第12話 不思議な放浪者との出会い
放課後の夕暮れ、ムハマドは人気のない町外れを歩いていた。どうしようもない無力感に襲われ、ただ歩くことで自分を落ち着かせようとしていたのだ。
そんな彼に、低く穏やかな声がかけられた。
「悩める少年よ、何をそんなに肩を落としている?」
振り返ると男が立っていた。ボロボロの衣服をまとい、風に揺れる長髪の男。その目にはどこか哀愁が漂っていた。
「君の名前は?」と男が問いかけると、ムハマドは少し警戒しながらも答えた。
「ムハマドです。あなたは……?」
「私の名はグラニート。ただの放浪者だ。」
グラニートはにこりと微笑むと、ムハマドを見据えた。
「君の目を見ればわかる。何か大きな悩みを抱えているようだな。」
ムハマドはためらいながらも、ラクシュミとの関係や、自分の無力さについて打ち明けた。話を聞き終えたグラニートは、しばらく沈黙したあと、静かに語り始めた。
「実を言うと、私もかつてはバラモンだったのだ。」
「えっ?」と驚くムハマド。
「だが、私はある者に裏切られ、全てを失った。」
「誰に……?」
グラニートは目を細め、どこか遠くを見るような表情を浮かべた。
「チャーチルの父親だよ。」
その言葉にムハマドは目を見開いた。
「チャーチルの……父親?」
「そうだ。彼は私を利用し、そして私の全てを奪った。今の私がこんな風に放浪しているのも、彼のせいだ。」
グラニートは自嘲気味に笑ったあと、ムハマドに視線を戻した。
「君もその息子に関わっているようだな。その家族は、君のような者に決して寛容ではない。だが……」
彼は一瞬言葉を止め、真剣な表情で続けた。
「君がどうしても助けたいと思うのなら、私が少し力を貸そう。」
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