第19話 四人目の能力者
「ゴ、ゴメンナサイ……!!」
ハァハァと息を切らしながら、モノが現れた!
「モノー!待ってたよー!」「良かったらタオル使って」
チエとミッケと一緒に汗だくになって到着したモノをねぎらう。
「本当にゴメンナサイ、今日に限ってスマホの充電切れちゃって連絡出来なかったんです」
「それで既読が付かなかったのか。まさかモノに限ってとは思ったけど心配したよ。でも、随分遅かったね?」
「はい、帰りのホームルームが長引いてしまって……というのも、あの、いつも私をいじめてた彼女……」
「あぁ、髪が長くて、性格悪そうな顔の人ね」
数回しか見たことないが、めちゃくちゃ印象が悪い。
「その人が、捕まったらしいんです。なんでも、振込詐欺に加担してたらしくて」
「マジか!?マジモンの悪い奴だったんだ!」
「お金を引き出す役か何かだったみたいで、どこまでわかってやってたかは知りませんが、どちらにしろ退学という事で、その説明で少し時間がかかりました」
「あぁ、バイト感覚でやる人もいるとか聞いた事ある。ほんの数万の為に、一生が台無しだね」
「……ですね。その説明だけなら、まだ、こんなに遅くなりませんでしたが、その後、その捕まった子に付き合って私をいじめた形になっていた、笹木さんが、泣きながら謝りに来て……」
「あぁ、モノが心を読んだ感じでは、悪い人じゃ無いとかいう。本当に悪い人じゃ無かったわけか」
「はい、償いをしたいとか言われて、そんな事しなくていいとか、やり取りしてたら、こんな時間になってしまいました。本当にゴメンナサイ!」
モノは勢い良く頭を下げる。
「イヤイヤ、(ギリギリだったけど)間に合ったから良かったよ!それに、もう、いじめられずに済むって事だね?安心して学校行けるし、本当良かったよ!」
話を聞いて神妙な顔をしているカノンにチエが聞く。
「これも、カノンの能力の影響かな?」
「そうかもしれない。この子の因果を精算した事で、マイナスの要因が消えたわけか……」
「皆さんも無事だったみたいですね?」
モノが笑顔で問いかけ、チエがおちゃらけて応える。
「あぁ、もちろんだよ。私なんてチョットいい事があった程だもんね。でも、モノは言ってみればマイナスだったものがゼロになっただけだから、もっといい事あってもいい位だよね?」
「あ、それですが、少しいい事もありました。以前、何となくwebで応募したプレゼント抽選で、なんと沖縄旅行のペアチケットが当たったんです。ペアチケットなので、普段心配かけている両親にあげようと思ってますけど」
マジかー!今までそれだけ報われてなかったという事なのかな。辛いことがあっても、頑張ってきたんだろうな……。
「それで、チエはどんないい事があったのですか……?」
「アアッ、イヤイヤ私の事はいいのよ、大した事じゃないから。イヤ、心を読まなくていいよ!読むなよー!?」
チエのリアクションで笑いが溢れる。カノンも少し口元が緩んでいる。
「どうだいカノン?ボクたちは約束を果たしたよ」
ミッケの問いかけにカノンが静かに頷く。
「どうやらそうみたいだな、合格だよ。しかも、かなり信頼しあってるようだな。オレとした事が、少し羨ましくなったよ」
カノンのらしくない言葉に驚きつつもホッとする。
「それじゃあ、改めて依頼させてもらう。……オレに協力してください」
深々と頭を下げるカノンに皆動揺する。
「そんな、いいよ、最初からそのつもりなんだから」
「そうだよ、さっきまで殴りかかる勢いだったのに、怖かったよ本当に〜」
チエの言葉にカノンの片方の眉毛がピクッと反応する。
「怖がらせたなら悪かったけど、一応言っとくが手を上げるつもりなんてなかったからな」
「エー?!だってリルが間に入ってくれなかったら殴ってたよね?」
「イヤ、倒してから行けー!なんて言うから、そこまで仲間の事信頼してるんだったら……もう少し待とうと思っただけだよ」
「エッ?早とちりだった!?」
「そうだよ、オレは生まれてから人を殴った事なんてネェ」
「本当に!?ヤンキーなのに暴力振るったことないの?」
「何だヤンキーって?オレは髪染めてて、口は悪いけどヤンキーなんかじゃネェーよ!」
「エエッ!?どう見てもヤンキーじゃん、顔も怖いし……」
「悪かったな顔が怖くて!あんな群れて弱いものイジメするような奴らと一緒にしないでくれ」
これは意外な事実だ、カノンはヤンキーじゃないらしい。見た目で判断しちゃいけないな。けど、性格は見た目通りな感じだなぁ。
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