第3話

突然の連絡だった。


“飛槻 紅葉さんですね?警察です。お母様…飛槻 楓さんが緊急搬送されました。かなり危険な状態です。××病院まで至急お越しください。”



土砂降りの雨。天気予報の通りの雷雨で、鬱々とした気分の中、母の帰りを待っていた。


久し振りの友人と会う予定だと言っていた母は、雨の中お気に入りの傘を持って出かけて行った。

酷い雨の中、出るのは病気がちな母には酷だと思い、予定を変更したら?という私の提案に、『今日じゃなきゃ、予定が合わないの』と珍しく頑固で。

気をつけてね、って見送ったのは2時間前だ。


そして今、かかってきた電話はその母が病院に救急搬送されたと言う連絡。

病院は、家から徒歩10分程度の場所にある。


たった2人きりの家族。家賃5万円の1LDKのアパートで仲良くやってきた。

病気がちな母の負担を減らすべく始めたキャバクラの仕事は、大変ながらも楽しかった。

母はごめんね、って謝りながら毎日ご飯を作ってくれて。

それを見て私は仕事を頑張らなきゃって気合いを入れ直して。

そんな毎日が続くと思っていた。

なのに。

お母さんが?嘘でしょ?

だって、さっき出かけた所だよ?

行ってきます、って笑顔で手を振ってた、それなのに?

何で緊急搬送されてるの?しかも、警察から電話?



色んな思考がまとまらず、土砂降りの中、傘を差すことすら忘れて、目についた財布と携帯だけを手にして病院へ駆け出した。

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