第4話 「運命」は、既に、決まっている?

 だがねえ、この私の無駄なあがきは、特に、オカルト系の本を読むと、根底から覆されるんだよなあ……。


 このオカルト説によれば、まず宇宙が誕生した時に、既に、ビリヤードの最初の一衝きで、全ての盤上の玉の動きが決まるように、宇宙の誕生の時に、既に、人類の誕生も、滅亡も、宇宙自体の滅亡も決まってしまっていると言う考え方なのだ。


 この遠大な歴史は、「アカシック・レコード」と呼ばれる巨大な宇宙意識に刻まれており、この私らの人生とは、その内の極一部分を、映画館でチョコット見るだけの事であって、その映画館には、最初から最後まで映った、映画の全フィルムが保管されていると言う、奇想天外な考えだ。


 だが、どうしても、占いだけでは、未来を予見するのは、難しいと感じていた私は、この「最初の一衝説」には、大きなインパクトを貰えたのだなあ……。


 この説によれば、如何なる占いも、全て、無駄になるのだなからねえ。

 何故なら、全ての運命は、もう決まっていて、ただ私達には、それが分からないだけなのだから。


 だから、例え、自分の未来を知る事が出来たにしても、その「運命」は変えられないのだ。

 例えば、この私の現在の人生が、かっての成績からすれば、明らかに可笑しいのに、これが運命なのであって、どうあがいても、今現在のような人生に落ち着くならば、あの膨大な、未来を知る研究や、未来を変えようとの私の研究は、全くの時間の浪費だったのではなかったのでは、と、最近は、思うようになって来てさあ。イヤ、ホントだよ。


 さて、このオカルト関連の話の続きなのだが、この私には、不思議な体験がいくつもあるのだ。


 例えば、今となっては、証明してくれる者もいないのだが、私が大学四年生の冬休みに実家に帰ったら、実の弟が、国立大学一期校受験の一番の追い込み時期であった。

 この弟に言わすと、日本史がまだ全く手に付けていないと言う。

 日本史は、私の私立大学時代の入試科目の一つであったので、約2週間で丸暗記しようと、朝から晩まで付き合った。


 この時、弟は、自分のクラスメートの集合写真を見せてくれたが、ある女子高生が一人だけ光って見えたように思えたんだなあ。

 科学的に考えても、一枚の写真の一部が光る筈も無い。私の現在の解釈ではあるが、何か感じるところがあり、多分だが自立神経が異常に反応し、その彼女を見た時に瞳孔が拡大して、より多くの光が入って来たのだろう。……だから、光って見えたのだろう。


「なあ、この女の子、学年トップだなあ。東大現役合格クラスじゃねえの?」

「にいちゃん、ホントに、良く分かるなあ。担任の先生も彼女には特別扱いで気分が悪いんやけど」

 で、現実に、彼女は、東大を避けて阪大に現役合格している。


 また、その後、私が民間企業を半年で辞めて、地元にUターンしてきた時に、中学時代の弟の卒業アルバムを見せて貰った時なのだが、メガネをかけて髪の毛モサモサの男子中学生を見て、

「こいつは、将来、医者になる!」と、断言したら、

 既に、京都大学医学部に進学していたのである。


 畢竟、私が言いたいのは、自分の将来の運命は全く予知できなかったが、このように、他人の運命を、結構、写真を見ただけで、ズバリ当てて行けたのは、完全なる事実であって、ここでも一種のオカルト的な話ながら、やはり、人間の運命は既に決まっているんじゃ無かろうか、と、強く思うようになっていたのである。


 では、何故、自分の運命だけは、全く、予知出来なかったのかって?


 多分であるが、自分の事だと、欲目が出て来て、うまく、予知出来なかったと言うのが、結論なのだ。



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