第7話 ヒナギロへの評価
中田さんの教室に飾られたヒナギロは、小さな注目を集め始めていた。ある日、未來が教室に行くと、中田さんが嬉しそうに声をかけてきた。
「未來、ちょっと聞いてくれよ。昨日、教室に来た模型好きのお客さんが、ヒナギロを見て『誰が作ったんだ』って感心してたんだよ」
未來は驚きと喜びで顔を赤らめた。
「本当ですか?でも…まだ全然下手で…」
「いやいや、技術の話じゃない。その人が言ってたのは『このソフビには魂を感じる』ってことだ。形は不格好でも、作り手の気持ちが伝わるものには力があるんだよ」
未來はその言葉を聞いて、初めて自分の作品が他人に影響を与えたことを実感した。ヒナギロは不完全な姿だが、確かに自分の想いがこもっている。
「作り手の気持ち…か」
未來は心の中でその言葉を繰り返した。
初めての仲間
その日、教室に新しい顔が現れた。背が高く、少し派手な服装の青年が中田さんと話している。
「未來、紹介するよ。彼は拓也、プロの模型デザイナーだ。今日は君のヒナギロを見に来たんだよ」
中田さんの言葉に、未來は驚きで固まった。
拓也はヒナギロを手に取り、じっくりと観察した。
「これ、君が作ったの?面白いね。この不器用さが逆に味になってるよ。こういうの、最近の作品にはない独自性だな」
未來は緊張しながらも、「ありがとうございます」と小さな声で答えた。
「俺もさ、最初は全然ダメだったんだ。でも、続けていくうちに少しずつコツが掴めた。だから、君も諦めずに作り続けてほしいな」
拓也の言葉は未來の胸に深く響いた。自分の道を進んでいる人の励ましは、ただの言葉以上の重みを持っていた。
「…もっと、頑張りたいです」
未來ははっきりと答えた。
次の挑戦へ
その夜、未來は作業机に向かい、新しいスケッチを描き始めた。
ヒナギロを作った経験から学んだことを活かし、次はより理想に近いギロ子を形にするつもりだった。
蝶の羽根をもっと繊細に、ギロチンの刃にもっと存在感を――。
未來の鉛筆は止まらなかった。スケッチブックには次々と新しいアイデアが生まれていく。
「ギロ子を完成させて、いつか自分のソフビをもっとたくさんの人に見てもらいたい」
未來の中に、強い願いが芽生えていた。
翌日、未來は中田さんに宣言した。
「次は、もっといいものを作ります。自分の中のギロ子を完成させるために」
中田さんは微笑み、静かに頷いた。
「いいね。その意気だ。俺も全力で手伝うよ」
ヒナギロは未來の小さな一歩だった。そしてその一歩は、次の大きな挑戦への扉を開けるものだった。ギロ子への旅路は、まだ始まったばかりだ。
俺のギロ子をよろしく! 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92
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