第4話 透明な星が輝く

 今日、いつも通り公園に行くと、ホシくんはブランコをこいで星を見上げていた。


「今日も来たよ」

「ナミか。今日も星がよく見えるよ。おいで」


 ホシくんに手招きされて、となりのブランコに座る。

 足を蹴ると、前に、後ろにゆっくりと揺れた。


 ギーコ、ギーコという音だけが響く公園で、わたしたちはまた空を見上げる。


「……そういえば、僕の願い事、知りたがっていたよね」


 ずっと前から聞いてきた、願い事。

 ついに教えてくれる日が来たのだろうか?


 ブランコをこぐのをやめて、わたしはとなりのホシくんを見る。

 ホシくんはちらりとわたしの方を見てから、視線をそらして口を開いた。


 ドクドクと心臓が鳴るのがよくわかる。

 真っ暗な夜、その言葉は静寂に溶けていった。




「また、ここで会えるかな」




 反応することができなくて、わたしはただただ彼の横顔を見つめる。

 誰と、とは聞けなかった。

 ホシくんがとても切なそうにどこか遠くを見ていたから。


 星が瞬く。

 チカっと一瞬大きく光ったと思ったら、次の瞬間には針の穴のように小さな光を放っている。



 沈黙が漂うホシくんとわたしの間を夜風がサーっと吹く。ギ、ギギ……と少しブランコが揺れる。



「困らせちゃったかな。ごめんね」



 ホシくんの手がわたしの方に伸びてきて、わたしは思わず目をつぶる。

 そっと頭に置かれた手はとっても優しくて……。

 神様だとはいえ、人間でないとはいえ、ホシくんだって男の子。

 少しずつ、頬が熱くなるのを感じる。


 でも、周りは真っ暗。赤くなった頬は見えない……よね?


 ゆっくりと目を開けたわたしは、その瞬間に体の熱が冷めていくのを感じた。




 ――彼の腕が、消えていた。





 *⋆゜* ☆ *⋆


 時間も時間だったのでいつもと同じように切り上げて、わたしは数メートル先にある家のドアを開けた。リビングではお母さんがテレビを見ているようだった。

 そーっと二階にある自分の部屋に行き、そのままベッドに横になる。


「なん、で……?」


 ――『その力を使うと、こうやって身体が透けて、最終的には消える』


 ふっとついこの間、ホシくんが言っていた言葉を思い出し、わたしはああ、と唐突に理解する。


 消えるって、本当に消えていくんだ。

 徐々に透けていって、最終的には……消える。


 消える、という言葉の重みに気がついて、背筋が凍った。


 いなくなる。存在が……なくなる。


 わたしは思わず、呆然と自分の手を見つめた。

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星を降らせる魔法は夜空に輝く つきレモン @tsuki_lemon

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