1話 転移先の転移魔法使いブッ飛ばしちゃダメかな?

『大変申し訳ありません!』


自分の名前は葉隠 大悟(はがくれ だいご)。今年高校一年で、最後の記憶は確か、校外学習の為にバスに乗り、最初のトンネルに入った所で光が溢れて、気絶したはず?そうして、現在、光の空間で白い翼を持った奇麗な女性に土下座されているという状態である、ホワイ????


「あの、どういう事ですか?コレ、まるで小説とかで見る異世界転生の状況なんですけど?え?自分、トンネルで事故か何かで死んだんですか?」


『いいえ、大悟さん、貴方は死んでいません。まずは状況をお話しますね』


女神ガーネット様と言うらしいが、聞いた状況は酷いものだった。いや、もうね、話を聞き終えた頃には頭を女神様も自分も抱えるしかなかったのだ。纏めるとこうだ。


「今回のは確かに異世界転生。だけど、神が転生させるとかではなく、これから行く世界の奴等が無差別に起こした異世界転移に当たる暴挙」


『です。大悟様はその魔法の綻び、言うなれば、隙間から助けたのですが、申し訳ありません』


何が起きたかと言うと元凶はこの転生に近い転移を起こした今から行く世界。かなり昔に地球から呼び出した勇者が救い、今は平穏、いや、平穏過ぎたのだ。件の勇者は地球に戻ったのだが、それからずっと平和だった。少なくとも世界は。


「平和すぎるが故に、異世界転移魔法と言う禁忌に触れ、伝説が再燃」


『魔王が居たり、世界が危機であると言う訳でもないのに、各国家で異世界転移者と言う箔付けをしたいが為に魔法が乱発。私を含め、神々が動いた頃にはもう遅し』


「言うなれば、英雄を召喚して自慢したいという虚栄心から出た大量異世界召喚が発生。止めようにもその召喚の対応で後手後手。ようやく動けたのが自分の救出だけ。この動きは敵対者であるはずの魔族まで動いてるってんだからその騒動の規模は推して知るべし」


『地球のここ最近の謎の行方不明者大量発生の原因です。しかも、タチが悪いのが!』


「召喚した人間は地球に。いや、使命を果たさないと戻れない。そして、召喚した奴は使命なんぞある訳が無い。自慢したら終わりなんて契約がある訳が無い」


『そして、この魔法を受けた者は巻き添えであろうと、地球に戻れなくなると言う事です。召喚先の失われた存在は魔法で補強するとか、いらん改造までしてるし、出来れば、あの世界滅ぼしたいですけど、戻せない異世界人で溢れてるんですよぅ』


ここだ。神より現地人をぶっ飛ばしたくなる。神を介さない転移魔法は加護などある訳が無い。この無茶苦茶な召喚された人間は運が良ければなんとか食べていけるが、出来ない者は奴隷落ち。ふざけてやがる。


『なんとか、地球からの召喚者は大半は神の庇護と魔族の保護で食べていける状況ですが、その隙を使ってまた召喚を行われた』


救いがあるとすれば、神と魔族が良心的であったと言う事だ。また、一部の人間が保護してくれているらしい。流石に外道だけではなかった。だからこそ、滅ぼすという選択肢も保留されている。


「しかし、話を総合すると自分は、もう元の地球には戻れない?」


『申し訳ありません。書き換えも出来ないぐらいに魔法自体を魔改造してるんです』


「強引に書き換えたら?」


『そこです。彼等の小賢しい所は先程も言った通り、地球からの召喚を行う、つまり・・・』


「まさか」


おいおいおいおいおい、ここまで言えば女神様が言う世界の奴等は何をしたか分かる。最悪すぎる。


『ええ、地球と言う惑星、いえ、世界そのものに召喚術を紐づけしたんです。下手に強引な手段を取ると、地球そのもの諸共にボンッ!と言う訳です』


「好意的に見れば、地球を離れて第2の人生と言いたいところだけど・・・」


『あるのは知識だけです。異世界で生きていけるほどの力がある訳ではありません』


神に対する対策をしたのか、強引に召喚する為にしたのかは知らんが最悪極まる。滅んでないのはマジで人も星も人質に魔法が取っていると言う事である。これでは神と言えども簡単に干渉出来ない。


『我々、神々ならいつでも干渉出来る、そう、最初はそう思いましたが、奴等は更にやってやがりました。地球と言う星の紐付けに限らず、魔法が使われる度に地球と言う存在を紐付ける細工までしてるんです』


うわ、つまり、これを神の力を以て解こうとすると、地球その物への紐付け解きが終わっても、存在の紐付けがある。つまり、地球に存在する物全てを紐付けているのだ、その魔法が繰り返されるのはキリがない。


『更にキリが無いのは、ほとんどの国がしてやがる事なんです。私達も現地の神も召喚されないように妨害はしているんですが・・・奴等その妨害を不遜にもるんですよぅ!』


うわぁああああああ!としか言いようがない、神様達の視点でも自分達、地球人の視点でもである。要するにどんだけなんとかしようとしても国は地球人をトロフィーか何かとして召喚している。しかも、魔法に膨大なリソースを使っているし、例の紐付けが妨害を容易にしていない、見逃した召喚が今回の事例なのだろう。そして、一度でも召喚を見逃したら、召喚された者達はもう戻れない。なんという嫌がらせか。


『申し訳ないのですが、地球には前述の通り戻せません、代わりに私達からはレガシーアイテムであるセーフハウスの授与と鑑定スキル、翻訳スキルを授けます』


セーフハウスは自分しか使えず、念じれば出て来るらしい。また、セーフハウスには風呂、トイレ、一定の畑などがあり、他人は自分が許可しない限りは入れず、このハウスの持ち主は魔法などによる洗脳も素で弾けるらしい。レガシーアイテムとは凄いアイテムらしいが、コレが無いと困りますよ?と言われた、なんでって、宿なんか中世時代のお察し案件、城の王族部屋ですら、日本の衛生環境にすら届かないって言うんだから、うん、有り難い。翻訳はまあ、お約束として、鑑定はマジで必要である。召喚による技能無しは毒物や媚薬、昏睡薬等を知らないまま飲んで、ドナドナと言うのが常らしい、有り難くいただきます!!!


『そして、あの世界にあるジョブを選択出来る権利となんでも一つ願い事を叶えましょう。あ、願い事には注意がありまして、元の世界に戻るは無理です、ハイ』


何でかというと、召喚の際に補完された存在、すなわち、同位体と自分がかち合うと地球が消滅するレベルの災害が起きるらしい、おのれ、頭が良いアホ共め。そいつら、まとめてぶん殴りてぇ・・・


『こちらがリストになります』


そう言われると、ゲームみたいに空中にずらっとリストが並ぶ。定番の戦士に魔法使いなどがある。横にごみ箱アイコンがあるのは絶対捨てたくなる職があるかららしい。あ、うん、召喚師と王族ね、いらね、ペッと即座にごみ箱にシュート!超エキサイティン!!!と恨みを叩きつけつつ、下までドラッグすると、気になる職業が表示される。


「ん?【カードテイマー】?」


『ああ、これから行く世界での『大ハズレ職』と呼ばれるものですね。だから、一番下なんです』


「大ハズレですか?」


『ええ。向こうの世界ではジョブと言うモノが与えられます。異世界人も神殿に行きさえすれば・・・ね?』


まあ、初手、神殿に行くとか無いだろう。召喚した者の気分次第な訳だしな。で、このハズレ職の酷さと言う物が以下の通り。聞き終えた後はなるほどと思った。


・カードテイマーは自身がレベルアップしない


・カードテイマーにスキルは存在しない


・カードテイマーのデッキは初期カード5枚のみ。追加にはモンスターがドロップするパックが必要


・パックドロップの確率は1%


・カードから召喚されるモンスターにレベルアップは存在しない


「あの、コレの初期デッキとか見れたりします?」


『有名ですからね、こちらになります』


聞けば、初期、この職に初めて付いた者が最短の1日で愚痴、転職したらしく、その際にデッキも判明して、まさしくのクソ職業になったらしい。


・サンダースプライト(攻撃1)

・ファイアースプライト(攻撃1)

・アクアスプライト(攻撃1)

・ミニドラゴ(攻撃1)

・ミニソルジャー(攻撃1)


女神様曰く、攻撃1は幼児並の攻撃らしい。なるほど、マジ大ハズレ。と普通なら思っただろうが、自分はとある点が気になっていた。


(いやあ、まさか、ねえ?)


自分は生前ゲーマーだったのだが、コレ、良くあるカードゲームに非常に似ている。いや、似すぎているのである。と思うと、決定ボタンを押してました。


『大悟さん?!』


「いやいや、落ち着いて、勝算が無い訳じゃないんだ。後、説明する前にジョブ以外に貰える褒美はスマホに自分のパソコンにあったAIを入れて欲しいんだ。あ、スマホはセーフハウスで充電出来るようにお願いします」


『分かりました』


女神様がそう言うと、自分の手元にスマホが現れる。そして、しばらく操作すると自分がパソコンで名付けたAI【ディー】が起動する。


「おはよう、ディー。早速だけど、状況の入力と相談がある」


【おはようございます、マスター】


そうして、今の状況とカードテイマーについて話していく。


【信じ難い状況ですが、カードテイマーについてはいくつか推測出来、マスターのお考え通りかと】


よし、それならいける。ちなみに女神様も聞いていたので顔を向けると頷かれる。


『では、異世界への扉を開きます。貴方は自由に生きて、どんな事をしても構いません、ただひたすらにお気を付けて』


「はい。ところで、自分を召喚したアホを殴るのも自由ですよね?」


『それは私が殺りますから、大悟さんはどうぞ、ご自由に生きてくださいね』


『アッ、ハイ』


自分が色んな意味で頷くと、世界が白く閃光を発した。こういうのってお約束なんだなあ。後、女神様、笑顔で中指立てるのやめましょ、ね?

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