喝采

TatsuB

第1話

私の歌声は、世間を沸かせた。


初めて、私の歌声を褒めてくれたのは、父だった。


そんな父に褒められるのがとても嬉しくて、私自身、歌うことが好きになっていった。


その喜びが自然と歌手を目指すきっかけとなり、自分でも曲を手掛けるようにもなった。


最初は、小さなライブ会場やボランティア活動で歌っていた。

お金の事なんて全く考えてなかった。

ただ歌うのが好きで、とにかく自分の曲を聴いてほしかった。

そんな思いで、音楽活動をしていた。


そんな私に、急に転機が訪れたのだ。

それは、私の歌の動画が音楽関係者の目に留まり、私の気持ちよりも早く話が進んでいきあっさりと歌手へとデビューしたのだ。


デビューしてから私は、私の大好きな音楽を世間に聴いてもらえるという喜びで、気持ちよりも身体が勝手に動いて気がついたら曲が出来ていた。


その中に、私の歌声を愛してくれた父への気持ちもあったがこの曲だけは、なんだか照れ臭くて私の中だけの曲にしようと思い。心の中へとしまったのだ。


そして、今日は大きな音楽番組で歌うこととなった。

緊張している私に一本の訃報のお知らせが入った。

どうやら父が脳梗塞で、家で突然倒れそのまま帰らぬ人となったそうだ。


本当は今すぐにでも父のもとへと向かいたかったが、今日は、父が私が出るテレビを楽しみにしていたのだ。最後に私の晴れ舞台を見せれるのは、今日で最期だと思い私は、今を頑張ることにした。


番組は私の気持ちなど関係なしに進んでいき、あっという間に私の順番へとなった。


ギター一本担ぎ真っ暗な舞台へ立ち一呼吸し、私にスポットライトが浴びせられる。

それと同時に大きな拍手が鳴り響いた。


そして、私は心の中にそっとしまっていた父への想いを込めた曲を歌った。






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