乳だからお気に召したのですか?」

「いやそんなことは……」


 否定できなかった。

 僧侶が丹念に芳子の乳に念仏を書いたのは事実だった。


「まぁよろしいでしょう。この乳も私の体の一部。おかげで亡霊にかどわかされるところでしたが……また会いに来てよろしいでしょうか、僧侶さま」


「うむ、またいつでも会いに来るがいい」


 そうして芳子は僧侶と別れたが、僧侶の子を身ごもっておったそうじゃ。

 そうして生まれたのが芳江、おまえなのじゃよ。


 うん? 私は貧乳なんだけどどういうことだって?

 まぁ、うん。そういうこともあるよね。

 でも伝承の芳子は爆乳だから。


 町興しの一環でフィギュアとかイラストまで作ったから。

 おまえにも村のアイドルとして出てもらうから。


 貧乳だから嫌だ?

 なんでおまえにこの話したと思う。


 胸など……気にするなと言いたいわけじゃ。

 人の魅力は胸になどない、とな……。


 登場人物の九割が乳に溺れてるじゃないかって?

 うん、まぁそれはそうだけど。


 まぁ、うん。わしは貧乳好きじゃし。

 ばあさんも貧乳だったから、いつかおまえも貧乳好きが現れるよ。


 これが本当の乳なし芳子ってな。はははは。

 痛い。祖父の耳を引っ張るな。千切れる、千切れ……



 ああああああああああああああああああ!!!

 耳なしになっちゃうぅうううううううううううううううううう!!




 

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乳なし芳子 芳賀村こうじ @USAGI_MAN

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