第37話 五人目の能力者
―――その日、巨大隕石の衝突により地球の8割の生命が失われた。長い間地球を支配してきた人類は、滅亡の一途を辿るだろう
―――8月16日の夜明け前、地球は死の星となった―――
「夢見たァァァー!!」
思わず布団を跳ね上げて起きる。見てしまった予知夢!何だろう、もの凄く悲しい気持ちが残ってる。
しかも具体的な日にちまで出てたぞ。確か
8月16日……その日に隕石落ちるって事!?今日が7月26日の月曜日でしょ、そうすると丁度3週間後の月曜日だ。ヤバい、時間が無い!まだ5人目が見つかってないのに……。
あぁ、どうしよう、でも、焦っても何も思い付かない。はぁ〜、月曜日か……週間少年ジャンピングの発売日だね、気を落ち着かせる為に一旦漫画を読もう。
私は適当な服に着替えて、近所のコンビニまで行き、ジャンピングを買ってくる。
う〜ん、昨日は早めに寝たのに、もう9時か。両親は既に出勤しているので、これまた適当にパンにマーマレードを塗って、遅めのブレックファーストを食べながら、漫画を読む。
しかし、やっぱ、シャドヴィは面白いね。謎が謎を呼ぶ展開、堪らないね。
でも、何でこれが、こんな後ろの方の掲載なんだ。見る目の無い読者が多いのかな。まぁ、分かる人にだけ分かればいいのさ。
一息付き、私は落ち着きを取り戻すと能力とみんなの事を考える。
私の予知能力
モノの心を読む能力
ミッケの勇気を与える能力
カノンの因果を精算する能力
あと1人か……でも、4人だけでもよく集まったよね。本当に奇跡みたいなもんだよ、本当に……。
私は今までの事を振り返り、ある結論に辿り着く。
午後1時、いつものカラオケボックスに集まる。少し遅れてしまった。4人は既に店の前に集まっている。
「リルー!遅いじゃん。早速行くよ。フリータイムだから、1分でも長く居た方が得だからね」
チエに急かされて部屋に入る。3回目のカラオケだ、みんな慣れた感じで、ジュースを片手にソファーに座る。
夢の事を話さなくちゃ。私は決意を固める。
「あ、あのさぁ、歌う前にちょっとイイかな?」
私の言葉にチエが反応する。
「あぁそうだよね。たまにはリルも気が利くじゃん。カノンの悲願が達成したという事で、一言もらわないとね?」
言い返す間もなく、カノンが反応する。
「イヤ、そういうのはイイって!でもまぁ、みんなありがとう、今日は楽しく歌おうぜ!―――それじゃあカンパーイ!」
ジュースで乾杯すると、拍手と歓声が響く。
思った事と違う流れになってしまったけど、これも必要だったね。私も一旦付き合い、場が落ち着いたあと、もう一度声をかける。
「あー、あのさぁ、おめでとうもそうなんだけど、ちょっと聞いてくれる?」
「何だ、1番に歌いたいのかい?しょうがないなー」
チエの言葉にモノが反応する。
「いえ、何か大事な話があるのですね?ちょっとみんな聞きましょう」
さすがモノだ、気付いてくれた。モノが話してくれたおかげで、みんなが神妙な顔付きで私に注目する。
私はじっくりと話し始める。
「あのー、見たんだよ……予知夢」
みんなが驚きの表情を浮かべる。
「予知夢って、例の隕石が落ちるって奴か!」
「続きの場面でも見たの?」
矢継ぎ早にカノンとチエから質問が飛ぶ。
「いや、同じ場面だった」
「同じ場面……」
チエが不服そうな表情を浮かべる。
「でも、今度は具体的な日付が出てきたんだ……隕石が落ちるのは、8月16日みたいなんだ」
タイムリミットが提示された事で、みんなの顔つきが変わる。
不安そうにチエが話し出す。
「8月16日って、え〜と、あと3週間しかないんだけど」
「8月16日って、なんかテレビで見たな」
カノンの言葉にモノが反応する。
「あっ、ペルセウス座流星群のピークの日ですよ!」
「もしかして流星群に隠れて隕石が落ちて来るって事かよオイ!」
流星群に隠れて……だから見つけられていないのか?カノンの言う事に、あり得るかもと思った。
「どうすんのさリル〜、そういや、まだ5人目見つけてないじゃん!歌ってる場合じゃないよ、早く見つけに行こう!」
チエが半べそで訴える。他のみんなも不安そうな眼差しを向ける。
「いや、その必要は無い」
「必要無い?探す必要無いって言うの?まさか諦めたんじゃ」
狼狽するチエをなだめる。
「もちろん諦めてないさ。探す必要無いっていうのは、既に見つかっているからだよ」
「エー!見つかったの?どこどこ?スペシャルゲスト登場?」
喜ぶチエを再びなだめて言う。
「私の目の前だよ」
「目の前!?」
後ろを振り返り、キョロキョロするチエの手を握る。
「5人目はチエだったんだよ!」
「ア、アタシ??」
驚くチエ。ミッケやカノンも驚きの声を上げる。
「チエも何かの能力を持ってるって事かい?」
ミッケが問い掛ける。
「うん、私が思うにチエは『出会い』の能力者だよ」
「出会い?」
チエが意味が分からないというように聞き返す。
「そう出会いだよ。チエがいなけりゃ、ここのみんなには出会えなかったからね。チエの能力のおかげでこのメンバーが揃ったんだ」
ポカーンとしているチエの横でモノが口を開く。
「確かに、私が濡れた靴を履いて歩いている所に、最初に声を掛けてくれたのはチエでした」
「そういえば、ボクが公園で歌ってる時、目の前まで駆けつけたのはチエだったね」
「ああ、約束通り集まらないからってオレが帰ろうとした時、立ち塞がったのはチエだな」
ミッケもカノンも自分の事を振り返ると、納得したように頷く。
「そうなんだ、必要な人同士を出会わせてくれる。それがチエの能力だよ」
「アタシの能力……いいの?アタシでいいの?」
困惑するチエに言う。
「もちろんいいさ。既に能力者は5人揃っていたんだよ!」
「ありがとう、アタシも役に立てるなら嬉しいよ……でもさ、この5人の能力で隕石止めれるの?」
そう、5人揃ったはいいけど、問題は隕石の衝突の防ぎ方だ。
みんなの視線が私に集まる。ここは勇気を持って言うしか無い。
「うん、それを今日みんなで考えようと思ってね」
みんな一斉にずっこける。
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