第2話
「あぁ、君たちも捕まってたんだね。」
ふと、聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
「…そう。僕は君に『白い粉』を渡した本人の淳。」
「お前っ…!!」
裕也が顔を赤くし、淳に殴りかかろうとする。
「僕に殴りかかってもいいが、君たちの罪が重くなるだけだよ?」
「それに、淳は親の手術台のために私たちに売ったのよ?」
「あぁ、それなんだけど、」
裕也が察したようにこう言う。
「嘘…なんだろ?」
「そのとおり。君、すごいね!」
「うるせぇ。」
「そんなに怒らないでくれよ。それに僕も『脱獄』したいからさ。」
一瞬『脱獄』という言葉が頭をよぎる。
「え?」
「今、なんて。」
「ん、だから、僕も脱獄したいってこと。」
「そんなん、無理に決まってるだろ!」
「そうか。なら、僕は君たちが脱獄計画を企てていることを警察に伝えるけど…それでもいいの?」
淳は本当に会話が上手だ。
仲間になれば、口下手な警察から情報を抜き取ることも可能だろう。
「私は、仲間になってほしい。」
「お前っ…。」
「だってさ、仲間はたくさんいた方がいいでしょ?」
「…とまあ、そういうことさ。」
裕也は一瞬考えるような素振りをみせ、
条件付きで承諾した。
「わかった。ただ、もしお前が裏切ろうもんなら、俺は容赦なくお前を吊る。」
条件は『裏切ってはならない。』だけであった。
「りょーかい。」
「あと、なんで白い粉を私に売ったの?」
「あーそれね?簡単な話さ。お金が欲しかっただけだよ。」
「そっか…。」
その後、再び沈黙が訪れる。
そして時間が経ち、気がつけばスズラン刑務所にやってきていた。
「到着いたしました。あなた方は本日からここで過ごしていただきます。」
遠くから見た時に比べて、それはかなりの威圧感を放っていた。
バスがスズラン刑務所の門をくぐると、全員がその異様な雰囲気に息を飲んだ。
高い鉄柵に囲まれた建物は古く、それでいて頑丈そうで、
あらゆる逃亡の希望を打ち砕くような威圧感を放っている。
「門には…大量の警備員がいるから無理だな。」
裕也は早速脱獄のことを考えていた。
淳と言えば…
「君にも考えることができたんだね。」
「あ?てめぇ舐めんなよ?」
裕也を煽っていた。
「まあそう怒らないでよ。」
「てめぇなぁ…」
裕也は優しいが、少々キレ症だった。
「二人とも!!落ち着いて!ここで声を荒げるのは得策じゃないでしょ?」
「ほら、美香もこう言ってる。ちょっとは考えなよ。」
「おまっ…」
「淳!」
淳が肩をすくめる。
「美香、淳。バスが停まった。降りるぞ。」
そのことを言われ、3人は一緒に降りる。
そして、刑務所の入り口であらためてこの刑務所の広さを知ることになった。
「でっか…。」
裕也が口を開く。
そして、バスの運転手と変わって、警察らしき人にこの刑務所の中へと案内される。
「お前ら!今日からここがお前らの住む場所だ!わかったな?」
「はい…。」
「なら、入れ!!」
警察に促され、刑務所内に一人ずつ入っていく。
この刑務所から脱獄することの代償。
そして真実を知るごとに次から次へとわかる真実。
この刑務所の陰謀を私たちはまだ知る由もなかった……。
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