第14話 霊のランク付け

 魔法訓練を初めて約一か月。


 「風刃ウィンドカッター!」


 キィィィィン!


 最初は魔法に込める魔力の量が少なかったせいで全然的に当たらなかったが、二週間前くらいからコツを掴んできて、的に少しずつ当たるようになった。


 最近ではかなりの確率で的に当たるようになり、魔法の威力も上がってきた。


 「前よりも的に当たる確率が高くなっていますね、魔法の威力も上がっていますし。きちんと努力したようですね」


 「ありがとうございます!」


 ダンさんが褒めてくれて嬉しいのだが、最近少し気になってきたことがある。


 「あ、あの、ダンさん、一つ聞いてもいいですか?」

 

「はい、何でしょうか?」


 「あの、そろそろ他の魔法も使ってみたいと思って......」


 いつまでたってもダンさんが他の魔法を教えてくれないのだ。アイシャさんは他にも魔法を使っているのだが。


 「ああ、そうですね。そろそろ他の魔法も使ってもいいかもしれません。ですが、その前に......」


 「えっ、何ですか?」


 「実地訓練を行う方がいいかもしれません。悪霊を狩りに行くんですよ」


 悪霊を狩りに?それは、まだ早い気がするんだけど。


 「不安そうな顔をしていますが、大丈夫ですよ。あなたの実力なら、Dランク相当の霊を狩ることができるでしょう」


 「Dランク?って、何ですか?」


 「ああ、説明していませんでしたね。まず、エクストス家では最近になって霊にランク付けをするようになり......」


 「強さによってE~Sランクまで分かれているのよ!」


 ダンさんが説明しようとすると、アイシャさんが割り込んできた。


 「ま、まあ、具体的に言うと強さ以外にも、被害規模、霊の能力などを考慮して、霊を狩る前と後で大まかなランク付けをしています」


 「霊の能力、ですか?」


 「ええ......霊が魔力と魂のみで形成されていることは知っていますか?」


 「はい」


 確か前に、ジンさんが教えてくれたな。


 「死ぬことで肉体との関係が切り離されるので、魔力は魂との繋がりが強くなります。それにより、霊が強く思っていることがその霊の魔力に強い影響を及ぼし、結果その霊特有の魔力を使った攻撃、魔法のようなものを使うようになるんです。それが霊の能力ですね」


 「......つまり、霊は強く思っていることが魔法のようなものとして使うことができる、ということですか?」


 「ええ、例えば、誰かを守りたいと強く思った霊がいたならば、盾だったり壁だったりと、何かを守るような能力を使いますね」


 誰かを守る......あのキト村の女の霊も、子供を守りたかったのだろうか。


 「話は逸れましたが、霊のランクごとの強さについて説明しましょうか」


 「はい」


 そうしてダンさんが説明してくれた。簡単に説明すると、


 ・Eランク:悪霊ではないただの霊、害はほとんどない。


 ・Dランク:ここからが悪霊。害はあるが、人を殺傷できるほどの力はない。または、人を傷つける能力を持っていない。すでに数人分(一般人の魔力量を基準とする)の魔力を取り込んでいる。キト村の女の霊がこれにあたる。


 ・Cランク:霊が見えない人ならば殺傷可能。すでに十数人分の魔力を取り込んでいる。


 ・Bランク:一体で村一つ壊滅させることが可能。すでに数十人分の魔力を取り込んでいる。


 ・Aランク:一体で国を揺るがすほどの事件を引き起こすことが可能。すでに数百人分の魔力を取り込んでいる。


 ・Sランク:一体で国を一つ滅ぼすことができるほどの大災害を引き起こすことが可能。すでに数えきれないほどの人の魔力を取り込んでいる。


 

 「説明は以上になりますね」


 「......Sランクの霊なんて、本当にいるんですか?」


 いくら何でも、一体で国を滅ぼすことができる霊なんてのは......


 「私は一度だけなら見たことがありますよ。相手にもされませんでしたが」


 「そ、そうなんですか」


 本当にそんな霊が存在していたなんて。


 「ダンさん、説明は終わった?」


 僕が驚いていると、少しイライラしたような声でアイシャさんが尋ねてきた。


 「ああ、すみません、実地訓練の話でしたね。Dランク相当の霊がいると思われる場所に、エリックと私の二人で行こうと考えています」


 Dランク、キト村の女の霊くらいの強さの霊か。


 「えー!ダンさん、私も行きたいです!」


 「今回はエリックの実力がどれほど上がっているかを見るためのものです。アイシャが来る必要も理由もありません」


 アイシャさんのわがままをダンさんはバッサリと切り捨てる。


 「だ、だけど......」


 「それに、あなたはDランク以上の霊を狩ることができます。私が行くのは霊が予想より強かった時の万が一の保険として。これにアイシャが加わると、明らかに過剰戦力です」


 「そ、そうですか?」


 アイシャさんは少し褒められた気がしたようで、ニマニマと笑う。


 「ですので、アイシャはお留守番ということで、よろしいでしょうか?」


 「しょ、しょうがないわね、わかりましたよ」


 「では、エリック、早速行きましょうか」


 「はっ、はいっ!」


 Dランク相当の霊、どんな霊なんだろう?

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