第6話 厨二病キャラ
◇
只今、食堂の一角で男女比率が2対5の両手に花、残り一つはどうしようか?
兄貴の隣をナギ姐がぴったりとキープするのは、前世、前前世的に当然のポジションだろう。
兄貴は一途というのか……いや、正直なところ兄貴も男だから保証はできない。
前前世でナギ姐とは一回りほどの歳の差もあり、過去の遍歴は謎で俺の知る由もない。
きっとその辺上手くやっていたのだろう。
で、俺はどうかって?……ああ、もれなく全員メリーバッドエンドな前前世においては、一応言い訳可能。
今だから笑い話と言うか、前前世で色々と事情があってね、ナギ姐に筆下ろしをしてもらった。
また、カズサさん的に俺は監視対象でもあったからか、まるで保護観察のような感じで面会することも多く、よくご飯に連れてってもらった。
色々とよくしてもらったけれど……この人の酒癖があれでね、酔いの勢いそのまま肉食女子になった訳で、あとは察してくれよな?
未だにちょっと苦手意識があるのは、そういう事情もあるんだ。
で、まともに付き合ったのがクソチビポメ柴こと、ヒナコだ……訳あって破局したけど、こればかりは仕方ない。
その次の恋人となるのが、うるさいメリケン小娘のジェニファーだが、メリーバッドエンドだけに察してくれ。
最後はそうだね……。
「ズルルっ!……ズルルルルッ!!……ふっふっふっ、やっぱケツネしか勝たんわ」
目の前で豪快にキツネうどん、キツネマシマシを啜るキツネ顔美人のドイツ系関西人である、ヴィラが前前世、前世の嫁なんだよね。
前世で魔王になった俺は、紆余曲折を経て彼女たちと再会したことで……ああ、今回の人生でも俺は女難の予感かな?
兄貴をどうこう言う前に、立ち回りを少しでも間違えたらもれなく女の敵なので、チートも武器もない平和な3度目の人生をどうしたものか……ちょっと視線が痛いね? HAHAHA!
よし、こういうときは遠くを見るんだ……食堂内を見渡してクラスメイトたちの様子を眺めるだろう?
そして男子生徒諸君からの視線は、とっても殺気立っている訳で、メンチを切ったら治安が悪くなる一方だ。
それならば視線を他の女子生徒のグループに移すのは危険だ。
運命の悪戯で全員集合した、キャラクターの濃い美女たちに俺の生殺与奪を与えるようなもので、死刑台のメロディーが流れるって訳だ。
ああ、ただの人間観察だからどうか疑わないで欲しい。
なによりも各テーブルを巡回して、精力的に声を掛けている副担の鷹野 綾香(タカノ アヤカ)先生は、人懐こいキャラクターとまばゆい笑顔、なによりも純粋無垢な魅力溢れる大人の女性であり、既にクラスメイトたちからあだ名で呼ばれて親しまれている様子だ。
選ばれたのは、鷹野 綾香でした。
彼女の姓名から『野』と『香』を取り、並び替えればCMでお馴染み、選ばれたのは……そういう訳で、彼女のあだ名は『グリーンティ』、前世で授けた名前をまたしても耳にするとはね?
そう、彼女の前世は勇者だった。
仲間を護る為、魔王であった俺に降伏した勇気あるものは、その優しさと強さで世界を変えていった……物語は、未だに作者は書いていない。
設定上のメタは置いといて、民衆の身勝手な期待を背負わされた前世と違い、重い十字架を背負うことなく最高の人生を満喫しているご様子だ。
最も……使命感に燃えているのは、前世と変わらない。
「まおー! みんなを睨みつけちゃ駄目なの! もっと笑顔になるの!」
「「「「「「ぶほっ!!」」」」」」
ああ、前世と変わらない呼び名のおかげでクラスメイトたちからの視線は、殺気立ったものから憐れみを帯びたものに様変わりした。
グリーンティ、お前のおかげで俺は痛みに耐えなきゃいけない。
お前、なんてことをしてくれたんだ!
卒業するまで厨二病キャラ扱い確定じゃねえか!————。
◇
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