第11話 父との時間
ある日の事、朝食が終わった後、ミカは庭に出て父アリオと共に過ごす時間を楽しんでいた。アリオは商人として忙しい日々を送りながらも、息子との時間を大切にしていた。
「さて、ミカ、今日は少し貨幣の計算を勉強してみようか。」アリオは机の上に金貨、銀貨、銅貨を並べながら言った。
「金貨1枚は銀貨5枚、銀貨1枚は銅貨10枚分だな。」アリオは指をさしながら説明を始めた。
「じゃあ、銀貨2枚でパンが何個買えるか、わかるか?」
ミカは即座に答えた。「銀貨1枚で銅貨10枚分だから、銀貨2枚は銅貨20枚分。パン1個が銅貨2枚だから、10個のパンが買えるよ。」
アリオは少し驚いた。確かに簡単な問題ではあるが、まだ5歳のミカがこんなにスムーズに答えるとは思っていなかった。息子はまだ、貨幣の使い方を習い始めたばかりで、こんな計算ができる年齢ではないと思っていたからだ。
「おお…すごいな。」アリオは軽く息を呑みながら感心した。「じゃあ、今度は少し難しい問題を出してみよう。」アリオはさらに難しい計算を考えながら言った。「今度は、肉1食が銀貨2枚、パン1個が銅貨3枚、野菜1つが銅貨5枚で売られているとする。銀貨3枚で、何を買えて、残りはどうなるか?」
アリオの問題は少し難しくなった。ミカが計算を始めようとすると、突然、脳内にMEBIUSの冷静な声が響いた。
『肉1食、パン1個、野菜1つ、残りは銅貨2枚です。』
その瞬間、ミカは思わず声に出して小声で「黙っててよ…。」と言ってしまった。
アリオはその言葉に「ん?なんだって?」と答える。
ミカは慌てて顔をそらしながら、「いや、なんでもない…」と誤魔化した。
ミカは続けざまに「銀貨3枚は銅貨30枚分。肉1食が銀貨2枚、パン1個が銅貨3枚、野菜1つが銅貨5枚。合計で銅貨28枚を使うから…残りは銅貨2枚です。」と回答する
アリオはますます疑問を感じながらも、どうしてそんなに素早く計算できるのか理解が追いつかない様子だった。「お前、そんなにすぐに答えが出せるなんて、どういうことだ?」
ミカは冷静を装いながら、軽く肩をすくめて言った。「うーん、たまたま覚えたっていうか…別にそんなに難しいことじゃないよ。」そう言ってなるべく自然に振舞おうとしたが、内心では少し焦っていた。
アリオはその言葉を聞いて、ますます不思議に思い、「でも、お前、こんなに簡単に…なんでそんなことがわかるんだ?」と聞いた。
ミカは少し黙ってから、仕方なく言った。「まあ、ちょっとだけ覚えたことがあるんだ。」と、さらにぼかして答えた。
アリオはしばらく黙り込んで、少し考え込んだ後、やっと頷いた。「そうか…でも、そんなに計算ができるなんて、すごいな。商売のためにもっと勉強してくれれば、俺も助かるよ。」
ミカは少し恥ずかしそうに笑いながら、「うん、頑張るよ。」と答えた。心の中では、これ以上余計な質問をされずに済んだことにほっとしていた。
アリオは立ち上がりアルヴァに向かい、「おい大変だ、ミカは天才かもしれんぞ?」なんて口にしながら歩いていった。
ミカはまったくもってMEBIUSが唐突に思考に介入してくるのは未だに慣れないと思うのであった。
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