殺戮オフィス(全4話)

殺戮オフィス①

PM 0:05

真里孔マリアナ大学 遅念ちねんの研究室。

デスクを挟んで向かい合って座る遅念と、スーツ姿の男性が2人。男性たちは遅念に、自社で立て続いている不審死の調査依頼をするために研究室を訪れた。


1人は粉本こなもとという初老男性で、彼らが働く株式会社KONAMOTOコナモトの代表取締役社長。同社では、スナック菓子を砕いてペースト状にするマシンの製造・販売を行っている。もう1人は遅念と同年代、40歳前後の男性で名前は霧谷きりたに。人事労務部長。


霧谷が、地獄にでも墜ちたのかと思うほど暗い表情で依頼内容を語り始めた。



霧谷「先月から今月にかけて、当社内で社員が7人死亡しております」


遅念「7人も?1週間に1人のペースですか……」


霧谷「ええ。全員原因不明の突然死で、基礎疾患を持っていない20〜30代の社員でした。病死の可能性は低いですし、交通事故などに遭ったわけでもありません」


粉本「みな自宅で息絶えているのが発見されたのです……偶然とは思えません」


遅念「たしかに奇妙ですねぇ」


霧谷「社員の間では『社内の誰かが呪い殺しているのではないか』とウワサになっていまして。私のところに『殺される前に退職したい』と相談にくる者が後を絶たないのです」


遅念「自分が働く会社で7人も不審死していたら、不安になるのは仕方ないですよねぇ」


粉本「私含め、当社の上層部としてもさすがに言い訳できない状況だと認識しています。そこで遅念先生のお力を借りたいのです。どうか!当社で起きている不審死の原因を突き止めていただけないでしょうか!?」



粉本は椅子から崩れ落ちるように床に膝を付き、土下座をする。粉本の左隣に座っていた霧谷も、続けて土下座をした。



霧谷「粉本は代表という立場上、責任を強く感じております。これ以上犠牲者が出れば会社として存続できないだけでなく、粉本自身の精神が限界を迎えてしまうでしょう。だからこそ、どうかお力添えを……」



慌てて椅子から立ち上がる遅念。



遅念「わかりましたからぁ、頭を上げてください。ご協力します」



−−−−−−−−−−



1時間後

会社に戻った粉本と霧谷の代わりに、遅念の前には前髪をちょんまげにしたコココが座っていた。



遅念「ということで、明日からコココさんにKONAMOTOって会社で起きてる連続不審死を調査してほしいんだよねぇ。社内の誰かが『降霊』と『憑依』の儀式で同僚を呪殺してる可能性が高い」


コココ「アタシでええの!?その人たち、先生にお願いしたかったんとちゃうん!?」


遅念「協力するとは言ってないし、先約があってそっちの対応をしないといけなくてねぇ。代わりにコココさんにお願いしたい」


コココ「マドカっちは?」


遅念「声をかけたんだけど、彼女も外せない用事があるそうなんだ。それに今回は儀式を行っている人物の特定もやってほしいんだよねぇ。たぶんマドカさんは気乗りしない依頼内容だと思うんだ。でもコココさんはこういう依頼のほうがやる気出るでしょ?」


コココ「大好きだし得意っす!前の病院事件のときも犯人を捕まえたのはアタシっすから!」



右手でサムズアップするコココ。



遅念「やっぱりね。じゃあお願いするよぉ。報酬は70万円でどうかな?」


コココ「OKっすー!犯人見つけたら、とっちめちゃってええんすよね!?」


遅念「う〜ん、なるべく穏便に済ませてほしいなぁ」

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