第13話 魔法訓練
「
ダンさんの適正魔法についての説明が終わったので、次は魔法の訓練をするために的が立ててある方へ行くと、アイシャさんが10mほど離れている的に向かって魔法を当てていた。
火魔法を使っていたので、アイシャさんの適正魔法は火魔法なんだろうか?
しかし、当然というべきか、アイシャさんは魔法の扱いが僕よりも上手い。威力もさることながら、魔法の精度もかなり良いと思う。
「あれ、説明は終わったんですか?」
アイシャさんは僕たちに気が付いたのか、声をかけてくる。
「はい、これから魔法をどのようにしたら使うことができるのかを簡単に説明して、それからは実際に魔法を使ってみようと考えています」
「えー、説明はいいので早く戻りたいんですけど」
「文句を言わない。説明と言っても簡単なものなので大丈夫です。時間はそうかかりません」
「まあ、それなら」
しぶしぶといった様子で頷くアイシャさん。
「では、説明を行います。準備はいいですか?」
「「はい!」」
「まず、魔法というのは魔力を全身に巡らせることで初めて使える状態になります。アイシャはもちろんこの感覚を掴んでいますが、エリックはどうでしょうか?」
「は、はい、わかります」
僕は急に聞かれて少し焦ったが、ちゃんと答えることができた。
最初に墓地で魔法を使った時に感覚を掴んで、キト村で仕組みがわかったって感じだったな。
「そうですか、では次に、魔法を使うにあたって重要なことを説明しましょう」
そこでダンさんは眼鏡を掛けなおす。
「それは、具体的な魔法のイメージとその魔法に込める魔力量をしっかりと考えることです」
「イメージと魔力量、ですか?」
「はい、他にも色々とコツはありますが、それが最も重要ですね」
じゃああの時、キト村の女の霊に魔法が通らなかったのは、具体的なイメージかその魔法に込めていた魔力量のどちらか、もしくはその両方をちゃんと頭の中で考えていなかったからなのか。
「エクストス家の皆様が言うには、エリックはイメージはしっかりとしているようなので、魔法に込める魔力量をしっかりと考えて使えば魔法の威力は上がると思いますよ」
ダンさんはにこりと笑って僕にアドバイスをくれた。
「そうですか、ありがとうございます!」
「いえ、お礼には及びません。では、説明が終わったところで、早速どれほどの魔法を使うことができるのか見てみましょうか」
「やっとね!待ちくたびれたわ!」
ダンさんが言った途端アイシャさんは飛び出して、先ほど立っていた場所まで走っていく。
「まったく、仕方ないですね。では、まずアイシャからどうぞ」
「はい!」
そうして、アイシャさんは両手を出して、魔法を放つ体勢に入る。
「
アイシャさんが唱えると、両掌からこぶし大くらいの大きさの赤と橙の中性色をした火球が放たれる。
それは速くまっすぐに的の方へ飛んでいき、的のど真ん中に当たった。
キィィィィン!
すると、なぜか的から金属音のような音が聞こえた。的って金属なのかな?
「どうでしたか!」
「ええ、前よりも上達したようですね。魔法の威力と精度が上がっていました。練習の成果が出たようですね」
「!ありがとうございます!」
そう言って、アイシャさんはこちらを向き得意げな表情で僕のことを見る。
「次はあんたがしてみなさい!」
「は、はい」
「そうですね、一度見ればエリックの魔法の改善すべきところがわかるでしょうし」
そして、僕は的から10mほど離れたところに立つ。こうして立ってみると、結構的から離れていることがわかる。
両手を前に出して魔法を使う体勢ができたら、全身に魔力を巡らせる。
それから、魔法の、
そうして、魔法を唱える。
「
すると、僕の両掌から幅10cmくらいの大きさの風の刃が放たれる。
それは途中までは勢いよく的の方へまっすぐと飛んでいたのだが、途中でなぜかふっと消えてしまった。
「あ、あれ?」
「ああ、エリックの改善すべき点がわかりました」
「えっ、それって、どういう......」
「エリックは、魔法に込めるべき魔力量をしっかりと考えずに魔法を使っているのでしょう。だから、あのように魔法が的に届く前に魔力が足りず消えてしまった、というわけです」
そういうことだったのか。
「魔法が消えるまでは的に向かってまっすぐと飛んでいたので、具体的なイメージはしっかりとできていたようです」
「ふんっ、エリックったら、まだまだね!」
アイシャさんが腕を組み仁王立ちをしていた。
「まあ、私も最初はそんなもんだったわ。魔法は努力すれば絶対に上手くなるもんだから、せいぜい頑張りなさい!」
「え、えっと...」
「彼女なりに励ましているんですよ」
僕がどう返答したらいいのか困っていると、ダンさんがそっと教えてくれる。
「あっ、その、ありがとうございます!」
「べ、別にお礼を言われるようなことは言ってないわ!」
アイシャさんは、そうやって少し顔を赤くする。
「ま、まあ、魔法が上達するように二人で頑張りましょう!」
アイシャさんは拳を突き出す。
「はっ、はいっ!」
僕はそう言って、アイシャさんと拳を拳をぶつけ合う。
......今日は、少しだけアイシャさんと仲良くなれたな。
僕は心の中でそっと微笑んだ。
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