第4話 初めての型取り
中田さんの教室での学びが進む中、未來はついに「型取り」という工程に挑むことになった。ソフビを作る上で重要なステップだと教わったが、聞くだけでも難しそうに思えた。
「未來、今日はこれを使って練習してみよう」
中田さんが取り出したのは、柔らかい粘土とシリコンだった。まずは粘土で原型を作り、それをシリコンで型取りするという作業だ。
未來は慎重に粘土をこね、スケッチしたギロ子のデザインを思い浮かべながら形を整えていった。蝶の羽根を模した部分は繊細で、何度も崩れてしまう。しかし、未來は諦めずにやり直した。
中田さんは未來の集中した様子を見て、小さく頷いた。
「いいぞ、その調子だ。大事なのは形を作るだけじゃない。気持ちを込めることだ」
数時間後、未來の粘土の原型は何とか完成した。未來は初めての成果物を手にしながら、少しだけ自信が芽生えるのを感じた。
「次はこのシリコンを使って型を作るぞ」
中田さんが取り出したのは透明な液体だった。それを原型に流し込むための枠に注ぎ、固まるのを待つ。
「これが固まれば、型が完成する。その中にソフビ用の素材を流し込むんだ」
固まるのを待つ間、未來は緊張と期待が入り混じった気持ちでじっと見つめていた。シリコンが完全に硬化すると、中田さんが優しく型を外した。
「ほら、これが君の初めての型だ」
未來は完成した型を手に取り、じっくりと眺めた。自分が作ったものが、形として残る。この感覚が未來にとって新鮮で、心が少し躍った。
「これに素材を流し込めば、君の初めてのソフビができるぞ」
中田さんの言葉に、未來の目は輝いた。
その日の夜、未來は作った型を眺めながら、これからの可能性に胸を膨らませていた。
「もっと上手くなりたい。ギロ子を完成させるために」
未來の手の中の型は、彼にとって新しい世界への鍵となった。挑戦の旅はまだ始まったばかりだ。
ギロ子への道は長いが、一歩ずつ確実に近づいている。
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