お守り
からし
お守り
町の片隅にある小さな神社。
鳥居をくぐると、薄暗い森の中にひっそりと佇んでいる。
その神社には、昔から「呪いの守り」と呼ばれるお守りがあるという噂があった。
誰もが避けるそのお守りは、持っているだけで不の好奇心からその神社を訪れた。
道を進むにつれ、木々の間から漏れ出る光が少なくなり、ひんやりとした空気が体を包む。
健太は心臓が高鳴るのを感じながら、神社の境内に辿り着いた。
境内には、古びた石の鳥居と、苔むした社殿がある。
社殿の前には、さまざまな色のお守りが並んでいたが、その中にひときわ目を引く真っ黒なお守りがあった。
健太はそのお守りを手に取り、何か不気味な気配を感じた。
持っているだけで呪われるというそのお守りは、まるで彼を呼んでいるようだった。
「ちょっと試してみるか……」
健太は興味本位でお守りをポケットに入れた。
すると、その瞬間、首を撫でられた感触が襲った。
何かが彼の後ろから首に手を回す気配、健太は振り返ったが、そこには誰もいない。気のせいだろうと自分に言い聞かせ、健太は神社を後にした。
その日から、彼の身の回りには次々と不幸が舞い込んできた。
バイト先でのミス、友人との喧嘩、そして急に体調を崩す。
どれも些細なことに思えたが、次第に彼の心の中に不安が広がっていった。
お守りのことを考えないようにしても、どこか頭の隅にその存在が引っかかっていた。
ある晩、健太は夢の中で、神社の社殿に立っていた。そ
こには、黒いお守りを持った自分がいた。
すると、どこからか腹に響く低い声が聞こえてきた。
「お守りを持つ者よ、覚悟はできているか?」
辺りを見回すが声の主は見ええない。
その響きは彼の心臓に深く響く。
健太は恐怖に駆られ、目を覚ました。
夢の中の声が、彼を呪っているかのようだった。
彼は焦り、再び神社に行くことを決意した。
翌日、健太は神社に戻った。
静まり返った境内は、まるで彼を待っていたかのような異様な雰囲気を漂わせていた。お守りを返しに来たのだ。社殿の前で、彼は心の底から叫んだ。
「これを返します!呪いなんてもうたくさんだ!」
その瞬間、まるで風が吹き荒れているかのように、周囲がざわめき始めた。
木々が揺れ、空が暗くなり、肌で感じるねっとりとした重い空気
恐怖が彼を襲い、心臓がバクバクと鳴った。
彼はその場から逃げ出したくなったが、足が動かない。
「お守りを持つ者よ、なぜ逃げる?」
再び低い声が響く。
健太は振り返ると、そこには社の神主のような男が立っていた。
彼の目は真っ黒で、口元には不気味な笑みが浮かんでいた。
「そのお守りには、呪いが込められている。それを持つ者には、不幸が訪れる。
だが、それを返そうと思うのなら、覚悟を決めなさい。」
健太は恐怖と混乱に包まれた。
呪いを解くために何が必要なのか、彼には分からなかった。
ただ、その場から逃げ出したい一心だった。
「お前はそのお守りを持つことで、呪いを受け入れた。もはや逃げられない。」
男の言葉が耳に残る。
彼は振り返り、再びお守りをポケットから取り出して男に差し出した。
その瞬間、冷たい風が吹き抜け、背筋が凍るような恐怖が彼を襲った。
「お守りを持つ者よ、呪いはお前の中に宿る。お前が自ら選んだ道だ。」
男は言い放ち、消えていった。
健太は呆然と立ち尽くした。
彼は、呪いが自分の心の中に巣食っていたことに気づいた。
お守りを持つことで、彼は不幸を受け入れてしまったのだ。
その日以降、健太は神社には二度と足を運ばなかった。
しかし、彼の中には呪いが残り続けた。
日常の中で、彼は自分の心に潜む恐怖と向き合うことになった。
自分自身が選んだ道が、彼を呪ったのだ。
結局、呪いはお守りに込められたものではなく、自らが抱える心の闇だった。
健太はそれを理解するまで、長い時間がかかった。
彼は自分の選択によって、不幸を招いてしまったのだ。
お守り からし @KARSHI
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