第5話 放課後の図書室
放課後、図書室で偶然顔を合わせた二人。ムハマドは宿題を片付けようとしているところで、ラクシュミは古い詩集を探していた。
「あ……。」
ラクシュミが声を上げると、ムハマドも顔を上げた。
「何してるんだ?」
ムハマドが少し不器用に尋ねる。ラクシュミは本を抱えながら笑顔を浮かべた。
「ただ、ちょっと読みたいものがあって。あなたは?」
「宿題。やらないと追いつけないからな。」
二人はそれ以上話すこともなく、短い会話だけで終わってしまう。だが、図書室を出るとき、ラクシュミはふと立ち止まり、振り返った。ムハマドの姿は本に集中しているが、その横顔はどこか寂しげに見えた。
夜、校舎の外で偶然再び顔を合わせた二人。ムハマドは静かに星空を眺めていた。ラクシュミがそっと近づき、隣に座る。
「星を見てるの?」
「まあ、そんなところだ。」
ラクシュミはムハマドの横顔を見つめ、何か言おうとしたが、胸が苦しくなり言葉を飲み込んだ。一方のムハマドも、彼女が隣にいるだけで心拍数が上がるのを感じていたが、口を開けなかった。
二人はただ黙ったまま、夜空を見上げ続けた。
二人は同じ気持ちを抱えながらも、どちらも「一歩」を踏み出せないでいた。ラクシュミは、自分がバラモンであるという事実が彼にとって重荷になるのではないかと考え、ムハマドは、彼女の身分や立場が自分との間に越えられない壁を作るのではないかと恐れていた。
そんな日々が続く中で、二人の心は少しずつすれ違い、しかし同時により強く惹かれ合っていくのだった――。
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