第9話 週末2

 そして土曜日。10時の開店直後に入れるように、乗車する電車の時間を決めて合流する事にした。まぁ、そんなに急いで行かなくても、品切れになるほど人気があるわけじゃないんだけどね。


 待ち合わせた電車の一両目に乗ると、シートの端っこで2つ前の駅から乗車しているチエが手を振る。チエとは何度か学校外でも遊んだ事があるが、普段見慣れている制服と違い、私服で会うというのは新鮮だ。

 チエは夏らしくノースリーブのシャツに短パンで元気一杯って感じ。

 駅を4つ程過ぎたところでモノが乗車する。ペコリと会釈するモノ。

 服装はおとなし目のワンピース。清楚な感じで、なかなか可愛い。私服で合うのが照れ臭いのか少しはにかんでいる。

 因みに私は、パッと見では分からない、結構レアなアニメキャラのコラボTシャツを着てきました。

 

 3人で駅の改札を出ると夏の陽射しが照りつける。今日は真夏にしては、気温が高くない方だけどやっぱり暑い。お目当てのアニメ店まで数分だが、ジワリと汗が出てくる。

 予定通り10時過ぎに店に入ると、ちょっと乱暴な位の冷房が身体に染みた。


「いや、やっと涼しくなったね。しかし、開店直後なのに混んでるよねー」

 チエがキョロキョロしながら言う。


「やっぱ、品揃えが違うからね。つくし台の駅前にできた店も、もう少しあればなー。せめてシャドヴィだけでも」

「シャドヴィがもっと人気があればねぇ」

 チエがニタリと笑いながら嫌味を言う。


「全くだよ、何故皆あのセンスがわからないかねー……モノは貸した漫画、もう読んだ?」

「はい、今2巻まで読みました。独特な絵柄ですが、慣れると味わい深いですね。ストーリーも先が読めなくて面白いと思います」

「おお!流石分かってるなー!」

「……まあ、目の前でつまらないとは言えないよね」チエが憎まれ口を挟む。


「ところで、人多いけどモノは大丈夫?」

「はい、大丈夫です。このお店に来てる人は、それぞれ好きな作品の事を考えてるからでしょうか、皆ポジティブな気持ちですから、苦になりません」

「なるほどね、それなら良かったよ。では、早速買ってくるね。君たちの分は買わなくて大丈夫かな?」

「ハイハイ、お構いなくー」


 適当に応えるチエと、笑顔で会釈するモノを尻目に売り場に向かう。

 難無く目的のアクキーを手に入れて戻ると、チエが「ちゃんと買えた?売り切れてなかった?」とニタニタしながら言うので「大量に入荷したみたいだから、ギリギリ大丈夫だったよ」と言っておいた。


 チエが折角来たからと言って、流行りのアニメのガチャガチャをやり、こいつラインナップに入れるかね?というキャラを引き当てた後、3人で売り場を一通りチェックしてから店を出た。


「いやー、良かったね!」

「リルは目的達成したからね。モノはそんなに興味も無いだろうから、つまらなかったんじゃない?」

「いえ、そんな事無いです!こういうお店もあるんだなって刺激になりました」

「刺激に……まぁ、そこはいい意味で受け取っておこう。で、まだ11時ぐらいだけど、どうしようか?」

「どうしようか?じゃないでしょ!能力者探すんだよね?この人数の中どうやって探すの?って感じだけど」


 相変わらずチエのツッコミは的確だ。でも、何のあても無いけど、運命的な出会いをするんじゃないかと勝手に思っている。


「ちょっと小腹も空いてきたし、駅の裏口にあるハンバーガー屋でお昼食べながら考えない?」

「うわ、出たなマイペース。まぁいいけど、モノは?」

「はい、私も大丈夫です。友達と外食するなんて初めてだから、ちょっとワクワクします」


 モノは下を向き顔を赤くする。言ってしまって少し照れているようだ。何とも微笑ましい。

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