第12話 リーナ捜索1
春の光が村に差し込み、村の広場はいつも通り穏やかな雰囲気に包まれていた。5歳になったばかりのミカは、母親のアルヴァと一緒に家の前で草を刈っていた。母親の背中を見ながら、まだ何もできない自分を感じつつも、一生懸命に手伝いをしようとする。その小さな手で、草を引き抜く度に少しずつ成長していることを実感していた。
「今日はお祭りの準備があるから、早く片付けてしまおうね。」アルヴァは優しく声をかけるが、どこか疲れた様子だった。村の商会との新しい取引のことを気にしているらしく、少し忙しそうだ。それでも、母親の手伝いをすることで、ミカはどこか誇らしげに感じていた。
その日の午後、村の広場に集まった村人たちの中に、カルッソさんが見当たらないことに気づいた。カルッソさんは、ミカの家の隣に住む親しい隣人で、彼の娘であるリーナもまた、ミカと同じ年齢でよく一緒に遊んでいた。しかし、今日は見かけない。そのことに少し不安を覚えたミカが振り返ると、アルヴァがすでに村人たちの中にいるカルッソさんと話しているのが見えた。
「アルヴァさん、リーナがいなくなったんです。」カルッソさんの声には、普段見せることのない動揺が感じられた。
ミカはその言葉を聞いて驚いた。リーナは確かに好奇心旺盛で、村の周りを元気に走り回っていたが、そんなことが起こるなんて思いもしなかった。リーナとミカは、ほぼ毎日のように一緒に遊んでいた仲で、二人で追いかけっこをしたり、近くの川で小石を投げ合ったりして過ごしていた。彼女は元気で明るい性格で、ミカと一緒にいるといつも楽しそうだった。ミカにとって、リーナはただの「隣の子」ではなく、毎日の生活の中で自然に溶け込んだ存在だった。
「リーナが行方不明?」アルヴァは驚きの表情を浮かべ、すぐにその場を離れて他の村人たちと話を始めた。自警団が集まり、村の周辺を捜索しているが、リーナの姿はどこにも見つからないという。
カルッソさんは不安そうに続けた。「リーナが家を出てから、もう数時間も経つんです。でも、どこにも見当たりません…。」
ミカはその言葉に胸を痛めながらも、すぐに考えを巡らせた。リーナがいなくなるなんて、あまりにも不自然だ。普段から好奇心旺盛で、村の外れにもよく一緒に行ったが、迷子になるようなことはなかったはずだ。それに、リーナがあんなに元気だったのに、どうして一人でどこかに行ってしまったのだろうか…。
その時、ミカは思い出した。自分には、MEBIUSがある。それを使えば、もしかしたらリーナの手がかりを見つけることができるかもしれない。そう思ったミカは、ふと決意を固め、家を抜け出すことにした。
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