第3話 下着を買いに行こう


「それで衣服はどうするんだよ」


 さっきから生まれたままの姿なことを指摘する。

 朝だけなら眼福モノだが、常に全裸だと流石に困る。


「ああ、これ? 大丈夫だよ」


 アルシュカの影が全身にまとわりつく。

 それは瞬く間に昨日見たようなドレス姿になった。

 おお、流石は吸血鬼だ。


「でもこれだと目立ちすぎるか。なにかいい服ないかな?」

「え~~~~、ジャージでいいか?」


 仕方なく俺のジャージを貸すことに。

 若干ブカブカで萌え袖になっているが、気に入ったようで「うむ」と頷いた。


「なかなかいいね。あ、そうだ。この国にも服屋ってあるよね?」

「あるけど……流石に女物の服を買う金なんてないぞ」


 俺だって家から少ない仕送りでやりくりしているのだ。

 アルシュカを養うためにバイトを始めるかまで考えているのに……。


「ああ、いや影でコピーする参考にしたいんだよ。見るだけさ」

「なるほど、それならかまわないけど……」

「というわけで一緒に行こうか」

「いいぜ」


 ん? これってかなりデートじゃないか? デートかも。

 美少女とデート。幼馴染を寝取られてから俺の運勢確変してないか?


 いや別に他の女が出来たからって傷が癒やされるわけではないけれど……。

 それに彼女じゃなくて御主人様だし。


「まぁ、それもご褒美か……」

「なにか言った? はやく行こうよ~」


 そう言って玄関に向かうアルシュカ。

 う~~ん、ジャージ姿でも可愛い。


 あ、下着ってつけているのだろうか。

 いや、影で作れるって言ってたし心配はしなくていいか。


 じゃあ近くのデパートに向かうとするか。


 俺のアパートは駅前にあり、必然徒歩でいける距離にデパートがある。

 色々揃っているから便利だ。


 一階は食品売り場。二階は服屋とか本屋とか色々ある。

 なんとフードコートや映画館まであるからとても便利だ。

 三階は駐車場だが……俺が入る必要はないな。


 用があるのはとりあえず二階だ。

 さてどんな服を見るのかと思えば、まっさきに下着売り場へと向かった。

 もしかしてつけてないのか!?


「くふふ、もしかしてつけてないと思った?」

「ああ……そりゃかなり思うだろ……」

「残念! 可愛い下着が欲しかっただけだよ」

「ああ、じゃあちゃんとつけてるんだな!」

「くふふ」


 なんだその意味深な笑いは。

 つけているのか履いてないのか。


 まさにシュレディンガーの下着になっている。

 シュレディンガーさんもびっくりだよ。


「ねぇ、これ可愛いと思わない?」


 そう言って俺に見せてきたのは、黒いフリルのついた下着。

 正直布面積が小さくてかなりエッチだと思う。

 というか健全な男子高校生に下着を選ばせないで欲しい。


「ああ、いいな。でも白い下着のほうがいいかもしれない」

「黒以外は影で作りにくいんだよ~。ていうかエッチだね、君」

「なぜだ!? 白い下着は清楚だからエッチと程遠いだろ!?」


 白。それは清楚な色。下着の色となれば尚更である。

 銀髪のアルシュカには似合うと思うんだけどな~~。

 ……と思ってると、ちょっと呆れたような表情をされた。


「女の子にさぁ、必要以上に清楚を求めるのってどうかと思うよ?」

「ふっ、そんなだから寝取られたとでもいいたいのか?」

「そんなだから寝取られたんだよ」

「うぐっ……」


 自分で言ってなんだか落ち込んでしまった。

 でもいいじゃん白い下着……!!

 女の子は清楚なのが好きなの!!


 俺が露骨に落ち込んだのを見てか、ぽんぽんと背中を撫でてきた。

 そして耳元に近づいてきて、こそりと囁く。


「買ってくれたら履いてあげてもいいよ?」

「買います」


 当然ながらお値段は結構した。

 でも可愛い女の子が白い下着を履くこと以外に大事なことってあるだろうか。

 いや、ない(断言)。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る