3話 異世界にて初デビュー
「止まれ!」
まあ、村には門番居るよね。気難しいと言う訳ではないが、まあ、警戒はされてるよな。一応かなり離れたとこから街道通ったんだけどね。
「どこから来た?」
「食い扶持減らしで出されたとこです」
噓は言ってない。ここでは無い世界から食い扶持減らしの如く出されたけど。
「そうか、大変だったな。入村札を発行するが金はあるか?」
入村札は所謂地域限定パスポートだ。コレがあればいくら滞在しても良いが少しお高い10エリン。まあ、余所者に吹っ掛ける意味と、村では暴れんなよ?という意思表示でもあるのだろう。
「うす。多少の金は持たされたので、ギルドはどこに?」
お金を支払うと、木で出来た札を渡される。う~ん、コレで10はお高い。ギルドとはまあ、お約束の施設である。
「この道を真っ直ぐのとこにある。ここより街の方が良くないか?」
「登録だけした方が便利なので」
ああ、確かにと言われる。食い扶持捨ては証明書になる市民証が無い者が多いらしい。まあ、そこを逆手とってるんだけどね、今。街の方だと転移者とかち会う事もあるかもだし、登録したらなんか騒動とかありそうだしね。村、これが大事。雑って素晴らしいと思います。
「それじゃあ、気を付けてな」
門番さんは大抵厳ついだけで良い人、古事記にも書いてある、うん。
「はい、登録完了です」
女神様から聞いてはいたけど、ジョブ見た瞬間、対応が雑且つ、適当になったなあ。最底辺ジョブの名は伊達では無いらしく、露骨レベルで対応がホントに雑オブ雑になり、街に向かっていく依頼を受けて、転職をと笑い噛み殺しながら薦められたと言えば分かるだろう。まあ、転職する気はゼロレベルで無いけどね。
「ギルドカードは年会費は不要ですし、身分を証明するものになりますが、犯罪を犯した場合は即座に没収になります」
なるほど、カードテイマーの大成は聞いた事が無いし、ハズレすぎるから犯罪を犯すようになるってとこかな。実際に転職しなかった者はその手合いが多いのだろう。ある意味注意、ある意味罵倒とも言える。まあ、その方が助かるけどね。
「それでは、ギルドメンバーについては以上です、お疲れさまでした」
うぅん、このカードテイマーはさっさと去れ!な対応よ・・・気を取り直して、ギルド内のショップで周辺地図を買い、いざ行動をと外に出るかと思ったら、何か知らんが複数人に道を阻まれる。ああ、これはお約束の・・・
「おいおいおい、珍しいカードテイマー様よ、御恵みを」
「おいおい、無茶言うもんじゃねえぜ」
「たった100で良いからよぉ!」
うわぁ、テンプレの様な絡みチンピラギルドメンバー。地球の不良でもこんなんおらんぞ、逆に凄く感動したわ、顔には出さんけど。で、周りを見渡すがニヤニヤしてる者、止めたいがカードテイマーなら仕方ないねと見ている者、無視する者。ああ、ホントに面倒くさいな。初のカードお試しが人間相手になるとはね。
「悪いが急いでるんだ」
「急ぐぅ?初期デッキで何を急ぐんだぁ?薬草詰みかあ?」
薬草詰みも立派な仕事なんだがね。まあ、カード作ったのは身分証明の為なので、仕事ではなく外に出たいだけなんだが、その辺説明するの面倒くさいなあ。
「関係無いだろう。そこをどいてくれないなら強行突破するが?」
「プッ!お前等、聞いたか!カードテイマー様が戦士3人を相手に切り抜けて下さるらしいぞ!」
「「ヒャハハハハハハハハハハハ!」」
場所的にギルド内で剣抜いてるけどいいんかね?まあ、これなら正当防衛にもなるか。異世界デビューと行こう。指輪がデッキケースとなるカードテイマー。カードを5枚ドロー!
「ミニソルジャーを召喚」
「だよなあ、でも、それだけだ!」
そう、普通なら、戦士のモンスターであるミニソルジャーを使って戦闘開始がカードテイマーの常道だ。しかし、自分はその常道を越える。
「アクアスプライトを重ねて召喚、出でよ!」
「「「は?」」」
『は?』
見ている者全員が驚愕する。自分にとっては懐かしいこの衝動のままに厨二病全開で行くぜ!
「流水の剣士!そいつらは相手にしなくていい、逃げるぞ!」
重ねられたカードが融合して、流水の剣士を誕生させる。そして、剣士は頷くと自分を持ち上げ、あっという間にギルド外に出て、更に跳躍し、街の外を出る。とあるゲームがあった、リアル札では無かったTVゲーム独自の重ねれば融合と召喚を行う。カードテイマーの説明を見た時、おかしいと感じた点があった。
(初期デッキがたった5枚である事。カードは消費アイテムじゃない事、カードは使っても無くならない事、何より、MPなどの代償が無い事)
これらに加え、テイマーのレベルが上がらない事、パックは極端に手に入りにくい事。ならば、こういう事が可能なデッキだからではないか?その考えは正しかった。ちなみに名前はそれっぽい名前を呼んでるだけである。そうすれば定着するかな?と言う考えもある。
「ご苦労さん、送還」
そう言うと。カードは再び2枚になり、意思を持つように飛んできて、自分の手に収まる。出来れば、モンスター相手のデビューが良かったなあと思いつつ、セーフハウスに戻り、異世界生活1日目を終えるのだった。飯と味噌汁ウマー。
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