第3話 入学式は盛大にカットしよう
◇
運命に導かれた俺たちは、再会の喜びを朝の貴重な登校時間いっぱい使えるかって?……そりゃ無理だー!
と言うわけで話が進まなくなる上に、感動の再会シーンを楽しもうとすればする程に、どう考えても遅刻確定となれば、今すぐ閑話休題は妥当な訳で仕切り直し。
先程、宝島ステップを披露した次と、その次と、その次と線を引き続けた先は、元ネタの方へと掘り下げた大爆笑路線でヒゲダンスを踊りながらRTAを続行する訳だ。
『デデデデデデーン、デデーン、デデーン♪』を文明の利器、まるで手放す未来が見えないスマホから垂れ流し、全員真顔、無言で踊りながら裏道を抜けていった。
8時だったよ全員集合よろしく、お宮参り状態の通学路で洗礼を受けた、おびただしい数の無の境地に至った本業学業の制服コスプレイヤーたちと合流し、裏道を使った通学RTAを走った俺たちと対照的ではないか。
ウキウキ気分で正門をくぐり抜けた俺たちは、急に自販機のジュースを飲みたくなり、寄り道をして余裕をかましていたが、のんびりとチルタイムを送っていれば不意にチャイムが鳴り響き、例えるならビジホやラブホのチェックアウト直前まで寛いで慌てる羽目になったかのようなもの。
チャイムが鳴り終わるまでに会場である体育館へと走り、全員フォレスト・ガンプのように風となったことでなんとか入学式に間に合い、息絶え絶えになりながら設置されたチープなパイプ椅子にそれそれ着席……さて、入学式が始まるけれど、校長先生の長話なんてまともに聞くわけないよな?
ああ、このまま真面目に聞いていたら卒業扱いでいいよな?
それぐらい長いんだ、前前世で4回留年した俺、そして学校の先生でもあった兄貴と隣同士顔を見合わせれば、お互いにげんなりしている様子だね。
「手短に頼んますわ!!」
兄貴の隣に掛けたウィラが、前前世で校長先生の長話にブチ切れたこともあってか、今生においては盛大なフリを、却ってフラグにならないか心配であるが……まだ入学式は始まっていない。
この物語で誰かが喋りだしたら話が進まねえんだ、これが! HAHAHA!
ガチ恋&失恋のショックを抱えた珍妙なペンネームの作者の心の叫びは胸の内に、定番の校長先生の長話は……睡眠時間に充てるか、再生速度を早送りすれば解決!
クソチビポメ柴や、ナギ姐の前前世のように入学式を長々と書く必要はねえんだな!
そんな訳で入学式を盛大にカット、予定調和よろしく教室に辿り着いた俺たちは、作者の都合なのか、あるいは運命に導かれるがままなのか、全員集合なんだよな!
ああ、バランス配分を盛大に間違えてくれた学園側、もしくは作者か八百万のなんたら……いや、むしろ八百長?
ともあれ感謝だ、縁結びの神様ってすげえな。
兄貴、ウィラ、ナギ姐、カズサさん、ヒナコ、そして俺がいる訳で、今回のエピソードで登場人物紹介をしようと思ったものの、案の定というか、脱線したまま滑り込んだ入学式よろしく、校長先生の長話状態なんてごめんだろう?
それはそうと、キャラクターの濃い奴らが全員集合したことにより、このままの戦力比だと、きっと体育祭は悲惨なことになる気がすると思うんだ……俺の遠い遠い前前世、前世の経歴もそうだが、軍歴もしくはそれに準ずる経歴のある人が、一つのクラスに纏まった時点で体育祭は勝ち確なんだよな? HAHAHA!
登場人物紹介はまたの機会にしつつ、担任の先生は誰だろう?……教室のドアが開かれ、入室してきたのは、茶髪が特徴のスーツ姿でありながらも筋骨隆々の小兵というのか、それでいてどこか憎めない愛嬌の犬顔のような男性教諭……あれ、これもそうなの?
俺の感覚が正しければ、全員集合ってそういうことかな?———。
◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます