小さな小さな心のヒーロー

むう子

第1話

「いー―――やー――だー―――!!」

スーパーで喚く子供に仕事帰りであろうお母さんが疲れ果てた姿でため息をつきながら宥める。

「今そのお菓子を買ってももう晩御飯前だから食べられないでしょう?また次に買うって約束するから…

「やああああだあああああ。やだ今がいい、今―!うわああああああ」


お母さんは周りの冷たい目線を感じ、これ以上買い物するのは厳しいと子供を抱き外に出ようとした。


「僕?お母さん見てみな。お母さんも泣きそうだよ?」

男は仕事帰りにスーパーで買い物中、様子を見ていた僕は思わず抱きかかえられた男の子に話しかけた。


子供は僕の声が聞こえたようで静かになる。


「うるさくしてすみません…」

お母さんは子供に文句を言われると思ったのか子供の抱きかかえ方を変えた。


「いえ。お母さん疲れてそうだったから。僕、お母さんをあまり困らせちゃだめだよ?」


「…うん…。」


子供は初めてお母さんが泣きそうになりながら自分を抱きかかえていたことに気が付いたようでじっとお母さんを見つめた。


「本当にすみません。もう外に出ますから…」


「ん?もう買い物できそうだけど?それに多くの人はこの状況に理解してると思いますよ?」

そう言うと周りのおばあさん夫婦も入ってきた。

「そうよねえ。この年頃の子はこうよねえ。お母さん頑張っててすごいよ。僕も、偉いねえ。」

「うんうん、私らも子供が小さいときはこんな日々を送っていたなあ。もう落ち着いてるんだし気にせずさっと買い物済ませなさい。」


お母さんは泣きそうになりながらお礼を言う。

「ありがとうございます…。」

その後お母さんは落ち着いて買い物をすることが出来たみたいで、カゴには大人しくなったとはいえうろうろしている男の子に分からないようにこっそり入れたのであろう欲しがっていたお菓子が入っていたのを見て微笑ましい気持ちになった。


お母さんは帰る際にお礼を言い出て行った。


インターネットで情報量が多い分、警戒することも増えたし、見て見ぬふりをする人のほうが多いけど。

今日は、一人のお母さんを助けることが出来たと思いたい。

いや。そもそも他人の子に注意ってまずかったか?

最初すっごく警戒されたなあ。


そう思いながら男も買いものを済ませるのだった。



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小さな小さな心のヒーロー むう子 @minagi05

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