第8章 求む!隕石の防ぎ方

第38話 カラオケしながら考えよう

「うおぉーい、リル!肝心な所が解決してないじゃないか!」

 カノンが迫力あるツッコミを見せる。

「いや、大事なのは5人の能力者を集めることだよ。5人集まれば自ずと答えは出てくるのさ」

 偉そうな事を言ってるが、もちろん何も見えてはいない。


「もしかしてだけど、アタシって間に合わせだった?無理矢理5人揃えるための……」

「そんな事無いよ、チエだって必要な能力者だよ」

 自信なさげなチエをなだめる。

「でもさ、アタシ達の能力でどうやって隕石止めんのさ。アタシの能力が『出会い』なら、隕石止めれる技術者かなんかに出会うとか?」

「イヤ、私のイメージでは、部外者の力は借りてない。私達だけの力で何とかなるはずだよ」

「エー、本当にー?ちょっと想像出来ないなぁ」

 弱音を吐くチエにミッケが声をかける。

「すぐに答えが出なくてもいいさ。最短距離じゃなくて、少しまわり道したっていい。道を外れたからこそ、違う景色に出会い、そこで答えが見つかるかもしれない」

 おぅ、さすがミッケだ、いい事言うな。

「という事で、せっかくカラオケに来たんだ、少し歌ってみよう」

 またもや前言撤回、ミッケは歌いたいだけだな。

「いいんじゃねーの、順番に歌って、待ってる間は考えよう」

 カノンも歌いたそうだな。まぁ、わざわざカラオケに来てるんだからね、それでいいか。

 

 曲が始まり、ミッケの歌声が響く。

 しかし相変わらずミッケはいい声だな。思わず聴き入ってしまう。


「あっ、この曲、途中にハモリパートがあるよね、アタシ歌っていい?」

「ああ、歌詞にカッコで書いてある奴な、あれ気持ちいいよな、オレも歌っちゃおうかな」

「ミッケとデュエットみたいですね、わ、私もいいですか?」

 モノまで!?考える人いないじゃん!だったら……。

「よーし、みんなで歌おう……!」


―――数時間後

 イヤー、盛り上がった。今日学んだ事は、カラオケしながら考え事はできないって事。


 会計を済ませた後、モノがふと気付いたように声を上げる。

「あっ、そう言えば、隕石を防ぐ方法考えてませんでした。ごめんなさいリル!」

「いやー、いいんだよ、思い出してくれただけでも良かったよ、ハハ……」

「何言ってんのリル、いいわけ無いでしょ!アタシはまだ死にたくないよ。え〜、どうしよ〜」

「チエめ、急に現実に戻ったな。素数でも数えて落ち着け!」

「えっ、何素数って?」

「いや、このネタ知らないならいいんだ……」


 ミッケがみんなに声をかける。

「やっぱり、急には思いつかないからさ、今日は一旦持ち帰って、それぞれ考えてみようよ。それで、また集まって、それぞれ持ち寄ったアイデアを検討しよう。なーに、3人寄れば文殊の知恵ってぐらいだ、5人もいれば必ず解決策が見つかるよ」

 何か渋いことわざが出てきたが、何とかなる気がしてきた。ミッケの前向きな言葉には、いつも助けられるな。チエも元気を取り戻したようだ。

「それじゃあ、明日は急だから、明後日とか集まろうよ。またカラオケボックス……だと話し合いにならないか」

「う〜ん、長居できて、出来れば金がかからないところがいいな」

 カノンはお父さんが入院中だからお母さんの稼ぎだけで生活しているそうだ。あまり負担はかけたくないな。じっくり話し合える場所といったら……。

「あの、良かったら、うちに来る?両親とも働きに行ってて誰もいないし」

「エッ、リルの家に?いいのリル〜」

「狭いマンションだけどね、一応私の部屋はあるから」

「リルの部屋、少し興味があります!」

「おう、人んち入るのって小学生以来かもしれない。ちょっと楽しみだな」

 何だかみんなテンションが上がっている。

「ちょっと、部屋とか荒らさないでよ!」

「オイ、オレを見て言ったな。しねーよ、ガキじゃねえんだから」

「うん、有り難く使わせてもらうよ。ギターは必要かな?」

「不要!不要です!マンションなんだから、隣とかの迷惑にならないようにー!」

 まったくミッケはスキがあったら歌おうとするんだから。


 という事で、明後日の水曜日、午後1時ごろに私のうちに集まることになった。

「じゃあ、地図アプリで取得した家の場所送るからね、部屋は201だよ。みんな何かしらアイデアを持ち寄るよーにね」


 勢いでうちに集まることにしてしまったなぁ。皆を招待するという、嬉しいような恥ずかしいような気持ちが、カラオケ後の高揚感と相まってフワフワした感覚のまま帰宅した。


 夜、いつものように漫画を描く。今描いてる漫画はバトルものだけど、ただ戦うだけじゃなくて、お互いの正義をぶつけ合う感じ。だから、自分のエゴや弱さをさらけ出す心理描写に力を入れている。

 これ私自身の価値観がモロに出てるからね、人には恥ずかしくて絶対見せられない。みんなが来るからね、しっかりと鍵のかかる引き出しに入れて置かなければ。

 それにしても、ちゃんと考えてくるんだろうか。そういう私も全く思いつかないんだけど。

 予知夢で見たのは、隕石が落ちたところと、もう一つが、5人の能力者が何かしらの方法で隕石を防いだ後に喜んでいるような場面。肝心な途中の場面は出てこないのだ。

「一体どうやったんだ私!」

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