第2話 交錯する世界
ラクシュミとの初めての会話は短かったが、彼女の存在は俺の中に強い印象を残した。学園生活が始まるにつれ、俺は次第に彼女と話す機会が増えていった。
彼女は他のバラモンの子たちとは違っていた。俺を嘲笑したり無視したりするどころか、いつも話しかけてくる。時にはランチタイムに俺の隣に座り、周囲の好奇や敵意の視線をものともせずに自然に接してくれた。
「ねえ、ムハマド。あなた、どうしてこの学校に来たの?」
ある日、彼女がそんな質問を投げかけてきた。
「どうしてって、俺に選択肢なんてなかった。ただ、俺の人生を変えたいと思ったからだ。」
俺が答えると、彼女は少し驚いたような顔をしてから微笑んだ。
「……あなたって、本当に面白い人ね。」
その言葉が彼女の本心からのものだと分かるのに時間はかからなかった。彼女は俺の内面に興味を持ち、そして次第に、俺自身が気づかないうちにラクシュミとの距離は近づいていった。
絆が芽生える瞬間
ある日の放課後、学園の裏庭で一人本を読んでいた俺の前にラクシュミが現れた。
「ここにいたのね。探したわ。」
「探した? 俺に何の用だ?」
「特に理由はないけど、あなたと話すと落ち着くのよ。」
彼女がそんなことを言うとは思いもしなかった。俺は少し困惑しながら、手元の本に視線を戻そうとしたが、彼女は俺の手から本を奪い取った。
「本ばっかりじゃダメよ。少し付き合って。」
そうして俺は、彼女に強引に引っ張られる形で学園の外れにある湖へ連れ出された。静かな湖面を眺めながら彼女が呟く。
「ムハマド……あなたがここに来てくれて、よかったと思う。」
俺はその言葉の意味を測りかねた。だが、彼女の横顔には確かに、言葉では表せない何かが宿っていた。
この日を境に、俺の中で彼女の存在は特別なものになり始めていた。そして、それは彼女にとっても同じだったのだと、後になって知ることになる――。
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