1日目 前編

鉄格子の向こうで鍵が回る音が鳴り響くと、田邉さんが去り、

私たちだけが残された。部屋の中は無機質そのもので、最低限の家具しかない。

窓は小さく、高い位置にあり、外の景色はほとんど見えない。


「はぁ〜。」


頼みの綱だったトイレも人が入れるサイズじゃない。


「美香も美香でそんなアニメみたいなこと起こるわけないじゃん。」

「うぐっ」


意外と言われてみるときつい。



〜朝〜



「お前らぁ〜朝やで〜起きろ〜…ってもう起きとんねんな。」


この夜、本当に寝れなかった。


「まぁ、刑務所に慣れてなくて寝れてないだけかもしれんが、慣れればいけるもんやで。そんじゃ、朝飯食いに行くか…の前に、今のうちに渡しとか無かあかんもんがあったわこれが基本的な1日のスケジュールや。」


配られた紙にはきちんと決められたスケジュールが書かれていた。


・朝6時30分:起床

・6時30分〜7時00分:清掃、洗面、整頓

・7時00分〜7時30分:朝食

・7時30分〜8時00分:出室

・8時00分〜11時00分:刑務作業

・11時00分〜12時00分:自由時間

・12時00分〜12時30分:昼食

・12時30分〜17時30分:刑務作業

・17時30分〜18時30分:夕食

・18時30分〜23時00分:仮就寝

・23時00分:消灯



「今日はまだ清掃はしないでええで。」


私たちはそのまま田邉さんについていくと食堂の前に案内された。


「ここが囚人用食堂や。看守用は別にあるで。今はまだ7時になってないが、まぁ入りたてやからな。今から7:30まで朝飯の時間や。その時間なったら迎えにくるで。それじゃあな。」


そのまま田邉さんは食堂の鍵を閉め、右の方に行ってしまった。

食堂の中はかなり広く、今は7:00前なこともあって、

昨日一緒にここに来た囚人と私たち以外は誰もいなかった。

食堂の奥の方にはたくさん並べられたご飯と、

きっと施錠されているであろうドアがあった。


「さてと、情報収集でもしよっか。」

「そうだな。」

「え、脱獄に情報収集って必要なの?」

「え?」

「情報こそ大事なんじゃないの?」

「そうなんだ…。」


2人は囚人に話を聞きにいく。


数分後……。


食堂のドアが開き、ドアから囚人がゾロゾロと入ってくる。


「淳、この人たちからも情報収集した方がいいかな?」

「そうだね。美香、お願い。」

「わかった。」


私は一番近くにいた女性に話しかける。


「こ、こんにちは。」

「こんにちは。どうかしたの?」

「いや、その、この刑務所について教えて頂きたく……。」

「いいけど、なんでそんなこと聞くのかしら。」

「えぇっとぉ…」

「わかったわ。脱獄ね。」


その人は察したように話を続けてくれる。


「まず、1つ目。脱獄は諦めた方がいいわ。」

「え。」

「私も一度試みたのよ。でも、結局は所長の掌の上で踊らされてるだけだったわ。」

「そうだったんですか。」

「だから、所長を欺かないと脱獄はできない。」

「所長っていうのは…?」

「所長の近藤。あいつはやばい。」


その後も数分喋り、田邉看守が来るまで喋り続けた。

得た情報として、脱獄に関係ありそうなものは、


・所長やばい

・たまに壁を工事してることがあるから、そこを狙う。

・囚人の性格はだいぶ荒いのが多い。

・防犯カメラ捜査室のような部屋がある。

・脱走が見つかれば、刑期が減ってしまう。


そして、脱獄に関係あるかわからないが、私が一番驚いたのが


・この刑務所が白い粉に関係しているかもしれない


ということ。

捕まっている人が基本的にヤク関係なのだ。

まああくまでも憶測に過ぎないと言っていたが。


私たちは看守に連れられ、刑務所内の案内を受けに行った。


「今から2時間の間、刑務所案内やな。で、その後自由時間と昼食で、昼飯の後に好きな刑務作業を何時間かやってもらうで。えぇな?」

「大丈夫です。」


(案内時間は特に何もなかったのでカットします。)




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