第4話 稽古開始

翌朝。アスターは朝食の場で、長兄レオナルドからお前もうちに居る子どもたちと一緒に鍛錬をしないかと誘われた。ロバートは内心では、アスター自身が男子ばかりの中で剣や弓の稽古をさせられることを嫌がるのではないかと思っていたが、予想に反してアスターは大喜びだった。


「やったあ、私も兄様たちみたいに島の皆を守れるのね!」


その言葉を聞いて、兄たちは初めて自分たちが妹にどう見られていたのかを知った。そして、それほどまでに自分たちが稽古ばかりで妹と対話をしていなかったことに気付き、絶句した。

無邪気なアスターは兄たちの打ちひしがれた様子には気付かないまま、広い庭に飛び出して行ったのだった。


アスターの家であるスカビオサ家は、昔から島の領主の一族だ。複雑な潮流に囲まれた島々のひとつであるリル島は長らく平和な土地であったが、近年では周辺の領地でも不穏な空気が流れてきていた。そのためスカビオサ家でも島の男の子たちや若者を集めて武芸を叩き込んでいる。


「アスター、力任せに刀を振るんじゃない。もっと流れるように、滑らかに!水の中にいると想像してごらん。抵抗を受け流して真っ直ぐに力をかけるんだ」


「はい、父上!」


ロナルドに見てもらいながら刀を振るアスターは、今までよりも輝いて見えた。

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