第7話 初仕事
僕はキースさんに着いていく。二階へと上がり少し進むと、キースさんの部屋に着く。
部屋に入ると、キースさんは机の上にある何かを手に持ち顔に掛ける。
「ほら、これを掛けることで霊を見ることができるようになるってわけだ」
「......眼鏡、ですか?」
昔母さんが教えてくれたな、目が悪い人が掛けると見やすくなるって。実物を見たのは初めてだったけど。
「そう。まあ、普通の眼鏡とは少し違うんだけどな」
「どう違うんですか?」
すると、キースさんは眼鏡を外しレンズをこちらに向ける。
「ほら、レンズに少し色がついているだろ?これは魔法で魔力を付与したときについたものでな、こうやってレンズに魔力を付与することで霊を見ることができるようになるんだ」
確かに、レンズが少し暗くなっている。
「まあ、レンズに色がついているせいで普段使いには向かなくてな。霊を狩るときだけ使っているんだ」
「そ、そうだったんですか!......ん?でも、霊が見えるようになったとしても、霊に攻撃する手段がないんじゃ」
「俺の場合は魔法で魔力を付与した武器を使っているぞ。大抵の武器なら扱うことができる」
あっ、そういうことか。魔力を纏っていれば霊に攻撃することができるってジンさん言ってたな。
「魔法が使えないってわかったときは結構ショックだったんだけどな。今はこの戦い方が一番俺に合ってるって思ってる。エリックも自分に合った戦い方をしろよ、合ってない戦い方をしてたら下手したら死ぬぞ。俺も死にかけた」
「はっ、はい」
キースさんに忠告されて、僕は思わず背筋を伸ばす。
「まあ、エリックはまだ霊媒師としては半人前だから、仕事をするときは俺たちのうちの誰かが一緒に行くことになる。だから、焦らずにその間に自分に合った戦い方を見つけろよ?」
「は、はい、わかりました!」
「よし、良い返事だ!じゃあ、そろそろ戻るか!」
そうして僕たちはみんながいる一階に戻るのであった。
◇◇◇◇◇◇
ガチャ
階段を下りていると、玄関のドアが開く音とともに眼鏡を掛けた白髪の老人がこの屋敷に入ってくる。僕の勝手なイメージだけど、執事っぽいな。
「あれ、ダンさん?今日はまだ休みじゃなかったっけ?」
「ええ、今回は気になる噂を耳にしてこちらに参りました......キース様、その子供は一体?」
そうやって、眼鏡越しに僕のことを睨む。......最初に会った時のジンさんよりも怖い。
「ああ、そんな警戒しなくても大丈夫だって。この子はエリック、リーナ姉さんが奴隷市場で昨日買って来たんだって」
「......なぜそんな子供をリーナ様が買ったのですか?」
「霊視が使えるってわかったからじゃない?まあ、他にも理由はあるだろうけど」
ダンさんと呼ばれた老人は顎に手を当て少し考えるそぶりを見せる。
すると、今度は僕に話しかけてきた。
「......エリック、でしたか?霊視を使えるというのは本当ですか?キース様を疑うわけではないのですが、実際にあなたの口から聞いてみないと何とも言えないので」
「あっ、あの、えっと、はい、見えます。少なくとも形や大きさははっきりと......」
僕がそう言うと、ダンさんは目をすっと細める。
「......そう、ですか。嘘を言っているようには見えませんね。わかりました、信じましょう」
僕はほっと胸をなでおろす。
「それで?さっき何か気になる噂を耳にして、って言ってたけど、何?」
「失礼いたしました。実はある村で、最近子供が行方不明になる事件が多発しているという噂を耳にしまして」
子供が行方不明に?一体どうして......
「詳しく聞かせて?」
キースさんも真面目な顔つきになる。
「はい。あくまで噂なのですが......ここから東に向かって徒歩で約二時間ほどの場所に位置するキト、という村で子供が次々と行方不明になる事件が起こっているようです」
「人間がその事件を起こしている可能性は?」
「小さな村なので外から来た人間がいれば気がつくはずです。それに、子供がいなくなる時が不可解でして......」
そこでダンさんは話を少し切る。
「ある子供は大人と一緒に森に入ったようなのですが、なぜかその子供だけが急に姿を消したそうです」
「......確かに不可解だな。これは家族全員で話し合う必要がある。みんな食堂にいるはずだから、二人ともちょっとついてきて」
「承知いたしました」
「...はい」
そうして食堂へと入る。みんなは席に着いて談笑していた。
「あれ、ダンさん?今日休みじゃなかったっけ?」
リーナさんがキースさんと同じような反応をする。
「姉さん、霊が出た可能性が高い事件が起きたらしい。とりあえずダンさんが事情を話す。言いたいことはそれから言ってくれ」
「......わかった、とりあえず席に着いて」
そうして僕たちは席に着き、ダンさんがさっき僕たちに話してくれたことを話す。
ダンさんが話し終えると、今度はジンさんが口を開く。
「ダンの話を聞く限り、十中八九霊の仕業だろう。どうして子供ばかりを狙うのかはわからんが」
「だね、とりあえず誰がこの霊を狩るかだけど......」
リーナさんがそう言うと、みんなの視線が僕へと集まる。
「えっ、ええっ!僕ですか!?」
「適任だろう、相手の霊は子供ばかりを狙うようだしな。ただ、まだ半人前のエリックが一人で狩るとなると不安が残るな」
「じゃあ、トーナも一緒に行かせればいいだろ?トーナだったら子供に間違ええられる可能性も十分にあるし。うまくいけば二人で子供が消えた先まで行けるかもしれえないしな」
キースさんが解決案のようなものを出すと、トーナさんが反応する。
「...私、子供じゃない。けど、エリックと一緒に、行くのは、別に問題ない」
「決まりだな。では、今回の霊はトーナとエリックで狩る。二人とも、十分気を付けるように」
「はっ、はい!」
「ん」
ジンさんが、僕とトーナさんを今回霊を狩る人に決めた。
「あっ、待って!二人とも」
「...何?姉さん」
出発する準備をしようとする僕たちをリーナさんが引き留める。
「今回、エリックだけ消えてしまったら大変でしょ?だから、エリックはこれ持ってて」
そういって渡されたのは、赤い石を付けたネックレスのようなもの。
「これは、何ですか?」
「それはね、魔力をたくさん付与できる石に魔力をできるだけ多く付与したものだよ。霊視で見たら、多少の障害物があってもその石の魔力が濃いから見えるようになるんだ」
「そうなんですか...ありがとうございます!」
「いやいや、それより初仕事、頑張ってね!」
「はいっ!」
リーナさんはそうやって励ましてくれた。
「あっ、あと、トーナ!エリックを守ってあげてね!」
「...ん、任せて」
トーナさんはそうやって返事をする。
「あのっ、僕も足手まといにならないように頑張ります!」
「ん...そろそろ行こう...早くしないと、次の犠牲者が出る...」
「そ、そうでした。急がなきゃですね」
そうして、僕はトーナさんとともに、子供だけを攫う霊を狩るためにキトという村へ向かった。
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