1日目 中編

「()」は周りにバレない程度に喋ってるってことです。

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刑務所案内が終わり、この刑務所がどのような立地なのかを理解できてきた。


「看守さーん、紙2枚もらえますか?」

「ん、382番、なぜだ?」

「僕たち、実は絵を描くのが好きなんですよ。下書き用と本番用の2枚ください。」

「わかった。いいぞ。じゃあ印刷室に行くぞ。」

「はーい。」


「(淳、なんで紙を?)」

「(地図を作ったほうが探索しやすいでしょ?)」

「(なるほどね!)」


印刷室に行き、広場に戻ってきた。


「えーっと、ちょっと時間が少なくなったけど、今からあんたらはこの自由広場で自由時間を過ごしてもらうで。」

「はーい。」


ガチャッ


田邉さんは施錠してから看守棟の方向へ行った。


「さて…と、じゃあ、美香、そっちの紙に絵描いてもらえる?」

「わかったー。」


私は自由広場の風景を模写しに端っこへ行く。


「裕也はこっちで僕と地図を書こう。」

「わかった。」



ふんふん〜♪



「おい、お前何してんだ?」

「えっ、はい?」


気づけば私は3人の男性に囲まれていた。


「ちょっとさ、そこに屋内運動場ってのがあるんだが…、そっち行って話そうぜ?」

「いや、別に、お断りさせて頂きます。」

「ふ〜ん。ならいい。無理矢理にでも連れてってやるよ…。」

「えっ、あのっ、ちょっ!!」


私が手と足を掴まれ、運ばれそうになっていた時だった。


「何やってんだお前ら…!!」


ドコッ

バサッ


裕也が男の人を蹴り飛ばしていた。


「美香、大丈夫か?」

「裕也ありがとう…。」

「お前はあっちで淳と地図書いとけ。模写は俺がやっとく。」

「ありがとう。」


私は裕也を背に淳の方へ走る。


「おつかれさまー。大丈夫だったー?」

「うん。大丈夫だったよ。地図はどこら辺まで書けた?」

「ここら辺がいま構造覚えてなかったところ。」

「そこはあれだよ、薬品管理室!」

「あ、あれね。ありがとう。」


その後も地図作りは順調に進んでいきました⭐︎



数十分後……。



「お前らぁ、時間やで〜、絵ぇ見してなぁ〜。」


看守が鍵を開ける。


「どんな絵を書いたんや?」


裕也はそう言われて、手から紙を広げて自由広場を模写した絵を見せた。


「おぉ〜。すごいなぁ。あぁ、あと、120番、121番、122番!お前ら、あとで懲罰房やからな!」

「その3人は…?」

「あぁ382番は知らんかったか。380番が自由広場の端でその3人にナンパされよったからなぁー。」

「みてたんですね…。」

「看守塔の上から見れば見れるからなぁ。助けに行こうか思った瞬間381番が3人蹴り飛ばしとってビビり散らかしたわ。」


そんなことを話しながら食堂に案内される。

食堂のドアを開けると、そこにはそれなりに人がいた。


「じゃあまた30分後くらいに迎えにくるで〜。」


中に入り、ご飯を待っている人の列に並ぶ。

そして急に前のふとが振り向き、話しかけてきた。


「あ…あの…、」

「はい。どうかされました?」

「俺のこと…覚えてます?」


ん〜、どっかでみたような……。


「あ!荷物検査の!」

「はい。今日、自由時間で、脱獄を図っているというような会話が聞こえたので…いつか、警察に没収された俺の母の形見を保管室からとってきて欲しいんです。報酬も必ず返すので、いつかとってきてください。お願いします!」

「…僕はいいけど、裕也と美香は?」

「俺も大丈夫だ。」

「私もです。」


その人は顔を明るくし、


「ありがとうございます!!」


とだけ言い、もとの向きに戻った。


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刑務所脱獄 十八万十 @pikomyou

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