第11話

 詩織からのメッセージだ。


 ちょうど詩織のことを考えているタイミングだったので、少し運命的なものを感じてしまった。


『今日はありがとう!

 大丈夫だった?』


 急にいなくなった私に対して、詩織は嫌な顔一つしなかった。

 詩織の優しさには感謝しかない。


『こちらこそありがとう!

 娘はもう元気になったから、大丈夫だよ

 貧血で倒れちゃってたみたい

 ご迷惑をおかけしました』


『それならよかった!

 次は今日の店でお酒が飲める時間に会わない?

 あのお店、夜はバーになるのよ』


『私、お酒はあんまり得意じゃないんだけど、大丈夫かな?』


 私はお酒を飲むと顔が真っ赤になり、すぐに記憶をなくしてしまうのだ。

 既読がついてから少し間が空いた後、詩織からの返信が来た。


『大丈夫

 ノンアルコールのカクテルもあるから

 それに今度は、夜に会ってゆっくり話したいと思って』


「夜に会いたい」という文面にドキッとした。


──何考えてるんだろう、私。詩織はそんなつもり、ないはずなのに。


 なぜか期待してしまう自分の、本当の気持ちが分からなくなる。

 佳正とご無沙汰だからそんなことを考えてしまうのだと、心の中で誤魔化す。


 しかし、今までに詩織との行為を妄想したことがないと言えば、それは嘘になる。佳正と行為に及んでいる最中にも、相手が詩織だったら、と考えたことがあったくらいだ。

 それくらい詩織は私にとって特別な存在で、久しぶりに会って学生時代の想いが再燃している自覚はある。


『それなら、次は夜に会おう!

 いつにする?』


 気付いたら、私は詩織にメッセージを送っていた。


 夜ならお互いゆっくり腹を割って話せるし、佳正の愚痴も言える。

 それに夜なら、咲良にお留守番してもらえば大丈夫だ。

 そうやって夜に二人で会うメリットを後付けで考えながら、詩織からの返信を待つ。


『私はいつでも大丈夫よ

 美咲の都合のいいときに合わせるわ』


 詩織からの返信が来た時、私はすぐに、都合が良くて直近で会える日を導き出した。


『それなら、来週の金曜日はどう?

 その日は仕事が早上がりだし、次の日は仕事無いから』


『了解。

 じゃあ、その日に会いましょう。

 時間は十八時くらいからで、場所はこの前と同じね。』


 こうして私は、詩織と2回目に会う約束を取り付けたのだった。

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