第4章 四人目の能力者

第14話 尾行

 そして月曜日――そう、週間少年ジャンピングの発売日だ。憂鬱な月曜日もジャンピングがあるから乗り切れる。

 今日は早く帰れないだろうから、朝登校中にコンビニに寄って買ってしまった。手元にあると思うと待ちきれなくてシャドウヴィジターだけ昼休みに読んでしまった。

 いやー、神展開。ここ最近の盛り上がりは凄いね。チエは絵柄が苦手とか言って読まないけど、人生損してるよね。

 ま、それは置いといて、帰りのホームルームも終わり、帰宅時間だ。そろそろミッケから連絡があるかも――と言ってるそばから通知有り!


「リル、連絡来たよ!」

 チエのテンションが高い。

「うん、わかってるって。え〜と、何々……『現在校門出た所、尾行開始します』だって」

「やっぱり外で仕留める気だね」

「仕留めるってチエ……とにかくミッケに追いつこう!」


 校門を出ると、少し先にモノが歩いているのを見つける。

「モノ!ミッケは……」

 モノは黙って指を差す。10メートル程先には、電柱や塀の影に隠れながら進む、怪しい人影が……。


「あれミッケかな?別に姿見られたって悪くは無いんだから、何故に隠れるかね」

「逆に警戒されちゃいますよね」

「ん?という事は、その先にいる子が織峰カノンていう子か……」


 ミッケの更に先には髪の長い女の子が一人歩いている。髪の色は黄色だ……。


「……あの、毎日塞ぎ込んでるとか言ってたから、私勝手におとなしい子をイメージしてたんだけど、あれはヤンキーって奴じゃないか?」

「顔は見えないけど後ろ姿はそうだね、うちの学校、髪染めて良かったんだっけな?」


 うわー、苦手だな〜。後ろ姿だけで、何となく威圧感がある。ミッケは本当に話しかけるのかなぁ。

 ミッケがふと後ろを振り向く。どうやら私たちが集まったのに気付いたみたい。何だそのサムアップ、そして大袈裟なウインク……。

 そして、キョロキョロと周囲を伺いつつ……行った!

 ミッケがシュババと走って前を歩いている例の子に追い付くと、何やら話しかけている。

 何度か言葉を交わした後、強引に手を引き、工事中のビルの手前で路地へ入っていった。大丈夫かミッケ!?


「リル、モノ、行ってみよう!」

 チエの言葉に頷いて私たちも急いで路地に入る。

「あっ、あそこだ!」


 ビルの横が駐車場になっていて、奥の方に二人が見える。私たちは停まっている車の陰から見守る事にした。


「何やら言いあってるよ。ちょっと穏やかじゃ無いね」

「余計なお世話的な事言われてない?」


 しかし気が強そうな子だなぁ。クラスで誰も話しかけないとか言って、あんな見た目だから話しかけないんじゃないのかな。


「モノ、あの子って見た目通りなのかな。心読めるかい?」

「遠いのでよく分かりませんが、そんなに悪意は感じません。話しかけられた事で何か複雑な気持が感じられます。迷惑と思ってるけど、話しかけてくれて嬉しい気持ちもあるように見えます」

「本当?だったらミッケの気持ちも伝わるかも」

「でも、何か自分を責めている感情が見えます。父親が事故に遭った事に関係があるのかも」

「えっ!?どうゆう事……」


 私には、カノンが不機嫌そうに、ミッケに文句を言っているようにしか見えない。


「あっ、ミッケが距離をとったよ、諦めた?」

「いえ、話しても無理だと判断して……奥の手を出す気です!」

 ミッケは胸に手を当てて深く息を吸うと声を張り上げた。


『ボクらの住んでるーこの地球はー、草たちも木たちも笑ってるー

 何故なら空気があるかーらー、キミが吐いたーシーオーツー』


 こ、これは、相変わらずなリリックセンス!

しかもアカペラだから余計に歌詞が引き立つ、シーオーツーって二酸化炭素ってことか!?

 引いてる私の横でチエが興奮している。


「来たー!まさか本当に歌うとは!私たちができない事を平然とやってのけるッ、そこにシビれる! あこがれるゥ!」

「お、おーい!?チエ、今のセリフ自然に出たの?」

「えっ、何か有名なセリフだった?」

「シビれたりあこがれてるのはチエだけみたいですよ!ほら呆れて立ち去ろうとしてます」


 カノンは愛想を尽かしたみたいで、不機嫌な表情でツカツカとこちら側に歩いてくる。

 と、止めるか?躊躇しているとチエが飛び出した。

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