第4話 伝えられない想い
チャーチルとの一件以来、ラクシュミとムハマドの距離は少しだけ縮まった。しかし、それは二人の間に芽生えた複雑な感情をより明確にするものでもあった。
授業中、ラクシュミは窓の外を眺めるふりをしながら、ふとムハマドの姿を目で追うことが増えた。ノートにペンを走らせる真剣な横顔、教師に鋭い質問を投げかける姿勢。彼の存在は、彼女にとって特別なものになりつつあった。
一方で、ムハマドもまた、彼女の存在が心に引っかかっていた。クラスでラクシュミが話している声が耳に入るたび、なぜか胸がざわつく。彼女の笑顔を見れば嬉しくなるし、他の男子生徒と親しげに話している姿を見れば、なぜか落ち着かない。
だが、二人とも自分の気持ちを表に出すことはなかった。
ある日の昼休み、ラクシュミは食堂で友人たちと笑いながら食事をしていた。ムハマドは少し離れた席で一人静かに本を読みながらパンをかじっている。
ラクシュミの友人の一人が、ムハマドをちらりと見て言った。
「ねえ、あの子、よく一人でいるよね。奨学生だからかしら。」
その言葉にラクシュミは少し顔を曇らせたが、何も言い返せなかった。ただ、彼のもとに歩み寄る勇気も出なかった。
一方、ムハマドもまた、時折ラクシュミの楽しそうな姿を目の端に捉えていた。自分とは違う世界にいる彼女。話しかけるべきか悩んだが、「迷惑をかけるかもしれない」と思い、結局席を立つだけだった。
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