第8話 開戦
アスターが十八、アルペストリスは二十になったこの年の春、本土のリル島に近い領地の長が変わった。新しい領主のヴォルディオ・ジャックルは前々から領地拡大を目論んでいるという噂があった通り、近隣に戦を仕掛け、次々と領地を飲み込んでいる。三年前にロナルドが亡くなってから島の領主として采配を取っているレオナルドは、いつ攻められても対応できるように今まで以上に軍の訓練と整備を強化した。
八月になり、ついにヴォルディオの軍勢がリル島に攻め入ってきた。
迎え討つ準備をしているロバートに言う。
「兄様、私も一緒に戦います!」
「ありがとうアッシュ。だが君を連れてはいけないよ」
兄は穏やかな顔のまま、しかしきっぱりと断る。
「そんな……!!絶対に兄様の邪魔はしません。私だって、大切なこの島の人々を守るために今まで相当の鍛錬をしてきたつもりです!」
「ああ、そうだね。今やアッシュに勝てるのはアルペだけだからね。よく今まできつい鍛錬も頑張って続けてきたね、アッシュ。確かにそんな君が一緒なら心強いけど、今回は駄目だ」
「なぜです!?私が女だからですか。妹だからですか!力で勝てないのなら、速さと頭で勝つまでです。だから━━」
「違うよ。君が男でも女でも連れて行かなかったさ。負けるつもりはさらさら無いが、考えてみなさい、万が一の時のことを。私とアルペに加えてアッシュまで死んでしまえばこの島は終わる。アッシュが島を守ってくれていると思うから、私たちも安心して海に乗り出せるんだよ」
駄々っ子に優しく言って含めるように、ロバートは言った。
アッシュもこれ以上は何も言えなかった。
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