第7章 五人目の能力者
第36話 因果応報!
次の日の朝、テレビのワイドショーを見ながら少し遅い朝食を食べる。
しかしワイドショーってのは、くだらない芸能ネタを長々とやるもんだな。芸能人のゴシップとか大して興味無いわ。まあ、世間一般には需要が有るのかもね。私的には今注目の漫画特集!とかやって欲しいよ。まぁ、そんなのは見た事ないけど。
次の話題は……夏の流星群か。こうゆうのは悪く無いね。
何々、8月16日の午前3時がペルセウス座流星群のピークで、今年は百年に一度あるか無いかの盛大な流星群になるかぁ。へぇ〜、いいね、夏休みだからいくら夜更ししても良いしね。チエとか誘って一緒に見ようかな〜。
5人目を探しに行かなきゃいけないんだけど、昨日の事もあって、まだ疲労感がある。今日は外出しないでいようかな、まだ大丈夫だよね?何の根拠も無いんだけど。
それから夕方まで、録画して溜まっていたアニメを観て、そのあとゲームと漫画、そして夏休みの宿題を少しやって過ごした。私は意外と宿題は溜めずに、早々と片付ける方だ。可能なら7月中にほとんどを終わらせてしまい、長期休暇を満喫するのだ。満喫と言っても、海とか旅行に行くわけでは無く、家でダラダラ漫画やアニメを見て過ごすのだが、それが一番の贅沢だと思う。
普通の高校生なら友達と遊びに行ったりするかもしれないが、変に気を使って疲れるぐらいなら一人で過ごしたいと思っていた。今までの友達なら、そんな感じ。
でも、チエは何か違う。何がと言われるとハッキリしないけど、居心地が良いというか何というか、例えば私が変なことを言っても受け入れてくれる安心感があったりする。だから一緒にいて疲れないし苦にならないんだな。
良く考えると、モノも一緒にいて苦じゃないな。心が読めるから、本当は気を使いそうだけど、穏やかだし優しいから……心の痛みを知っているからかな、人を傷つける事は絶対しないだろう。
そういえば、ミッケと、意外にもカノンも苦にならないな。
ミッケは天然だけど、イザという時は頼りになる。前向きな行動は尊敬できる。カノンは見た目と違って誠実だし、結構周りに気を使うよね。
しかしみんな、個性がバラバラだな。能力者探しをしてなかったら、関わる事は無かったんだろうなぁ。
机に頬杖をつき、もの思いに耽っていると、携帯の電話が鳴った。チエだ。
「リル!ネットニュース見た?」
「ニュース?あー、流星群の話題なら見たよ、凄そうだよね」
「イヤ、何トンチンカンな事言ってんの!社長が載ってんだよ。青柳築治郎が逮捕されたんだよ!」
「エッ?今何て……」
社長が逮捕!?因果応報の能力は、やっぱ本物だったのか!
「ちょっと待って!逮捕って何だ、どんな悪事が暴かれたんだ?」
「何か難しい事が書いてあって、アタシには、よく理解出来なかったんだけど、俗に言う脱税って奴みたい」
「脱税!会社の納税額をごまかしたって事か。ちょ、ちょっと私も調べてみるよ」
「わかった、また後でね」
チエとの通話を切り、スマホでニュースを確認する。
「えーと、プラットエージェントだっけ」
会社名で検索すると、扱いは小さいが、いくつか該当記事が出てきた。
そんな大きな会社じゃないからな。ネットニュースには載るが、テレビのワイドショーなんかでは扱われないのだろう。検索した中でも詳しそうな記事を見てみる。
何々、3年間で約1億700万円の所得を隠して約4400万円を脱税したとの疑い……それ以外にも労働基準法違反、宅建業法違反……契約不履行による詐欺罪での立件も視野に入れ、名誉毀損、傷害の話も出ているって、わー、沢山あるなぁ、罪のオンパレードだな。これだけあったら会社はもうやってけないだろうなぁ。普通の社員は可哀想だけど……んっ?これらは全て社員からの内部告発により情報提供されたか……そうか、前々から計画していて、昨日、社長がいない時を狙って、告発に踏み切ったって事かもしれないな。うん、やっぱり現状に耐えらず、会社が潰れてもいいから訴えようという社員が何人もいたんだろうな、う〜ん。
その時、着信のメロディーが流れる。
「おっと、電話……カノンだ!」
一瞬躊躇したが、応答のボタンを押す。
「もしもしリル?いきなり掛けてゴメン、今大丈夫?」
カノンの気を使った声。でもトーンは明るいのでホッとして「大丈夫だよ!」と明るく応える。
「チエから電話来て知ったんだけどさ、社長の奴、逮捕されたみたいだな」
チエめ、みんなに電話掛けまくってるのか。まぁ、早く知れて良かったけどね。
「そうだね、こんなに明らかな結果が出るなんてビックリだよ」
「あぁ、やっぱオレの能力凄いんだな」
「ハハッ、自分で言うんだ」
こんな軽口を言うカノンは初めてだな。
「社長の奴はこれから罪を償っていくのだろう。現状、確定されたのは脱税だけみたいだけど、連鎖して次々とボロが出てくる。あんな贅沢な暮らしは、もう出来ない。ある意味死ぬより苦しむ事になるかもな。でも、全て自分でやった事だ、当然の報いだろう」
「そうだね、これから一生罪を償っていくんだろうね」
「昨日はさ、カッコつけて、これで満足だとか言ったけど、家帰って考えちゃうとさ、やっぱモヤモヤしたんだよね。だから、これでスッキリした。今から父さんに報告しに行くんだ。いや、意識は戻らないんだけどさ、ちょっとは喜ぶんじゃないかと思って」
「うん、そうだね、きっと喜ぶよ……」
もっとカノンを励ますような事を言いたいのだが、言葉が見つからない。こんな時ミッケなら良い事言うんだろうな。
「あとさ、お祝いって訳じゃないけど、良かったら明日みんなでまたカラオケ行かないかな?打ち上げって事でさ」
「おー、イイね、行こう行こう」
「じゃあ、皆にはオレから連絡するから、時間とか後で連絡するよ」
「わかった、待ってるよ」
少し間が空いた後、ためらいながらカノンが話し始める。
「あの……オレの事はこれでケリが付いたけどさ、これからも仲間に入れてくれないかな」
「当たり前じゃん!私は友達だと思ってるよ。チエやみんなだってそうだよ」
「ありがとうリル、オレってこんなだからさ、人から避けられる事が多くって……こんなに気兼ねしないで話せる奴らって初めてだよ。本当にありがとう……能力者探し協力するからな、また明日!」
照れくさかったのだろう、カノンは私の返事を聞く前に電話を切ってしまった。
普段カノンは他人を寄せ付けないオーラ
を出していて、あまり人と関わるのが好きじゃないのかと思ってたけど、やっぱり心を許せる友達は欲しいよね。こちらこそ、よろしくねという気持ちだ。
少しして、カノンからLINEに連絡が入った。明日の午後1時にいつものカラオケ屋に集合だ。それからモノとミッケから連絡があり、モノはみんなで5人目の能力者を探す計画を建てようと言ってくれた。ミッケの方は、カノンを祝福する曲を作ると言っていたので、やんわりと制止しておいた。
それにしても良かった。明日はカラオケで、ハメ外しちゃおうかな。
この日の夜は、少し漫画の執筆を進めた後、いつもより少し時間が早いけど、もう寝る事にした。
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