第3話 宴の後で

時刻は深夜一時。アスターは散々はしゃいで、早々に寝落ちしてしまった。パーティー自体も既にお開きとなっている。食器も片付けられ、後には程よい満足感と疲労感が漂っている。アスターの父と歳の離れた兄二人は先ほどまでの喧騒から一転して静寂に包まれた大広間を余韻のせいでいつもより少し寂しく思いつつ、まだその余韻を手放したくないとでも言うかのようにだらだらとおしゃべりに興じていた。


「そういえば父上、今日外で領地の子どもらとかくれんぼをしていたアッシュを迎えに行ったんですがね。気付かないうちに随分と成長していましたよ。身体能力と観察眼は天性のものでしょうね」


「ほう、アッシュがか」


ロバートは妹の動きぶりについて詳しく話す。地の利を生かした動き方、相手の心理や行動を読みその裏をかく頭脳、何よりもたかが遊びであるかくれんぼにここまでの力をかける集中力。

話を聞き終わった父ロナルドは小さく唸った。

そこへ長兄レオナルドが口を開く。


「父上、アッシュにはこれだけの才能があるのです。うちで引き取って育てている子らの鍛錬にあの子も参加させてみてはいかがでしょう」


「しかしあの子は女の子なんだぞ。男子に混ざって剣や弓の練習をさせるのはいかがなものか……」


ロナルドは渋る。


「それはそうですが、近頃はこの辺りも不穏な動きが広がってきています。いつ戦になるともわかりません。有事の際に動ける者は一人でも多い方が良いでしょう」


あまり乗り気ではない様子だったが、最終的にはロナルドもレオナルドの言葉に頷いた。

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